大きな責任を担うF1チーム首脳陣は、さまざまな問題に対処しながら毎レースウイークエンドを過ごしている。チームボスひとりひとりのコメントや行動から、直面している問題や彼のキャラクターを知ることができる。今回は、イタリアで優勝後、アゼルバイジャンとシンガポールで最大の結果をつかむことができなかったフェラーリと、チーム代表フレデリック・バスールが過ごした2週間に焦点を当てた。
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【F1チーム代表の現場事情:アルピーヌ】F1の夢をかなえた36歳の新ボス、オリバー・オークスのデビュー戦
このコラムを書くときに、「チーム代表になりたいと思う人間がいるのは不思議だ」という文章で始めたいと思うことがしばしばある。もちろん素晴らしい仕事だが、それに伴う責任とプレッシャーはとてつもなく大きい。しかも、自分で設計したり製造したわけではないマシンのパフォーマンスや、直接指示することがめったにないドライバーたちの行動によって、状況が大きく左右されるのだ。
つまり、自分自身に何の過失もなくても、ひどい週末になることがあり得るわけで、それこそ、この2週間でフレデリック・バスールに起きたことだった。
アゼルバイジャンに到着した時、フェラーリはまだイタリアでのホームレースで優勝した高揚感のなかにいた。シャルル・ルクレールの勝利はチームにとって重要な瞬間だった。そして、土曜日のバクーでルクレールが再びポールポジションを獲得した時、フェラーリは完全に勢いに乗っているように見えた。
フェラーリにとっては、アゼルバイジャンではスポンサーイベントも、ゲストや集まるメディアの数も比較的少なく、バスールは平穏な週末を過ごしていた。日曜朝には数人のジャーナリストを朝食に招いて、リラックスしてさまざまな話題についてオフレコの会話をする余裕もあった。
バスールは、現在のチームとF1の状況についてオープンに語り、明らかに機嫌が良さそうだった。その後の決勝でフェラーリがポールポジションからスタートすることが決まっていたのだから、当然のことだ。
ところが勝利はフェラーリの手からすり抜けていった。先頭からスタートしたルクレールは2位に甘んじなければならず、カルロス・サインツはチェッカーを間近にしてセルジオ・ペレスと大クラッシュし、ノーポイントに終わった。
それでもパフォーマンスは優れており、ルクレールは大量にポイントを稼いだため、アゼルバイジャンは良い週末だったと考えられる。フェラーリは前向きなムードでシンガポールに到着した。
一方、アゼルバイジャンではライバル、マクラーレンが使用したリヤウイングについての疑惑が持ち上がった。オスカー・ピアストリが何周にもわたってルクレールからポジションを防御しなければならなかったため、後方カメラの映像が頻繁に使用され、その結果、マクラーレンのリヤウイングのたわみが確認できた。DRSスロットの部分に隙間があいたように見え、それがストレートラインスピードの向上をもたらしているのではないかと、ライバルたちは考えた。
FIAとマクラーレンが協議した結果、マクラーレンはこのデザインにマイナーチェンジを施すことになった。しかしバスールは、マクラーレンがルールの意図に反するかもしれないシステムを使用してマシンを走らせていたことについて不満を示した。
モンツァではマクラーレンがフロントロウを独占し、バクーではピアストリがルクレールを打ち負かした。どちらの戦いも接戦だったため、そのウイングが結果に影響を与えた可能性があったためだった。
アゼルバイジャンではマクラーレンに苛立ちを募らせたバスールだが、シンガポールではチーム内にトラブルを抱えることになった。予選Q3の序盤、サインツが激しいクラッシュを喫し、ルクレールは唯一のアタックラップをトラックリミット違反により抹消されたのだ。フェラーリの競争力は非常に高いとみられていたにもかかわらず、結果的にレースを9番手と10番手からスタートしなければならなくなった。
レースでふたりとも力強い挽回を見せ、ルクレールは5位でフィニッシュ、あと数周あれば、ジョージ・ラッセルを抜いて4位を獲得できただろう。サインツはオープニングラップはうまくいかなかったにもかかわらず、7位でポイントを獲得した。
オーバーテイクが非常に難しいコースで、フェラーリが良いレースを展開したことを、バスールはポジティブに受け止めていた。適切なタイミングで適切な戦略的判断を下し、良いペースを発揮して、ポジションを上げていったのだ。一方でバスールは、複雑な心境も示した。予選をうまくやっていれば、もっと良い結果を手に入れることが可能だったからだ。
フェラーリは過去3戦、非常に良いパフォーマンスを見せた。アゼルバイジャンとシンガポールの2連戦では理想的な結果を上げることはできなかったが、シーズン中盤の厳しい時期を経て、チームが正しい軌道に戻りつつあることは、バスールにとって、多少の励ましになるだろう。
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