■激アツのラリーチャレンジが渋川で開催!
2023年7月2日に「TOYOTA GAZOO Racingラリーチャレンジ2023第5戦渋川・伊香保」が開催されました。
初心者だけでなくエキスパートも参加する人気の渋川・伊香保会場とあり多くの観客も会場を訪れていましたが、実際にはどのような盛り上がりを見せたのでしょうか。
【画像】まさか…あのAE86が現れた! カッコよすぎ…写真を見る!(26枚)
TOYOTA GAZOO Racingラリーチャレンジはその名前の通り、ラリーを初めてみたいという人や、まだ始めたばかりで大きな大会に出るまでの練習をしたい、という人にはぴったりな入門ラリープログラムです。
ラリーの他に年に数回練習会も行われラリーの知識や走り方なども習うこともできます。
その一方で全日本ラリーや地区戦などに参加している、ドライバーやコ・ドライバーもいますので、そういう人とコミュニケーションをはかることもできる。とても和気あいあいとしたラリーです。
国内では全日本ラリー選手権や地区戦などがあります。多くの大会の場合、金曜日にレッキと呼ばれるコースの下見が行われ、土曜日・日曜日でラリーが開催されます。(例外の場合もあります)
金曜日のレッキでコースを下見して、どのルートでリエゾン(一般道を移動する区間)を走り、どこからスペシャルステージ(SS)でタイムを競うのかを確認。
SSの中もレッキ中は一般車と同じ速度で安全確認を行いながら、コースの難易度や走り方、マシンのセッティングなどを考えます。
しかし一般的なサラリーマン生活などを送っていると金曜日からラリーに赴くのは難しい場面もあるでしょう。
そのためラリーチャレンジは週末の土曜日・日曜日で完結。さらに、どうしても日曜日しか休めないという人でも対応できるように、日曜日のワンデイ参加もできるようになっています。これならば日曜日だけラリーに参加することもできます。
第5戦渋川・伊香保では90台のエントリーが、あっというまに締め切られるほど人気の開催地です。
土曜日の午前中に会場となる渋川スカイランドパークに集結し、チームに割り当てられた場所にテントを建てていきます。
参加受付を済まし、お昼からレッキに出ていきます。今回のラリーでのSSは、東吾妻2.858kmで競うSS1&SS3、北榛名5.274kmを競うSS2&4、渋川スカイランドパーク0.348kmを競うSS3&6という3ヶ所で16.960km、リエゾンが81.498kmのトータル98.458kmを走り抜けます。
渋川伊香保ということもあり、伊香保の名所である石段街を通過していき、漫画「頭文字D」で有名になった榛名山の近くを通るルートになっています。
レッキの土曜日はあいにくの雨模様になってしまいましたが、参加した車両が石段街を通過していく時には、観光客もラリーカーに注目していました。
あけて日曜日は前日の雨が嘘のように晴れ渡り猛暑の日。そんな暑い日にも関わらず、ラリーパークが設置された渋川スカイランドパークには4500人の観客が訪れたそうです。
たった4500人と思うかもしれませんが、去年はコロナの影響もあり3000人だったといい、そもそも全日本ラリーではなくいわば入門カテゴリーのラリーを見るのに4500人も集まったということがすごいことです。
ラリーパークではTGRラリーブース、ダイハツブース、STI用品物販ブースといった店舗が展開されたほかに、地元渋川伊香保の名産物やフードトラックが多く出店して盛り上がっていました。
開会式には群馬県知事や渋川市長、トヨタの佐藤恒治社長、GRカンパニープレジデントの高橋智也氏も来場しており、開会式で挨拶を行ったあとには会場内を視察していきます。
佐藤社長も高橋プレジデントもエントラントと普通に会話をされていましたし、写真撮影にも気軽に応えていらっしゃいました。
2人とも社長やプレジデントという肩書きを外して、1人のモータースポーツ好きという立場でみなさんと接しており、エントラントやファンの皆さんと同じ目線でラリーを楽しんでいる様子が見てとれました。
そんな佐藤社長は次のように渋川大会を語っています。
「この盛り上がり方は最高だよね、数年かけて地元のみなさんと一緒に育ててきたラリーがこうやって多くの人に楽しんでもらえるのは嬉しいですよ。
地元のスバルさんも大きく盛り上げてくださっています。去年はGRとスバルの旗を配っても、圧倒的にスバルの旗の人が多く配られていて『負けた!』と感じました。
なので今年はGRの旗を多くしました(爆)」
このように配られる旗の枚数も気にしているほど、盛大に盛り上がっています。
またGRカンパニーの高橋プレジデントは次のように話しています。
「このラリーが根付いてきていることをいろいろな人とお話しさせていただいて感じています。
オーガナイザーの人はずっとやっておられるので感謝します。ここのラリーに対するお客さんの期待値も結構高いですし、ギャラリーステージなども盛り上がっていましたよね。毎年の積み重ねが繋がってきているのかなと思います。
組織委員会のみなさんのご協力もそうですし、地元のラリークラブの皆さんとかがSSで走るコース清掃を行ってくれるんですね、そういう地道な活動をしてくださっていることにも感謝していますし、皆さんに支えてもらってのラリチャレなんだなと思います。
ラリーツーリズムも行っていて、関東圏の方でも伊香保温泉に泊まる。他の地域の人も伊香保温泉に泊まってみる。
また他の地域に行った際にはその地域の温泉や名所などを訪れる。そういう地域全体を盛り上げることをもっとしていきたいです」
さらに世界的なラリードライバーとして知られる新井敏弘氏がコース設定にも関与しているということで、次のように話してくれました。
「昨日レッキでコースを見に行きましたが、結構テクニカルなコース設定になっていましたね。コースも面白いからラリー競技としての魅力もあるのだと思います。
周辺地域のみなさんのご理解とご協力があって、周辺イベントの盛り上がりもあり、町おこしとしても役立っていると捉えていただき、そういうのは積み上がっているんだなと感じました」
ラリーそのものの魅力と、街自体の魅力も相まってTGRチャレンジが盛り上がっているのだろうと話していました。
■なんとスバルもラリーに協力!? どんな走りを見せたのか?
