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ソフトバンクとトヨタ自動車の共同出資会社、MONETがもたらす影響力

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ソフトバンクとトヨタ自動車の共同出資会社、MONETがもたらす影響力

自動車産業の構造が大きく変化する

 トヨタ自動車とソフトバンクは、今年2月にMONET(モネ)テクノロジーズを設立した。目的は、オンデマンド(注文対応)モビリティサービス/データ解析サービス/トヨタによる自動運転でのモビリティサービスを行うことの3つである。社長兼CEOはソフトバンクから、副社長兼COOはトヨタから就任。その後、ホンダと日野自動車が出資し、さらに増資をするとともに、いすゞ、スズキ、SUBARU、ダイハツ、マツダも出資を決めた。

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 MONETテクノロジーズでは、仲間づくりとしてコンソーシアム(共通の目的に向かう団体)を立ち上げ、これに自動車メーカー以外の数多くの企業が参画。部品メーカー、損害保険会社、鉄道会社、建築会社、電力会社、航空会社、クレジットカード会社、銀行、商社、学校法人、ファーストフードなど多種多様である。

 そうした関連企業の概要をまとめると、衣食住+移動にまつわる顧客サービスを行ううえで、利用料金の支払いや事故に対する補償などに関連する企業が集まったことになる。

 自動運転を踏まえたモビリティサービス(MaaS)への備えを、トヨタは10年ほど前からスタート。物づくりの製造業ではあるが、MaaSを実現するには、車両の運用や制御を行うためのソフトウェアが必要だ。しかし単に回路をつくるだけでなく、製品に組みあげ、さらには利用者が関わる関係先との情報通信を円滑に行う必要がある。そのためには、自動車産業以外の業界との付き合いが不可欠だ。

 その関係先を模索するうえで、ソフトバンクとの連携が生まれたようだ。豊田章男社長が発表記者会見で語ったところでは、トヨタが関係先と接点を探す際、多くの相手先ですでにソフトバンクが関係を結んでいたり、結ぼうとしていたりしたという。ならば、ソフトバンクと歩調を合わせていくのが賢明だとの判断だ。 通信事業で、トヨタはKDDIに出資しているが、クルマの共同利用(ライドシェア)を視野に、米国のUBER(ウーバー)や、東南アジアのGrab(グラブ)に投資し、それらはソフトバンクの投資先でもある。そこから、共通の視点で将来的なMaaSの在り方を協議できると考えたのではないか。

 それでも、現実的に自動運転が一部で利用可能となったとして、具体的にどのようなサービスを行えるかは、トヨタやソフトバンクにはわからない。実際に顧客サービスをしている事業者からの発案や依頼がなければ身動きできないのである。

 同じことが、トヨタ以外の国内自動車メーカーにも当てはまる。しかも、もっと具体像はわからない、想像もつかないことではないか。ならば、その取っ掛かりの部分をトヨタと共有できれば、将来を見越した物づくりができるかもしれない。そんな思惑が、MONETテクノロジーズへ投資した各メーカーの行動から伝わってくる。

 一方、ここに抜けている国内自動車メーカーがある。日産、三菱自、ふそう、UDだ。日産は、DeNAとモビリティサービスの検証を昨年2月にはじめている。また、元日産でスマートグリッドを含めEVの有効活用を研究してきた人材が、退社し、独自に活動をはじめ、DeNAに深く入り込んでいる。

 そのほか、日産は、ルノーと三菱自とともにベンチャーキャピタルファンド(アライアンス・ベンチャーズ)を設立。

2018年の動きを見るだけでも、

中国最大のモバイル交通プラットフォームを手掛ける滴滴出行(ディディチューシン)のDiDiオートアライアンスに参加中国で自動運転に特化したWeRide.ai社へ投資米国のモビリティプラットフォームへ出資しシームレスなモビリティによる暮らしやすい都市づくりを支援カナダでマルチモーダル交通用のアプリケーションを開発するトランジット社への投資

となっている。

 日産が、ルノーと三菱自との提携を通じて世界一の自動車メーカーグループとなったのはもちろん、国内自動車メーカーとして電気自動車(EV)を量産市販した経験を持つ日産と三菱自による知見は、MaaS実現にとって世界的にも大きな意味を持つ。なぜなら、自動運転を実現するにはEV化が欠かせないからだ。EVであれば、エンジン車の約1/100の速さで制御が可能となる。一方、MONETに出資する国内自動車メーカーは、今日なおEVの商品を持っていない。

 ふそうは、現在はダイムラー社傘下である。ダイムラーは、ルノー・日産・三菱自との提携関係にある。UDは、ボルボグループ傘下だ。ボルボグループは中国企業が筆頭株主であり、欧州メーカーとの関係性を含め様々な連携の選択肢があるのではないか。ダイムラーとボルボはEVトラックの開発を行っており、それぞれ戦略的な動きもあるはずだ。

 いずれにしても、世界の自動車メーカーは単なる物づくりから顧客サービスへ事業の拡張を視野に活動を開始している。その過程で、当然淘汰もはじまるだろう。

 中国の新車販売が鈍化してきたなか、インドが次の開拓市場であったとしても、そう遠くないうちに落ち着きを見せるだろう。人口の大きな国では所得格差も大きく、一部を除き所有する意味が問われる可能性は高い。クルマは利用した方が手軽で安いという価値観がまもなく浸透するはずだ。現金さえ不要になろうとしている今日、スマートフォンがあらゆる使用や利用を便利にしている。それが、自動車先進国とされてきた日米欧でも進んでいくだろう。

 すでに、衣食住で買い方、使い方の価値観に違いを持ちはじめている20~40歳代の人たちが、10年もすれば社会の中心となっていく。そうなれば、社会構造は大きく変化するに違いない。そのとき、クルマの存在理由も大きく様変わりするだろう。10年は、あっという間に過ぎる。そして自動車産業も大転換を迎えるはずだ。

 100年に一度の変革は、既存の事業構造や概念を壊すとてつもない事態をこの先10年でもたらすだろう。

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