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“独断”の攻めで3位を勝ち取った勝田貴元。表彰台争いに敗れたスニネンは落胆「準備ができていなかった」

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“独断”の攻めで3位を勝ち取った勝田貴元。表彰台争いに敗れたスニネンは落胆「準備ができていなかった」

 ヒョンデ・シェル・モビスWRTのテーム・スニネン(ヒョンデi20 Nラリー1)は、8月3~6日に行われたWRC世界ラリー選手権第9戦フィンランドでTOYOTA GAZOO Racing WRTの勝田貴元(トヨタGRヤリス・ラリー1)との3位争いに敗れ、失意のうちに母国凱旋ラリーをあとにした。

 前戦のラリー・エストニアで久々の最高峰カテゴリー復帰を果たし、今戦はラリー1カーでの出場2戦目となったスニネン。フィンランド出身の29歳は、4日間にわたって勝田と順位を争い、複数回順位を入れ替えた土曜日と接近戦が継続された日曜日の激闘を経て、最終的に総合4位で“ホームラリー”を完走した。

待望の今季初表彰台。「自信を失いかけた」勝田貴元が短期間で飛躍を実現させた理由/WRCフィンランド

 総合3番手につける勝田に対して6.4秒のビハインドで迎えたラリー最終日。スニネンとミッコ・マルックラのフィンランド人ペアは、ヒョンデi20 Nラリー1を少しでも軽くするためにスペアタイヤを積まずに全4本のステージを走行した。これはタイヤがパンクすれば即リタイアになることを意味し、彼らにとってはギャンブルだった。そんななかヒョンデのドライバーは、2本目のSS20を除く計3つのステージでライバルのタイムを上回ってみせたが、逆転には至らず。4.3秒差でトップカテゴリー復帰後初の表彰台を逃している。

「より良い結果を求めていると期待も大きくなるし、目標もどんどん変わっていくものだ」とWRC.comに語ったスニネンは午前中と午後で天候が変化した土曜日を振り返り、次のように続けた。

「3位を狙えるだけのペースがあると感じていたが、コンディションが変化したときに、それに対応するための準備ができていなかった」

「クルマに何が必要なのか分からなかった。トリッキーな路面に対してドライビングにどう適応すればいいのかも分からず、そこで簡単に数秒を失ってしまったんだ」

 一方の勝田は、自身にとって“第2のホーム”と位置づけるイベントで今シーズン最初の表彰台を獲得したが、土曜日には午前中の2本目のSS12でスピンを喫し11.6秒のマージンを失ったばかりか、総合3番手のポジションをライバルに奪われていた。

 その後は1秒単位、あるいはその10分の1単位での攻防が続き、午後の1本目で勝田がリードを奪い返す。しかし直後のSS16でスニネンが再逆転し、続くSS17を終えた時点でもヒョンデのドライバーが表彰台圏内のポジションを維持した。だが、その差はわずか0.1秒と非常に小さく事実上、横並び状態であった。デイ3の残るステージはあとひとつ。勝田はこの段階で大きなリスクを負ってでも勝負を仕掛け、最終日を迎える前にギャップを作ることを選択する。

■勝負のポイントとなったSS18。「そこでしか差がつけられないと思った」

 迎えたSS18では、雨上がりの非常に難しいコンディションのなか、勝田が今大会2度目のステージベストタイムを刻み、ライバルを6.4秒後方に追いやってみせた。

 結局、ここでの対スニネンの“貯金”がラリー最終日の逃げ切りを成功させるポイントとなったが、勝田はラリー後に開かれたオンライン取材会において、土曜日の最後のステージでプッシュするという判断が独断だったことを明かしている。

「土曜日は総合3番手に上がったり落ちたり、本当にコンマ何秒かの差で(順位やギャップが)行き来しているような状況で、このまま最終日に行った場合『どれだけリスクを負うのか』という勝負になってくると考えました」

「自分としては、なんとか土曜日の時点である程度アドバンテージを作っておきたかった、という思いがありました」

 SS18は路面がウエットとドライのミックス状態となっており、非常に難しいコンディションだった。しかし勝田はあえてこの場所でプッシュすることで、ライバルを引き離すことができると考えたという。また彼は、ワークスドライバーとしてチームにポイントを持ち帰る使命を負っていることから、ラリー最終日に大きなリスクを持ち込まないことを望んでいた。

「もう、そこでプッシュしないと翌日が非常に厳しくなる。そういった思いで(SS18で)攻めることを決めました。最終日に負うはずだった分のリスクを前日の負えるところで負って、なんとか貯金にしたいという感じでしたね」

「正直に言うと独断だったのですが、本当にそこでしか差がつけられないと思ったので。ミスもありながらも、なんとかうまくいきました」

 本人はステージ5、6番手となった金曜午前中のSS3とSS4の走りに「がっかり」していると述べるも、全選手が走行したSS2での最速タイムも含めステージウインを3回、セカンドベストが2回、3番手タイムは都合9回と週末を通して安定したスピードを発揮し見事、結果を残してみせた勝田。勝負勘も冴えた今大会での活躍を機にシーズン残り4ラウンドでの好結果に期待が膨らむ。もちろん、ラリージャパンでの2年連続ポディウムフィニッシュも不可能ではないはずだ。

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