もくじ
どんなクルマ?
ー ボディサイズをひとまわり拡大
新型Aクラス 英国最安値は380万円、1シリーズの58万円高 メルセデス・ベンツ
どんな感じ?
ー トーションビーム式リアサスペンションを採用
ー ひかえめな1.5ℓディーゼル
ー ステアリングフィールがイマイチ
「買い」か?
ー AMGはどんなアプローチをとるのか
スペック
ー メルセデス・ベンツA180d AMGラインのスペック
どんなクルマ?
ボディサイズをひとまわり拡大
現在最も売れているメルセデス・ベンツはCクラスだが、メルセデスのラインナップ中で最も重要なモデルはAクラスだと考えるひともいるだろう。
その意味で、各世代Aクラスの成功は非常に重要だ。特にAクラスが最も売れている市場である英国においては。したがって、メルセデスがこの第4世代Aクラスでそれほど冒険をしなかったことは仕方ないだろう。
先代はこのクラスにおいてメルセデスがBMWやアウディを追い抜くことに成功した画期的なモデルであった。Aクラスの購買層を10歳以上も若返らせることに成功し、およそ60%の顧客が初めてメルセデスを買うひとびとだった。若者に売り、ブランドに取り込むことができれば、生涯で10台程度の売り上げが見込めるのだ。
新型Aクラスはホイールベースが30mm延長されるなど、ほぼすべての面で大きくなっている。しかし、車重は20kg軽くなっており、装備の増加を考えれば称賛に値する。
英国で最初に発売されるのは、ディーゼルのA180dとガソリンのA200およびA250のみだ。すべてのモデルに7速DCTが組み合わされる。
6速マニュアルが搭載されるガソリンのA180は今年末に英国で発売される。2019年初頭にはディーゼルのA200dやA220dもラインナップに加わる予定だ。もし希望のモデルが最初に発売されないのであれば、しばしの辛抱が必要だ。
どんな感じ?
トーションビーム式リアサスペンションを採用
新型車にはよくあることだが、メルセデスが今回用意したのはAクラスの中でも最も豪華な仕様だ。ぜいたくな装備が与えられているが、例えばドライバー補助の装備などは英国では9月まで選択不能だ。
ここで不満な点は、エントリーグレードでの内装の質感などは全く不明だということだ。今回テストした車両に装着される巨大な画面が、小さいふたつのTFT液晶に置き換えられるようだが。
さらに気になる点は、メルセデスとして初めてリアにトーションビーム式サスペンションを採用したことだ。格安ハッチバックにはありがちだが、省スペースであることと低コストであることが理由だ。
マルチリンク式も存在しているが、標準装備されるのはA250のみだ。A200でも最上級のAMGラインを選択することで装着される。SEやスポーツを選んだひとや、英国では大部分を占めるであろうA180dには完全に選択不可だ。
さらに残念なことに、欧州本土においてはA180dでも可変ダンパーを選択すればこのより優れたリアサスペンションが装着される。だが、英国ではこの選択肢が用意される予定はない。
サスペンションの設計に大きな変更が加えられたにも関わらず、メルセデスは今回その新しいトーションビーム式を装着した車両を用意してこなかった。チーフエンジニアのジョルグ・バルテルスは、その違いを見いだすのはほぼ不可能だろうと主張している。
ひかえめな1.5ℓディーゼル
それはさておき、このクルマの内装はこのクラスとしては今までに無いほどに洗練されている。質感はすばらしく、そのデザインもライバル達よりも明確に先を行っている。
膨大な数の新装備を覚えるには少々時間がかかりそうだが、グラフィックはゴージャスで、一度覚えさえすれば直感的な操作が可能だろう。「ヘイ、メルセデス」という音声を記憶させることもできる。われわれの3人が試したが、ラジオを止めるというだけの指示でも複数回繰り返す必要があった。つまり、全員が失敗したと言って良いだろう。
A180dに搭載される1.5ℓエンジンはルノー-日産-三菱連合から提供されたもので、115psを発揮する。公称燃費は24.4km/ℓだ。先代の同等エンジンの26.3km/ℓという数値には劣るが、これは測定基準がNEDC2からWLTPに変更されたことによるものだ。メルセデスの発表によれば、通常の運転状態では先代よりも燃費は向上しているという。
先代Aクラスの上級グレードに搭載されていた2.1ℓディーゼルエンジンと比較すると、明らかに洗練された印象だ。しかし、メルセデス製の新しい2.0ℓディーゼルもより優れたパワーとマナーを備えて登場することだろう。
