■当時の「クルマ好き」の憧れだったMR2ってどんなクルマ?
日本で初めて市販されたミッドシップエンジン車のトヨタ「MR2」は今でもファンの多い伝説級のモデルです。
そんなMR2をベースにフェラーリ「F430」風に改造したクルマがイタリアで発売されているようです。どんなクルマに仕上がっているのでしょうか。
【画像】これがMR2? フェラーリにしか見えない正体を見る(17枚)
1970年代の日本は「スーパーカーブーム」で、リトラクタブルヘッドライトやミッドシップが採用されている、ランボルギーニやフェラーリがなどのスーパーカーが子どもたちの憧れでした。
トヨタはそこに目をつけ、スーパーカーに憧れた子ども時代を持つ大人に向けて1984年に発売したのが、「Midship Runabout 2seater(MR2)」で、日本で初めてミッドシップにエンジンをレイアウトした後輪駆動のクルマです。
ミッドシップにエンジンをレイアウトすることでノーズを低くすることが可能で、当時どの国産車にもないスタイリングを実現しています。
1984年に日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞したとあって、業界では非常に評価されましたが、搭載されているエンジンが1.6リッターもしくは1.5リッターのNAエンジンのため、ほかのスーパーカーと比べて見劣りしてしまうことから、販売は苦戦していました。
その後、改良された後期モデルには、1.6リッターのNAエンジンにスーパーチャージャーが搭載されたことで、販売台数を伸ばしていきます。
また、MRレイアウトのクルマは、車体の重心がクルマの中央に近い部分にあるため、ステアリング操作に対してレスポンス良く車体がついてくるというメリットがあります。
MR2はその特性が強く出ており、サーキットやジムカーナで腕を鳴らしたユーザーもいることでしょう。
一方で、当時は電子制御が発達していないことから、その運動性能ゆえにスピンしやすいというデメリットもありました。
その後1989年に2代目のMR2が発売されます。ボディサイズは初代より拡大され、内外装ともに手が加えられており、初代に比べると曲線的なスタイルになりました。
初代のパワー不足を鑑みて、上級グレードには225馬力を発生させる2リッターDOHCターボのモデルも登場。FR車やFF車に比べると癖が強かったのは初代同様ですが、1991年のマイナーチェンジで足回りを改善、1993年にはターボ車で245馬力に出力が引き上げられるなど、MRスポーツとして磨きをかけていきました。
■作り手の情熱が伝わってくるかのようなMR2フェラーリ
MR2は、スタイリングから、フェラーリを意識して作られているとも言われており、パーツもフェラーリによく似たものが見られます。
リトラクタブルヘッドライトがついているという共通点もあることから、フェラーリ「F355」に似せたパーツが多いなかで、イタリアの「Link Motors Roma」で発売されているMR2は、F355より後に出たモデルである「F430」を模したものがあるということで注目を集めています。
この中古車販売店によると、この「F430風MR2」は、排気量2リッターで最高出力204馬力とのことです。したがって、ベース車となったのは最終型のNAモデルと考えられます。
一方で、トランスミッションは6速MTとなっており、MR2に設定されていたのが5速MTであることを考えると、トランスミッションは換装されているようです。
F430のMTモデルが6速MTだったことから、そこまでオマージュしているとすれば、非常に手の込んだレプリカモデルといますが、さすがに内装のパネルまで近づけるのは難しかったのか、基本的にはMR2と同様です。
エクステリアは、一見するとフェラーリといっても良いくらいに完成度が高いといえるでしょう。
F430は「スモールフェラーリ」といわれる小さいモデルですが、 F430が全長4515mm×全幅1923mm×全高1215mmに対して、MR2は全長4170mm×全幅1695mm×全高1235mmと、MR2の方が長さも幅もさらに小さくなっていますが、完成度からすれば些事の内でしょう。
全体を眺めると、F430の美しくも迫力のあるデザインとほぼ同じ外見をしており、ともすればフェラーリ好きですら勘違いしてしまう可能性もあります。
フェラーリをオマージュしたMR2が多いなかで、作り手の情熱がこもった、ある意味「完成系」といってもいい仕上がりです。
※ ※ ※
ほかの車種や最新型モデルのヘッドライトやフロントバンパーを移植する「フェイススワップ」という文化がありますが、このMR2は、いわば「フルスワップ」といえるでしょう。
フェラーリの愛はもちろん、リアに残されたMR2のエンブレムがMR2愛をも感じさせる一台です。
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