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RAV4は売れたのに、なぜ?ホンダ意欲作の悲しい運命|一代限りで消えたクルマVol.002:ホンダHR-V|

掲載 更新 17
RAV4は売れたのに、なぜ?ホンダ意欲作の悲しい運命|一代限りで消えたクルマVol.002:ホンダHR-V|

世の中には、フルモデルチェンジされずにその役目を終え、一代限りで消えていくクルマがある。そんななんとも悲しいクルマたちを毎回1台取り上げ、「なぜそんな憂き目にあってしまったのか?」と振り返ってみようと思う。

■コンパクトクロスオーバーSUVの先駆け

ホントは売れすはずだった? ホンダHR-Vを写真で見る 

現在、大人気のコンパクトクロスオーバーSUV。その先駆けでありながら、国内では1代ではかなく姿を消したのがホンダHR-Vだ。

コンセプトが初披露されたのは、1997年の第32回東京モーターショー。「クリエイティブ・ムーバー(生活創造車)」で初代オデッセイ、同じくCR-Vにステップワゴンと立て続けにヒットを飛ばしたホンダは、そのステージ2として「Small is Smart」を旗印とする「J・ムーバー(楽しさ創造車)」の構想を発表した。ショーには4台のコンセプトカー群が展示され、その1台がハイライダーを謳う「J-WJ」だった。

・(左上)J-VX:「操る愉しみ」を大前提としながら、ホンダが21世紀に向けて新たに提案するバリュー「エックス」ライト・スポーツ
・(右上)J-MW:ワゴンの長所とミニバンの長所を結びつけた新発想のクルマ。新しいパッセンジャーカーを目指したマルチ・ワゴン
・(左下)J-WJ:ワゴンがクロカンの脚を持つ…。そんな視点から生まれた未来はビークル。ワイルド&ジョイフルワゴン
・(右下):J-MJ:動けばクルマ、止まれば部屋になる。走りと居住性の両面性を兼ね備えた、マルチ・ジョイフルホビーカー

■常識にとらわれないホンダらしさ爆発

翌98年9月、J-WJは量産デザインをまとい「HR-V」としてデビューした。「アーバンクール」をキーワードに開発されたデザインの狙いは、とにかく新しくてカッコいいこと。クリエイティブ・ムーバーのS-MXでは「ハイトワゴンでローダウン」というニューファッションで話題を集めたが、HR-Vは「全高を低く抑えたハイライダー」という対極の新提案で、常識にとらわれない斬新な発想はいかにもホンダらしかった。

ステーションワゴンをリフトアップしたようなスリークボディは、大径タイヤと相まってまさにクール。5ナンバーサイズにまとめられたボディは、全長・全幅が今大人気のライズ/ロッキーとまったく同じだ。しかし、シャープかつクリーンなサイドビューは、先代のレンジローバー イヴォーク クーペを彷彿とさせる。

車高の高さはダテではなく、最低地上高はクロカン4WDに迫る190mmを確保。豊富な収納スペースや285Lの荷室など、室内はもちろん優れたユーティリティを備えていた。

プラットフォームは初代フィットの前身にあたるロゴがベース。エンジンはゆとりの1.6ℓOHCで、105馬力・14.1kgmの標準ユニットが主力だ。FFと4WDを設定し、4WDには125馬力・14.7kgmとハイパワーなVTEC(可変バルブタイミング・リフト機構)も搭載した。

ミッションはCVTのホンダマルチマチックSを全車に、標準ユニットには5速MTも設定。4WDシステムはしばらくホンダ4WDの代名詞になった、独自構造のデュアルポンプ式だ。ボディ&シャシーはしっかりした剛性が確保され、車高の高さを感じさせないスポーティなハンドリングも実現。走りもクールなイメージに違わない仕上がりだった。

■なぜ販売は振るわなかったのか?

が……。販売は1年目から盛り上がらず。翌99年には全長/ホイールベースが100mm長く、使い勝手に優れた5ドアが登場したものの、ターゲットである若者層の反応も“クール”なままだった。2001年、FFにVTECを追加するも、笛吹けど踊らず。3500台でスタートした国内月販計画は03年の最終モデルで300台まで縮小され、05年に生産を終えた。 

どうして売れなかったのか? 当時を振り返っても、クルマの出来そのものにネガな要因は思い当たらない。当初から5ドアがラインアップにあれば、という見方もあるが、例えば初代トヨタRAV4も3ドアでデビュー後、人気が高まったのはHR-Vと同じく1年後に5ドアロングを追加してからだ。ベースのロゴが不人気だったから、というのも無理筋だろう。

時代を先取りしすぎた――。月並みな答えだが、それに尽きるのではないか。当時、ステーションワゴン/ミニバン/SUVはRV(レクリエーショナブル・ビークル)と呼ばれたが、コンパクトクラスにはハイライダーというファッション性以前に、RVのニーズがまだあまりなかった。今振り返れば、国内でコンパクトクロスオーバーが広く受け入れられるようになるまで、少なくとも10年は早かった。

一方、HR-Vは欧州でヒットした。初代RAV4の人気に火がついたのも、日本より先だった。彼の地で世界に先駆け、現在のコンパクトクロスオーバーSUV市場が開花したのは2010年頃からだが、その土壌は90年代からあったのだ。

そして今、欧米ではヴェゼルが2代目HR-Vとして走り続ける。初代の母国における無念も、きっと晴れたことだろう。

〈文=戸田治宏〉

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みんなのコメント

17件
  • 国内では失速したモデルはイメージ払拭を狙ってすぐ名前を変えますが、一方で歴史や知名度が育たないというデメリットもあります

    HR−Vが過去のモデルの様に語られていますが、海外ではまだ存続しています
    記事にもある通りヴェゼルは海外でHR−Vを名乗っており、いまだに現役ともいえます
  • オデッセイ、インテグラ、S-MX。この頃のホンダはやたら涙目デザインが多かった印象。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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