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自動車のリサイクル率、98%からなぜ減少? 車体の「長寿命化」がもたらす意外な落とし穴とは

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自動車のリサイクル率、98%からなぜ減少? 車体の「長寿命化」がもたらす意外な落とし穴とは

削減の現実と限界

 自動車リサイクル法をご存じだろうか。この法律の正式名称は「使用済自動車の再資源化等に関する法律」で、ゴミを減らし、資源を無駄にしないリサイクル社会の実現を目指している。クルマの所有者、関連事業者、自動車メーカーや輸入業者それぞれに、リサイクルに関する役割を定めている。

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 この法律は2002(平成14)年に制定され、2005年に施行された。その後、自動車のリサイクル率は大幅に向上し、特に2017年には98%に達した。しかし、2018年からは減少し、2019年には95.8%にまで落ちてしまった。

 自動車リサイクル法の目的は、「自動車由来の廃棄物」を削減することだ。この取り組みにより、

・不法投棄車両の撤去
・自動車の長期使用
・中古部品の活用
・環境に配慮した自動車選択

などが進められ、資源循環型社会の実現に大きく貢献するはずだった。しかし、なぜリサイクル率は頭打ちになってしまったのだろうか。

長期使用がリサイクル効率を圧迫

 自動車リサイクル率の維持が難しくなっている背景には、「自動車の長寿命化」が影響している可能性がある。実は、自動車リサイクル法第3条第1項では、自動車製造業者などに対し

「自動車の設計及びその部品又は原材料の種類を工夫することにより、自動車が長期間使用されることを促進する」

ことが求められている。また、第5条では自動車所有者に対して

「自動車をなるべく長期間使用することにより、自動車が使用済自動車となることを抑制するよう努める」

ことが定められている。実際、自動車の平均使用年数は年々延びており、2016年には15年を超え、2020年には16年となった。その結果、使用済自動車の発生台数は減少し、2009(平成21)年の392万台をピークに、2020年には315万台にまで減少している。

 このように、自動車の長寿命化は使用済自動車の発生を減少させ、リサイクルシステムの効率性に影響を与えている可能性がある。

ASR処理の遅れが引き起こす課題

 課題はこれだけではない。

 自動車の軽量化や多機能化が進んだ結果、使用される原材料に占める非金属の割合が増加してきた。使用済自動車は、解体業者によってエンジン、トランスミッション、触媒、タイヤ、バッテリーなどの部品が取り外され、残りは破砕業者によって破砕される。その後、

・鉄
・非鉄金属類
・ASR(自動車破砕残さ。プラスチック、ゴム、布、樹脂、ガラスなどが多く含まれている)

に分類される。解体と破砕の段階では、重量比で約80%の資源が回収される。そして、破砕後に残るASRが約20%となり、このASRを適切に処理することによって車両全体の90%以上のリサイクルが達成されている。

 しかし、原材料に非金属が増えることによって、このASRに含まれる樹脂類の量が増加しているのだ。ASRの発生量はリサイクル法施行前とほぼ変わらず、そのため従来の金属中心のリサイクル方法では対応が難しくなってきている。

 さらに、2018年には外国でプラスチックなどの輸入規制が強化されたため、輸出されていたプラスチックくずの国内処理が必要になった。この影響で国内処理工場にトラブルが発生し、ASRの処理が遅れる事態も起きてしまった。

EV普及が生む新課題

 一見、自動車リサイクルが限界に達しているように見えるが、実際はそうではない。自動車の寿命が長期化していることは、自動車リサイクル法が目指している取り組みが成功している証拠でもある。

 ASRに含まれる樹脂類の処理についても、リサイクルを促進する取り組みが進められている。たとえば、経済産業省と環境省は使用済自動車に係る資源回収インセンティブ制度の導入に向けた検討を行っている。

 この制度では、ASRが発生する前段階で樹脂やガラスなどの資源を回収し、ASRの発生量を減少させることが目指されている。これにより、ASRの再資源化が円滑に進み、

・リサイクル料金の低減
・自動車リサイクルの安定的な運用

が期待されている。また、自動車技術の進歩にともない、新たな課題も浮上している。それは、電気自動車(EV)の普及だ。特に、EVに搭載されるリチウムイオンバッテリーが新たなリサイクル対象となり、その処理には特別な注意が必要だ。このバッテリーは発火リスクがあり、またレアメタルを多く含んでいるため、安全な資源回収と再利用が急務となっている。

 自動車リサイクル法が自動車メーカーにリサイクルの責任を課したことで大きな成果を上げたように、日本の自動車リサイクルシステムを次のフェーズへ進めるためには、自動車メーカーの役割が重要だ。

 現在、多くのリサイクル事業者は自動車メーカーとの強い連携を持っていないため、そのハードルは高い。しかし、自動車リサイクルは製品開発から廃棄に至る自動車の一生を通して取り組む必要がある。そのため、リサイクルの発展や高度化には、どんな技術開発よりも「連携」が不可欠だといえるだろう。

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みんなのコメント

21件
  • sei********
    「自動車をなるべく長期間使用することにより、自動車が使用済自動車となることを抑制するよう努める」
    と書いてありますが、なぜ13年と18年経過の車両に重課税を課すのかね。矛盾だらけの法律に一貫性が全く無いね。
  • une********
    こんな使い捨て社会では車も成仏できん、もったいない。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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