2023年4月28日に発表された、ダイハツが開発した海外市場向けモデルの側面衝突試験の認証申請における不正行為。それに関連する社内点検のなかで、新たに同社の「ロッキー」とトヨタにOEM供給されている「ライズ」のハイブリッド車においても、ポール側面衝突試験に関する認証手続きに不正がある事が判明したと、同5月19日に公表された。現在、ロッキーハイブリッドとライズハイブリッドは出荷・販売停止となっている。
「トヨタ」と「不正発覚」といえば昨年2022年に、グループ会社であった日野自動車で相次いで不正が発覚したことが記憶に新しい。またしても、またしても、トヨタグループ会社で発覚した不正。なぜ不正は起こってしまうのか。元自動車メーカーの開発エンジニアの観点で考えていきたい。
エンジニアなら気持ちは…わかる?「それでもあってはならない」ダイハツ認証不正問題に「喝」!!
文:吉川賢一
写真:TOYOTA、DAIHATSU
欧州のパワートレイン戦略を180度変えてしまった、VWのディーゼル車不正
トヨタグループに限らず、自動車メーカーが関わる不正発覚はこれまで、たびたび報じられてきた。日本で大きく報じられたものとしては、冒頭で触れた2022年の日野自動車の件のほか、2016年の三菱自動車の燃費不正、また2017年に報じられた日産自動車の無資格者による完成検査、などだろう。ほかにもいくつか不正が発覚した件はあるが、なかでも自動車業界としてインパクトが大きかったのは、2015年9月に発覚した、フォルクスワーゲンのディーゼルエンジン車が、排出ガスを不正にコントロールしていると、国際クリーン交通委員会(ICCT)が報じた一件だ。
当時、年々厳しくなるCO2排出規制に対し、基準値を満たさない場合には、その販売台数に応じて罰則金が課されることが決まっていた欧州。基準をクリアしているかを確認するCO2排出テストは、NEDC(新欧州ドライビングサイクル)と呼ぶ、決められたサイクルをエンジンに与え、その際のCO2排出量を測定する方法が採られていた。
都市部の走行を模擬して、アクセルとブレーキをごく短い間隔で数回ほど踏みかえたり、高速道路を模擬して加速走行、定常走行、減速走行を行うテストだ。VWは、CO2排出テストの条件に当てはまる場合のみ、特別なプログラムを通過して、尿素の投入量(ディーゼルエンジンが排出する窒素化合物を減らす効果がある)を調節、CO2排出量を大幅に減らすソフトウェア工作を行っていたのだ。
ソフトウェア工作されたエンジンは、排気量1.6Lと2.0Lの直4ディーゼルエンジンで、2008年以降のゴルフ、ジェッタ、ビートル、ティグアン、パサート、そしてアウディやシュコダ、セアトにも使われていた。この事件の闇は、一人の社員が苦し紛れや怠惰によっておこなった不正ではなく、会社ぐるみで黙認していたということ。その内容は、当時のメディアで大きくバッシングされ、欧州全体の次世代パワートレイン戦略がディーゼルからバッテリーEVへと大転換するほどのインパクトであった。
2022年11月22日から日本で販売開始した、フォルクスワーゲンのフル電動EV「ID.4」。1充電での航続距離は618kmにもなる
設計変更できる時間や予算的なキャパシティがなかった!??
