EVシフト減速の流れが一過性のものではなくなっている
日本国内における7月の電気自動車の販売動向が速報。EV販売台数、EVシェア率ともに前年比マイナス成長という、日本国内のEVシフト停滞模様について解説します。
価格競争力は十分! スペックも凄い! 驚異のEV「BYDシール」を「テスラモデル3」と徹底比較してみた
今回取り上げていきたいのが、日本国内における最直近のEV普及動向です。まず、このグラフは、2018年以降のバッテリーEVとプラグインハイブリッド車の合計販売台数を月間ベースで示したものです。最直近の2024年7月の販売台数は8741台と、6月よりも多くの販売台数を実現したものの、前年同月は1.1万台以上であり、マイナス22%と大幅なEV減速の兆候が見てとれます。とくに2023年12月以降、8カ月連続で前年同月比でマイナス成長という、EVシフト減速の流れが一過性のものではなくなっている状況です。
次に、新車販売全体に占めるバッテリーEVとPHEVの販売台数の合計の比率を示したグラフを見てみると、直近の7月は2.58%と、前年同月の3.49%と比較しても明確にシェア率が低下している状況です。さらに、2022年7月も3.54%であったことから、じつは2年前のEVシェア率よりも悪化してしまっているわけです。
次に、バッテリーEVの販売動向を詳細に確認していきたいと思います。まず初めに普通車セグメントと軽自動車セグメントそれぞれのバッテリーEVの販売台数の変遷を見てみると、直近の7月は5058台と、前年同月比で19.7%ものマイナス成長。さらに2022年7月と比較しても16.3%ものマイナス成長です。
さらに、普通車セグメントを、日本メーカーと輸入車メーカーそれぞれにわけて示したものを見てみると、白で示されている輸入EVは、前年同月比で27.8%ものプラス成長を実現した一方、ピンクで示されている日本メーカーの、普通車セグメントのバッテリーEV販売台数は1021台と、前年同月比でマイナス24.8%という落ち込み具合を記録しています。このことからも、現在の日本国内のEVシフト後退のもっとも大きな要因は、日本メーカーの、とくに普通車セグメントの需要が大きく低下しているからであるといえます。
また、現在の日本のバッテリーEVの販売シェア率が、世界の主要国と比較してどれほどの立ち位置であるのかを確認してみると、6月の世界全体のシェア率は14%に到達。さらに、7月の中国市場は、歴史上最高水準の28%オーバー。四台に一台以上がバッテリーEV販売で占められています。いまだにバッテリーEVが60台に1台以下という日本とは、まるで違う世界線にいる様子が見て取れるでしょう。
それでは、この日本国内においてどのようなEVが人気であるのかを確認していきましょう。
まず初めに、2024年の主要自動車メーカー別のバッテリーEVの販売台数の変遷を見てみると、やはり日産の販売台数が圧倒的な存在感を見せています。また、その日産を除いた販売台数の変遷を見てみると、テスラが販売台数でリード。その次は軽EV2車種をラインアップする三菱。そして、中国BYDがトヨタ超えを実現してきている状況です。
とくにテスラについて、月間販売台数の変遷を見てみると、7月はおよそ317台を達成しました。
ちなみに、テスラ独自の急速充電ネットワークであるスーパーチャージャーは、7月末現時点で累計122箇所、604基を建設しました(実際に稼働中なのは120箇所)。
BYDシールの受注台数はすでに300台以上
次にトヨタのEV販売動向について、トヨタは現在bZ4X、レクサスUX300e、RZという3種類のバッテリーEVを発売中ですが、7月に合計で152台と、前年同月の280台と比較すると、急速に減少している様子を確認可能です。
まだ7月中の販売内訳は判明していないものの、6月は、bZ4Xが83台、UX300eが18台、RZは47台でした。なかでもbZ4Xは、2023年末からKINTOを通じたカーリースのほかに一般向けの売り切り販売を開始しています。このことからも、やはり日本国内では、いくらトヨタといえども、EVをラインアップすれば売れるというような甘い状況ではないといえるのかもしれません。
また、日産アリアの販売動向について、6月は354台と、アリアの月間販売台数の変遷を示す薄緑のラインを追ってみると、少しずつ販売台数が回復し始めているようにも見えます。3月からの販売再開後、EV性能をはじめとして、オプション装備内容をほぼ変更していないにもかかわらず120万円もの値上げを行ったことでどれほど需要が落ち込んでしまっているのか。120万円もの値上げに対して、今後ユーザーがどこまでアリアに価値を見出すことができるのか。販売台数の行方には注目です。
最後に注目するべきは中国BYDの存在です。BYDは7月度で207台を発売することに成功。4月以降、BYDのEVに対する補助金は35万円と大幅減額されていることを踏まえると健闘しているように見えます。
もしかしたら、直近で高感度ランキング輸入車部門トップ、自動車部門でもNo.2である長澤まさみさんの出演するテレビCMが好影響を与えているのかもしれません。実際にBYDの販売店への来店者数も前年同月比で86%もの増加が確認されています。
その上で、BYDが6月末から発売をスタートしているシールについて、発売開始1カ月の段階で、すでに300台以上の受注台数を獲得しています。RWDグレードの補助金も45万円と、当初の予定額よりも増額されたことも好材料でしょう。7月の3車種の受注合計も400台を超えていることから、おそらく8月・9月にかけて、月間300台級の販売台数を実現してくる見込みです。この販売規模は、プジョーなどの中堅メーカーと同等となります。すでにトヨタのEV販売台数すらを超え始めていることからも、果たして下半期、シールの追加とテレビCMの浸透によってどれほど販売台数を増やせるのか。トヨタとのEV販売台数対決の行方も含めて目が離せません。
いずれにしても、この日本国内のEVシフト動向は、前年同月比でマイナス成長であり、EVシフト後退という状況が見て取れます。なかでも問題であるのが、日本メーカーの、とくにアリアやbZ4Xなどのような普通車セグメントの販売動向が芳しくないという点でしょう。残念ながら2024年シーズンは、この普通車セグメントに対して日本メーカーは新型EVを投入する予定がないことから、日本のEVシフトが今後も後退していく可能性が高いと思います。
他方で、軽自動車セグメント、および輸入メーカーのEVの存在によって、そのEVシフト後退をどこまで食い止めることができるのかに期待できるかもしれません。とくにテスラとBYDという輸入EVメーカーの販売台数増加、そしてホンダのN-VAN :eという最新の軽EVの投入は、2024年後半の最注目動向となりそうです。
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みんなのコメント
温暖化防止にもなるし、食わず嫌いを直さなければ日本置いてかれるよ。