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魚河岸の顔「ターレットトラック」のナゾ 実は名前すら曖昧? 何度もプラモ化されてきた“魅力”

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魚河岸の顔「ターレットトラック」のナゾ 実は名前すら曖昧? 何度もプラモ化されてきた“魅力”

海洋堂の前にはアオシマがプラモ化 謎多きターレットトラック

 魚河岸や動物園で使われる輸送用車両「ターレットトラック」という乗り物があります。一般の人でもおそらく、見れば「ああ、そういうのあるよね。倉庫なんかでユルユル走っているやつ」などと思い当たるかもしれませんが、働くクルマの中でもやや地味な存在といえるでしょう。

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 しかし、この地味な乗り物はなぜか、プラモデル業界ではちょっとした人気があって、すでに複数のメーカーからキットが発売されています。プラモデルを組み立てて楽しいような乗り物なのか?などと思ってしまいますが、ターレットトラックのなにがそんなに魅力的なのか、プラモデルを見ながら考えてみます。

 フィギュア・メーカーとして有名な海洋堂は、動物園を再現できるプラモデル・シリーズを発売しています。このシリーズの面白さは、1/35スケールでリアルに再現されたゾウやキリン、飼育員などの生き物だけでなく、動物園の現場で使われている車両が付いてくるところです。

 2022年秋に発売された「ARTPLA 飼育員とシロサイセット」には、ターレットトラックと運転手が付属しています。組み立ててみると、ターレットトラックという乗り物は、運転手が立って乗り、円筒形のエンジン部についたハンドルで操作する仕組みであることがわかります。それ以外の部分は、板のような荷台と簡素な車輪だけ。何ともシンプルな構造のトラックです。

 さて、このターレットトラック、プラモデル化したのは海洋堂が初めてではありません。青島文化教材社(アオシマ)がもう10年以上前、「1/32 特殊荷役シリーズ」の第一弾としてプラモデル化しています。このキットにはターレットトラック(商品では「ターレー築地市場仕様」と表記)のほか、生マグロや冷凍マグロなどのパーツも入っています。

 アオシマ製はターレットトラックを、この「1/32 特殊荷役シリーズ」の中で何度かプラモデル化していますが、興味深いことにそれぞれ少しずつ形が異なります。わかりやすいところでは、ヘッドライトの位置が違っていたりします。

名前が違うだけ? 「エレトラック」「マイテーカー」との呼び名も

 微妙に形が違うだけでなく、アオシマ製品の商品名を見ると「ターレー」と「エレトラック」の2種類があります。海洋堂の「ARTPLA 飼育員とシロサイセット」ではターレットトラックとされていたこの車両を、アオシマは「ターレー」と「エレトラック」に呼び分けて、なおかつ細部も作り変えています。プラモデルを見る限り、ターレットトラックには素人にはわからない種別やディテールの違いがあるようです。

 ここで格好の資料本があります。東京キララ社から刊行されている『築地魚河岸ブルース』という写真集です。この本に載っているターレットトラックの写真には、メーカー名や商品名がバッチリ写っているのですが、アオシマがプラモデル化した「エレトラック」のほか、「MIGHTY CAR」という商標が見られます。1台だけ「ターレット」というネームが貼ってある車種も確認できました。ターレットトラックの世界は思ったよりも深いようです。

 まずは、気になった「MIGHTY CAR」という名前を検索してみると、関東機械センターという会社のサイトに行き当たりました。商品名は「マイテーカー」が正しいようです。電動車およびエンジン車、天然ガス車など、「マイテーカー」は現在6種類も販売されていることがわかりました。しかも、「仕様:青果」というもののほかに、車体を強化した水産仕様もあるそうです。魚河岸で使われているのは、水産仕様ということになります。

 続いて、アオシマがプラモデル化した「エレトラック」を検索すると、三菱ロジスネクストという会社が見つかりました。この会社の旧名は日本輸送機株式会社、つまり「ニチユ」です。「エレトラック」のカタログを見ると、アオシマの「1/32 特殊荷役」シリーズでプラモデル化された「ニチユ エレトラック」は、まさに実物そっくりに再現されていることがわかりました。

では「ターレット」とは…?

 もう1種類、アオシマがプラモデル化している「ターレット」とは、2012年に破産した朝霞製作所が生産していた「ターレットトラック」の略称で、この名称は同社がなくなるまでは登録商標だったそうです。本稿では便宜的に、海洋堂のキットにならって、この手の車両を「ターレットトラック」と書いてきましたが、それはもともとは特定メーカー、しかも倒産した会社の登録商標だったわけです(朝霞製作所の破産後は、この名称が一般的な呼称となっています)。

 では、海洋堂の「ARTPLA 飼育員とシロサイセット」に入っている「ターレットトラック」は、どこの「ターレットトラック」なのかを確認してみます。ヘッドライトの位置、円筒を縦方向に走るパネルラインからして、どうやら朝霞製作所の本家(?)「ターレットトラック」を参考にしたのは間違いないようです。ただし、ハンドルの付く上端部のユニットは大きめにアレンジしてあったりと、イメージ重視でプラモデル化されていると見るのが正しいようです。

 戦車、飛行機、艦船など、プラモデル化に値する乗り物には、その背後にそれぞれの歴史や物語、蘊蓄があるものです。プラモデルのユーザーはそういった乗り物の背景に思いをはせながら組み立てを楽しみ、眺めて悦に入ります。件の乗り物、「ターレットトラック」は、乗り物の種別としての一般名称があやふやなほどマイナーな存在ですが、よくよく調べてみれば、それなりに多彩で深みを感じさせるものでした。プラモデルメーカーはそのあたりに着目して、新たなモチーフとしてこの「ターレットトラック」を選んだとも考えられます。

 現在、アオシマの「1/32 特殊荷役シリーズ」は生産休止中なので、いま手に入る「ターレットトラック」のプラモデルは、海洋堂の「ARTPLA 飼育員とシロサイセット」にセットされているもののみです。このキットを改造して、ありし日の朝霞製作所の「ターレットトラック」を徹底再現してみたり、というのも、プラモデル本来の楽しみ方といえるでしょう。

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みんなのコメント

9件
  • 魚河岸や倉庫で見るけど昔は駅構内で郵便や小包の移送に使ってた時代もあった
    子供の頃に丸ハンドル操縦にあこがれた
  • 貨物駅でも使っていた、友達といつか乗りたいと話したもの。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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