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オンライン配信された「グッドウッド・スピードウィーク」に英国自動車文化の奥深さを知る

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オンライン配信された「グッドウッド・スピードウィーク」に英国自動車文化の奥深さを知る

Goodwood Speed Week

グッドウッド・スピードウィーク

オンライン配信された「グッドウッド・スピードウィーク」に英国自動車文化の奥深さを知る

伝統のグッドウッドに新たなプログラムが誕生

近年、イギリス・グッドウッドでは3つの大きなモーター・イベントが開催されている。ひとつは3月に行われるメンバーズ・ミーティング、ふたつ目は6~7月に行われるフェスティバル・オブ・スピード(FoS)、みっつ目が9月に行われるリバイバル・ミーティングだ。

そこに今年、新たなプログラムが加わった。それがさる10月16日から18日にかけて、グッドウッド・モーターサーキットにおいて行われたグッドウッド・スピードウィークである。

相次いで休止されたプログラムを補完する「スピードウィーク」

今年に入って世界を襲ったCOVID-19の影響は、グッドウッドにも例外なく現れた。3月に入りメンバーズ・ミーティングの休止が発表された後、たて続けにFoSも、リバイバルも休止。それを伝えるグッドウッドから送られてきた主宰のリッチモンド公爵のメッセージには無念さが滲み出ていたが、そこで彼らは中止という言葉は使わず、あくまでも休止、延期という表現に留めていた。

とはいえヒストリックカー・メインのイベントゆえに高齢者が多いこと、屋外でも15万人以上(FoSは30万人!)近い観客が集まること、そしてアメリカからのエントラントや観客が比較的多いことを思うと、COVID-19が収まるまではイベントの開催は難しいのでは? と正直思っていたのも事実だ。

ところがこの夏になって彼らは、無観客オンライン配信という条件で、スピードウィークを開催することを発表したのである。

休止になった3イベントを凝縮したようなスピードウィーク

グッドウッドは1990年代から、場内放送はもとよりDVDの販売、そして近年ではライブストリーミングなど、映像を通じて“魅せる”ことに注力してきたイベントであった。今にして思えば、メンバーズ・ミーティングが休止となってからというもの、毎週金曜から土曜にかけて過去のレース映像をライブ配信していたのも、今回のイベントへの序章ということだったのだろう。

グッドウッド・スピードウィークは、毎年FoSが行われるグッドウッド・ハウスの敷地ではなく、そこから道路を1本隔てたメンバーズやリバイバルの舞台となるグッドウッド・モーターサーキットを舞台に行われた。

その内容はまさにメンバーズ、FoS、リバイバルの良いところをギュッと抽出したようなものだった。

1日中ぎっしりとサーキットイベントを実施

基本はサーキット・レースが中心ではあったものの、「シュートアウト」と名付けた1ラップのタイムトライアル、サーキットの敷地内でラリーカーがSS競技を行う「ラリースーパースペシャル」、FIAインターコンチネンタル・ドリフティング・カップの猛者たちによる「グッドウッドドリフトカーナ」、さらにF1の70周年記念デモラン、ポルシェのル・マン初優勝50周年記念デモラン、TWRジャガー・デモラン、ロータス エヴァイヤやマクラーレン エルヴァが姿を見せた「ミシュラン・スーパーカーラン」などのスペシャルプログラムが、朝から日没までギッシリと用意されていたのである。

またそれ以外にもダーモット・オレアリーがMCを務め、リッチモンド公爵、マーク・ウェバー、キアヌ・リーブス、ローワン・アトキンソンなど多彩なゲストを迎えてのトークショーが別チャンネルで配信されたり、一般参加の「リバイバル・ベストドレス・コンペティション」、子供を対象とした「デザイン・ミニ・コンペティション」も開催。ベストドレスの優勝者は来年のリバイバルにペアで招待、またデザイン・ミニでは、優勝したカラーリングを施したミニが来年のリバイバルのレースに参加するという副賞も添えられていた。

ジャッキー・スチュワートも元気な姿を見せる

グッドウッドといえば、現役組からレジェンドまで名だたるレーシングドライバーやVIPが顔を揃えることで知られるが、今回ベテラン勢はイベントの顔であるジャッキー・スチュワートとヨッヘン・マスがいたくらいで、基本的に若手をメインに構成されていた。またここに来て感染者が増えつつあることもあり、ヘルメットを被っている時以外は、全員マスク着用でしっかりとディスタンスをとり、握手やハグは不可など徹底した感染対策が採られていたのも印象的だった。