ディーゼル版を買おうとしているひとにとっての問題点は、A180dのパフォーマンスはやや控えめだということだ。ゲトラグ製トランスミッションは良い仕事をしているものの、追い越しには事前によくタイミングを図る必要がある。
A200に搭載される163psの1.3ℓエンジンも悪くはない。だが、多くのひとがメルセデスに期待するであろうパフォーマンスを得るためには、224psの素晴らしい2.0ℓガソリンエンジンを搭載したA250を選ぶべきだ。興味深いことに、A250にはメルセデス製のギアボックスが搭載されているが、ゲトラグ製のものと大きな違いはなさそうだ。
ステアリングフィールがイマイチ
他のクルマに追い越されても気にならないという向きには、A180dは良い選択だ。派手なインテリアや拡大された後席スペースなども変わらない。
少なくとも高価な方のサスペンションにおいては、乗り心地は素晴らしい。先代Aクラスより飛躍的に良くなっており、おそらくクラストップだろう。非常に制御しやすく、唯一文句をつけるとすれば非常に荒れた路面においてわずかに垂直方向のブレが生じることだ。だが、ここに問題を感じるオーナーはごくわずかだろう。
実際、これは並外れて良いクルマだ。法定速度内で走る限り、わずかなエンジン音と少々のロードノイズが聞こえるのみで、風切り音はほぼ聞こえない。ここもクラスをリードしている。最新のライバル車が存在しないため断言はできないが、もしこれがスタンダードとなっているなら驚きだ。
予想外の欠点はステアリングにある。先代Aクラスはステアリングの入力に対して非常に素直で思った通りの反応を示してくれた。これはBMW 1シリーズにも無かったことだ。
しかし、この新型Aクラスのステアリングは路面から隔絶されたような反応だ。パーキングスピードであれば問題はないが、走行中はもう少しはっきりとした手応えが欲しいものだ。
出来の良いシャシーを持っているにも関わらず、高速域では安定を保つのに想像以上の気をつかうかもしれない。そしてブレーキもアシスト過多な印象だ。だが、ステアリングと違いこの点にはすぐに慣れるだろう。
「買い」か?
AMGはどんなアプローチをとるのか
AUTOCARは、評価基準にまずハンドリングをあげることが多い。今回もそれに倣うならば、残念ながら、このクルマは非常に良いドライバーズカーとは言えない。
メルセデスがステアリングを改善しない限り、ドライビングエクスペリエンスは妥協が必要だろう。
AMGが300ps超のA35や400ps超のA45を2019年に出す際にどのようなアプローチをしてくるのか非常に気になるところだ。
そして、知ることができたことと同じくらい多くの疑問が生まれてしまった。そのひとつはリアのトーションビーム式サスペンションだ。そしてエントリーグレードのインテリアはどうなのか? 他のエンジンはどうなのか? そして音声認識の信頼性の低さ。このあたりはいずれ確かめることができるだろう。
わたしは去り際にこのクルマの良さ以上にどれほど改善可能かを考えてしまった。ただ勘違いしないで欲しいのは、すでに非常に良いクルマだということだ。
多くのユーザーはステアリングやブレーキのフィーリング、そして気だるいディーゼルについてさほど気にしないだろう。だがわたしや、AUTOCAR読者たちにとっては気になるはずだ。
ただし、いくつかの欠点だけを元にすべてを否定するわけにはいかない。多くの分野において、このAクラスはハッチバックの新たなスタンダードとなるだろう。
現時点では、良い点だけを見ることにしよう。それは史上最も最新技術を満載し、静かで、快適で、豪華なファミリーハッチだということだ。
メルセデス・ベンツA180d AMGラインのスペック
■価格 2万8280ポンド(431万円)
■全長×全幅×全高 –
■最高速度 203km/h
■0-100km/h加速 10.5秒
■燃費 24.4km/ℓ
■CO2排出量 111g/km
■乾燥重量 1445kg
■パワートレイン 直列4気筒1461cc
■使用燃料 ディーゼル
■最高出力 116ps/5000rpm
■最大トルク 26.5kg-m/1750rpm
■ギアボックス 7速デュアルクラッチ
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