ラリーでは競技車両の前に、「まもなくラリー車が来ますよ」という案内と、「コースチェックを行う」ためのゼロカーが走ります。
ゼッケンが「00」であったり「0」のため0カーと呼ばれます。
今回は0カー、0Aカー、0Bカーと3台の0カーが走りましたが、なんと0Aカーをスバルのワークスドライバーである山内英輝選手が乗り込みました。
助手席のコ・ドライバーには全日本ラリー選手権の、JN-3クラスにてBRZでチャンピオンを獲った竹内源樹選手が乗り込みます。
竹内選手はスバルのエンジニアでもあり、スーパー耐久に参戦する「#61 Team SDA Engineering」のチーフエンジニアも務める人です。
今回のラリーでレッキ1回、午前中のセクション1、午後のセクション2と合計3回同じ場所を走りました。
レッキは雨も降ったりとコンディションは良くありませんでした。本番日は猛暑で晴れましたが前日の雨が残っており、午前中のセクション1のときに日陰では滑りやすい場所もありました。
午後になると全面的に渇きましたが、今度は砂利が出てくるという、同じ路面が一度もありませんでした。
そんなこともあり山内選手は0Aカーについて、次のように話しています。
「とにかく怖い。路面が濡れているとどこまで滑っていくのかわからない。晴れて大丈夫だろうと思うと日陰は苔むしていて滑る。
最後は砂利が出てきてそれでまた滑る。同じ感じで全然走れない。でもとても楽しかったです。良い経験をさせてもらいました。
隣りに乗っている竹内さんに、ここはもっと行けるよ。って言われるんですけど、自制心が勝っていけない。
でも全体的に神経の使い方とか心の持ちようなどは、『どのカテゴリーでも同じなのか?』と思えました。
段々と慣れてくると行けそうかなと思えてくるんです。そういう時に事故を起こしてしまいそう。
ゼロカーが事故では洒落にならないので、ゆっくりで良いです(笑)」
コ・ドライバーの竹内さんは次のように話してくれました。
「分かりやすいようなペースノートを作って読んでいたんですけど、呪文を聞いているようで分からない。
って山内さんは最初に言っていたんですけど、段々とわかるようになってくると、徐々にペースが上がっていきましたね。
こっちがブレーキ!ブレーキ!って言っても見えているからまだその先まで行っちゃったり。でも楽しんでいるのがわかりました」
このようにスーパー耐久でもエンジニアとドライバーという立場で頻繁に会話を行っているだけあり、コミュニケーションはスムーズに行えていたそうです。
ラリーチャレンジはトヨタ車限定で行われており、メインはヤリス、ヴィッツ、アクアといった小排気量で初心者でも入りやすいような車両が多く走っています。
その他にGR86や86、AE86と時代を超えた86対決や、軽自動車のダイハツコペンGR、TGR-WRG GRヤリスと言ったWRCを戦うラリーカーのベース車みたいな車両であったり、トヨタ車体が走らせるハイエースが走ったりと見ている方も楽しめるラリーです。
コペンを走らせるD-SPORTレーシングでは、「小排気量ですし、トレッドが狭いことで他の車両と路面が合わず走りにくいところもありました。コペンでの久しぶりのラリーでした。以前からあった問題点を改善したパーツを多く盛り込んだ結果、良いラリーができたので、次に繋げていきたいです」と振り返ります。
異色のハイエースを走らせたトヨタ車体では「前回のニセコに続きまだ2回目のラリーで何をどうしたら。という状況ではありますけど、ハイエースもいろいろできることがわかりました。今後どのようにしていくかも検討しながらラリーを続けていきたい」と苦労の中に次に繋がる開発が見えているそうです。
※ ※ ※
全12戦で戦われ、次回は第6戦利府(宮城県利府町)が開催されます。
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