中国メディア100名を日本に招待して試乗会開催
ジーリーは中国・浙江省に本拠地を置く民間自動車メーカーで、現在もトップを務める李書福氏によって1996年に設立された。
2010年にはボルボ、2017年にはロータスを買収。2023年のグローバル販売台数は約270万台(1位はBYDの302万台)を記録し、中国国内で常にトップグループに位置する一大グローバル自動車企業へと発展している。
この度、ジーリーは中国の自動車動画メディア「30秒※車」と協力し、中国で販売している車種を日本へ持ち込んで試乗や撮影を行った。
用意されたのはセダン「プリフェイスL(中国語名:星瑞L)」とSUV「星越L」の2車種で、後者はロシアや中東市場などでは「モンジャロ」としても販売されている。
まずはプリフェイスLだが、こちらは2020年に登場した「プリフェイス」のマイナーチェンジモデルで、プラットフォームはボルボ C40/XC40でもお馴染みの「CMAプラットフォーム」だ。ボディサイズは全長×全幅×全高=4825×1880×1469mmと、プリフェイスよりも全長50mm、全幅11mm拡大されているが、ホイールベースは変わらず2800mmとなる。
また、プリフェイスには純ガソリンモデルも用意されている一方、プリフェイスLはBHE15-BFZ型1.5L直列4気筒ターボエンジンを搭載するハイブリッドのみの設定だ。
エンジンだけでなくトランスミッションもジーリーグループで自社開発したとしており、搭載する3速ハイブリッド専用トランスミッション(DHT)はデュアルクラッチトランスミッション(DCT)のように、シームレスにエンジン駆動とモーター駆動が切り替えられるのを特徴としている。
1日目は筑波で開催 スケジュールはグダグダ
星越Lは全長×全幅×全高=4795×1895×1689mm、ホイールベース2845mmのミドルサイズSUVとなる。
サイズ感はボルボXC60に近いが、実際のプラットフォームはXC60の「SPAプラットフォーム」ではなく、プリフェイスLと同じCMAプラットフォームとなる。C40/XC40のようなコンパクトSUVから、ひと回り大きいサイズの星越L、そしてセダン車種であるプリフェイスまでをまかなえるほど、CMAは拡張性の高いプラットフォームと言えるだろう。
星越Lは2021年に初登場、プリフェイスと同じくこれまでに何度かパワートレインの追加を経て、2023年12月に最新モデルが登場した。今回日本に持ち込まれたのは、プリフェイスLと同じエンジンとトランスミッションを搭載するモデルとなる。
今回の企画、1日目は茨城県下妻市にある「筑波サーキット」から始まった。企画の趣旨としてはジーリーの2車種を日系メーカーのハイブリッド車2車種と比較するもので、比較対象としてプリフェイスにはトヨタ・カムリ、星越LにはホンダCR-Vが用意された。
当日のタイムスケジュールは、中国企業が仕切るイベントらしくグダグダだったが、なんとか試乗枠を確保して筑波サーキット「TC2000」での試乗が実現した。
試乗は担当者を助手席に乗せるスタイルで、コース上に設置されたパイロンに沿ってスラローム走行やフル加速・フルブレーキング、そして通常のサーキット走行などを体験できる内容だ。
通常走行においてもどこでブレーキを踏むか、どうコーナーを曲がるかがパイロンの位置によって細かく決められていたため、本気のアタックとはならず、少し不完全燃焼のようにも感じられた。
パワートレインの制御は優秀!
また、プリフェイスも星越Lもスポーツ車種ではないため、サーキットで試乗したところで何を伝えたいのかという疑問も生じた。
一方でパワートレインの制御は優秀で、ストレスなくモーターとエンジンを切り替えてくれる。加速力もトルク320Nmのモーターのおかげで納得の行く仕上がりだ。
2日目は舞台を群馬県の名峰・榛名山へと舞台を移し、プリフェイスLはカムリとの「峠」対決に挑んだ。また、星越LはCR-Vとの燃費対決のため、東名高速道路から首都高速神奈川7号横浜北西線・横浜北線、湾岸線、そして東京湾アクアラインを走破する企画を実施した。
この2つの企画は「30秒※車」がその様子を生配信、総視聴者数5万人を超えるほどの注目を浴びたとのこと。筆者含む日本側メディア数人はプリフェイスLとカムリの対決を見届けるべく榛名山まで同行したのだが、直前になって生配信に出演することを告げられたり、「試乗」と「同乗」を勘違いされて危うく試乗の機会がなくなりそうになったりと、かなりヒヤヒヤした場面もあった。
プリフェイスLは峠という激しい環境でも変わらずに、そのパワートレイン制御の優秀さを見せてくれた。乗り味に関しては柔らかすぎていまひとつとも個人的には感じたのだが、逆に言えばフランス車のようにしなやかさとも形容できる。こればかりは個人の好みだが、別にプリフェイスLが悪いというわけではなく、峠においてロールは多めだったものの、それなりにハードな走行に応えてくれた印象だ。
中国でも大人気の「頭文字D」にちなんで秋名山対決
「30秒※車」が企画した「峠・対決」はただ単に榛名山の峠を走るだけでは終わらなかった。
中国でも人気な「頭文字D」要素を盛り込むべく、カムリとプリフェイスL両方の車内にコップ1杯の水、そしてトランクには豆腐を重ね、どちらがよりこぼさないか・崩さないかという「コント番組」のような対決も実施。この状態で峠を攻めるわけでもなく、ただ安全に時速30キロメートル前後で峠を下るだけだったのだが、生配信のコメントを見る限りはかなりの盛り上がりを見せていたようだ。
ちなみにトランクの豆腐はカムリの方が「不自然に」崩されたようにも見えたが、そこはあえて私は何も言及しなかった。
ジーリーは今回2車種を日本に持ち込んだが、別に日本での乗用車販売計画があるわけではない。ただ単にコンテンツ作りの一環であり、また宣伝の一端を担っているにしか過ぎないのだ。
それでも中国国内からの反応は「日本で売っていない中国車をわざわざ日本に持ち込んだ」事実だけでも話題性に富むし、その目的がライバルである日本車2台との対決も含むとなれば、中国国内の消費者は必然的にジーリーを応援したくなるもの。その対決相手がたとえ、2017年に登場して今はモデルチェンジによって旧型モデルと化したカムリとCR-Vであっても、表面上はジーリーの2車種が勝利しているように見えればジーリー側も消費者側も自尊心を十分に保てるのだ。
中国メーカーのマーケティングにおけるダイナミックさには毎回驚かされる、そう感じた今回の試乗企画であった。
(※はりっしんべんに董)
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なお愛知の将軍様は敵前逃亡