ロッキー/ライズに関する不正の内容は、左右の試験データを提出する必要があるポール側面衝突試験において、運転者席側(右)のデータについては、左側のデータを提出していた、というもの。現在のところ、これ以上の詳細については公表されていないため、今回は先に発覚した不正について、なぜ起こってしまったのか考察しようと思う。
先に不正が確認されたモデルは、ダイハツがマレーシアで展開する「プロドゥア」のモデルのほか、トヨタにOEM供給されている車種も含まれていたという(すべて海外販売)。不正の内容は、ドアトリムの一部へ切り込み加工を施して、変形モードをコントロールしようとしたが、正式な設計には織り込まれていなかったことだ。
これについて、YouTubeチャンネル「トヨタイムズ」で行った生配信のなかで佐藤社長は、(事実関係は調査中ではあるが、エンジニアとしての一般論として)「今回の不正は、そもそも十分な実力を有していたうえで、ドアトリムの一部に切り込み加工を施して最弱部位を作り、より安定的に変形モードをコントロールして、安全方向へもっていこうとしたエンジニアの工夫だったはず。それを、なぜ設計変更が必要だとオープンに言えなかったのか、いえる環境となっていなかった理由は追求していく必要がある」としていた。
エンジニアたちは、日々よりよい設計を目指し、設計変更及び実験を行っている。今回のように、課題をブレイクスルーするようなアイディアであれば、設計変更を求めることは決して「悪」ではないが、その変更を、「いつのタイミングで言うのか」は、筆者のエンジニア経験の中でも、ものすごく気を遣うものだった。
新型車開発プロジェクトにおいて、車両コストやパフォーマンスは当然重要なのだが、「開発日程」も同じかそれ以上に重要。クルマに限ったことではないだろうが、クルマのプロジェクト計画においても、目標やコンセプト立案、プロトタイプカー開発(設計及び実験確認)、生産試作車確認など、開発のなかだけでもたくさんの工程があるが、その後も製造、流通、広告、販売と、各部署がどのタイミングで何をやるべきかが厳格に決められている。
自工程で進捗遅れを発生させることは「悪」であり、後工程には絶対に迷惑をかけられない。発売が1か月延びることで、その間に法規が変わって再開発をすることになり、再び数十億の開発費がかかる、といったことも考えられるからだ。
今回の件も、おそらく、リカバリできる時間や予算的なキャパシティはもはやなく、設計変更をすると関連部署へ多大な影響を及ぼすことになると考えたのだろう。先行検討段階ならまだしも、認証実験という最終的な局面でNGが出て手戻りなんてことになれば、車体開発自体がやり直しとなり、大きな損失幅が生じてしまう。そうしたことを懸念したのではないだろうか。
豊田章男会長も、同生配信において、「皆が守っていかなければならないモデルチェンジの時期(日程)が、現場においてプレッシャーになっていたことも充分考えられると思います」としていた。事実については今後明らかになっていくと思われるが、設計担当者や実験計画、実験実施担当の当事者に、そうした暗黙のプレッシャーがあった可能性は高いと思うと、そうした行為をさせてしまう風土が悪かった、ということなのかもしれない。
側面衝突試験において、人員に対して危険部位が発生しないことが合格条件。ドアトリムの一部へ切り込み加工を施して、変形モードをコントロールしようとしたが、正式な設計には織り込まれていなかったことが問題となった
安全に問題がなくても、あってはならないこと
ダイハツによると、不正行為が判明した後、速やかに審査機関・認証当局へ報告し、相談のうえ、トヨタとも協議。認可対象国への出荷を停止したという。またトヨタ立会いのもと、ダイハツ社内で、不正改造部品を取り除いた正規部品にて、再試験を実施し、定められた基準を満たしていることを確認、報告したという。
前述したフォルクスワーゲンの不正は会社ぐるみで黙認していたという、明らかな不正だが、今回の件は、不正は不正でも、フォルクスワーゲンの悪質さとはわけが違うと推察される。
ただ、安全性に問題はなかったとしても、認証試験を通すために設計と違う加工を施すことは、製造業としてはあってはならないこと。ダイハツのみならず、トヨタグループや協力会社等への影響も計り知れない。今回、国内で販売されており、かつ大人気モデルであるロッキー/ライズにも不正が確認されたことで、問題の深刻度はさらに増した。こうした責任について、どういった最終判断を下すことになるのかはまだ先のようだが、トヨタがどう決着させるかは見届けなければならない。
不正の対象となった、トヨタがタイやUAE、サウジアラビアなどで販売する「ヤリスエイティブ」。対象車種でもっとも対象台数が多いモデル
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みんなのコメント
販売戦略でリサーチした結果に基づいてやってるのか分からんがキモチワルイ
顔を売って置いて何かあれば「カンベンして下さい・・・」ていつもの顔で言われれば何気に許して貰える
芸能人が犯罪起こした時と同じ感覚なんだろなトヨタ擁護してる信者達は