エントラントも基本的にイギリス勢が多かったように見受けられたが、それでも用意されていた10のレースカテゴリー(今回2輪は用意されていなかった)全てに25台以上のエントリーを集めたところに、グッドウッド、そしてイギリス・クラシックカー界の底力が感じられた。

スターリング・モスを偲んだメモリアルレースを開催

この週末だけで、メンバーズの花形である「ジェリー・マーシャル・トロフィー(70年から82年までのサルーンカー・レース)」と、リバイバルの花形である「セント・メアリーズ・トロフィー(60年から66年までのサルーンカー・レース)」、「RAC TTセレブレーション(60年から64年までのGTカーのセミ耐久)」が見られるというのは、これまでにないお得な経験(しかもレースが非常にコンペティティブで面白かった!)だったが、中でも注目だったのが、4月に亡くなった“ミスター・グッドウッド”サー・スターリング・モスを偲んで「キンララ・トロフィー」から名を変えた「スターリング・モス・メモリアルトロフィー」だ。

1963年までのGTカーを対象とした60分のセミ耐久レースには25台がエントリー。アレックス・ブランドル(マーティン・ブランドルの息子)や、ロード・マーチ(リッチモンド卿の息子)といった若手から、ダリオ&マリノ・フランキッティ兄弟、マイク&アンドリュー・ジョーダン親子などのベテランレーサー、ニック・パドモア、ギャリー・ピアソンなどプロ・ヒストリックカー・レーサーたちが、ジャガー Eタイプ、フェラーリ250GT SWB、アストンマーティンDB4GT、オースティン ヒーレー3000といった名車で本気のコンペティションを繰り広げたのである。

タイムトライアルからラリーまで多彩な催しで世界を魅了

一方、今回初の試みとなった「シュートアウト」では、トム・クリステンセンのアウディR8 GT2やコッティンガムのダラーラSP1 LMP1などを抑え、パドモアのアロウズA11 F1が1分9秒973という圧倒的なタイムで記念すべき初代王者に、またサーキットから外周路までをフルに使い7つのステージで競われた「ラリースーパースペシャル」は、フォード・フィエスタR5のリース・イエーツが制した。

このほかにも紹介しきれないほどの見所があったこのイベント、2010年以来毎年グッドウッドに通い続けていた身(今回はオフィシャル以外のプレスの入場も許可されていない)としては、自室のPCでコースサイドに誰もいないグッドウッドのレースを観戦するというのは、すごく不思議な感覚だった。

これだけの内容であれば、ぜひ現場で生で見たかった!というのが正直な感想だが、ドローンやオンボードカメラを駆使した迫力ある映像、コメンタリーやゲストの軽快なトーク、そしてグッドウッドの全てというべき多彩なコンテンツは十分以上に楽しめるもので、時差も忘れて3日間画面の前に釘付けとなってしまった。実際、150カ国(日本からのアクセスも多かったそうだ)以上で数百万人の人々が、スピードウィークを楽しんだという。

新しいイベントのカタチを見せて成功を収めたスピードウィーク

「世界中のファンにスピードウィークを届けることができたことに興奮しています。すべての人にとって困難な年でしたが、多くのイベントが開催できなかった中で、国際的なグッドウッドのコミュニティと、新たなファンの皆さんに少しでも喜びをもたらすことができたことを嬉しく思います」

イベント後にリッチモンド公爵がこうコメントを残したように、今回のイベントはコロナ禍で世界の名だたるヒストリックカー・イベントが中止を余儀なくされる中で、数少ない明るい話題であった(これも多数のスポンサーに恵まれ、潤沢なリソースをもつグッドウッドだからこそ出来ることでもあるのだが)と思う。もちろん、これはこれで素晴らしいことなのだが、来年はいつものように鈴なりの観客の中でイベントが盛大に行われるようになることを祈らずにはいられない。

REPORT/藤原よしお(Yoshio FUJIWARA)

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みんなのコメント

1件
  • オークションに出品されれば「億」を付けるような車たちが、キズどころか、ともすればクラッシュすることもいとわず、全開でつばぜり合いをする・・・・・

    海外の旧車イベントの本気度は、日本とはかけ離れた次元にあり、これこそが彼の地で育まれた自動車文化の奥深さなのだろう。

    「13年超で自動車税が・・・・・」
    確かに制度自体に問題があるとは思う。だがそんなことにとらわれ過ぎている限り、発展的な自動車文化は育たないのではないか?
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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