自動車業界激動の10年
自動車業界において、10年というのはとくに長い年月ではない。これくらいがモデルチェンジのサイクルだというクルマもある。トレンドが切り替わったり、セグメントをリードするモデルが入れ替わったりもするだろう。
10年間のうちには、さまざまな出来事が起きるものだ。しかし自動車業界における直近10年は、地質時代が切り替わるくらいの混乱と変動をみた。テスラ・モデルSが登場したのは2012年で、その3年後に採択されたパリ協定は、あのドナルド・トランプの率いたアメリカが離脱し一時は先行きが危ぶまれたが、大統領交代とともに事態は収束し、内燃機関に引導を渡そうとしている。
10年前には、エンジニアたちを排ガス不正に駆り立てたユーロ6規制も存在しなかった。ススやNOxを撒き散らすディーゼルが、欧州では人気を得ていたころだ。
テスラ・ロードスターは例外として、本格量産EVは、世界的にみても3車種しかなかった。日産リーフと三菱i−MiEV、そしてルノー・フルーエンスZEだ。欧州市場全体では、それらすべてを合わせても8000台ほどしか売れていなかった。2011年に破綻したサーブでさえ、それ以上の販売台数があったという数字だ。
そのころに比べれば、タンカーの稼働率は低くなった。ディーゼルゲートやブレグジット、世界的不況が発生し、英国は2030年までに内燃機関を廃止すると宣言した。そして、世界的なパンデミックが発生し、ふたたびの不況や半導体不足に見舞われている。次から次へと新たな危機に襲われている状況だ。
高級ブランドの最上級EV
しかし、これほど不確定なきっかけはそうそうやってこない。2012年当時、10年後にこれほど多くの自動車メーカーが完全電動化への移行を宣言することになると予想できたひとがどれほどいただろうか。また、欧州の高級車市場で中心的な存在の2社が電動化を進め、ゼロエミッションのフラッグシップを神輿に担ぎ上げることになろうとは、想像すらできなかったのではないだろうか。
大きな変化は、自動車市場の頂点にもたらされた。20世紀を勝ち抜いた高級車メーカーの雄たちが送り出した、高級車のサステイナブルな未来が、いまわれわれの面前にある。完全電動車のメルセデス・ベンツEQSとBMW iXだ。
ここで読者諸兄に質問。巨大なポテトと、怒り顔の半水棲齧歯類(凶暴そうなカピバラといったところか)、どちらがお好みだろうか。そう尋ねたなら、どちらもお断り、という答えが返ってきそうだが。そんな冗談はさておき、われわれはこの2台のEVのうち、どちらを選ぶべきか、これからじっくり検証していく。洗練性も扱いやすさも最上級で、もっとも納得できるEVを手に入れ、モダンでサステイナブルな、魅力あふれる自動車生活を満喫しようとしている幸運な人間になったつもりで話を進めるので、そのつもりでお読みいただきたい。
もしも、まだその世界に足を踏み入れていないなら、決断すべきは今なのか。2台のEVで冬の二日間ほどを過ごして、現実的な使い方をした場合のドライビングや充電、積載性や快適性を、市街地や混み合ったA級道路、カントリーロードなどあちこちで試し、その答えを端緒なりとも見つけたい。
航続距離の長い最先端モデル
まずはシンプルな、しかし重要な観察からはじめよう。この2台は、それぞれのやり方はあるにせよ、明らかにそうだとわかる進歩を遂げたEVなのだろうか。もし、今すぐEVに多額の投資をすることにシリアスなのだとしても、価格だけで見切るのは賢明な判断ではない。その長所や優先事項、好みやクセ、そして欠点も含めて、それらがどんなものであろうと、それでもやはりこの2台は、期待どおり最先端のEVには違いない。混迷を経験したドイツ自動車界の名門は、より強さを増してよみがえった。
どちらも、これまでのEVにはなかったものを持っている。iX xドライブ50は、ラグジュアリーなハイパフォーマンスSUVでありながら、アウディE−トロンSを置き去りにできる航続距離を誇る。しかも、ハンドリングはジャガーIペイスに肩を並べ、洗練性やキャビンの魅力的なしつらえはテスラ・モデルXなど寄せ付けない。万能で、包み込まれるようで、思いがけないほど個性あふれるクルマであり、止まっていても走っていても感じられる完璧さは、競合他車に対して革命的ともいえる大きな差をつけている。
EQS450S+はといえば、より型破りで、航続距離はさらに長く、別世界を見せてくれる。間違いなく、いっそう華やかなクルマだ。宇宙カプセルのようなルックスのサルーンで、インテリアはまるで未来像を提案したコンセプトカーからそのまま持ってきたよう。それも、比較的最近のショーで展示されていたものから。それこそ時代を遡れば、このままショーモデルとして出展できそうだ。
近未来を具現化したEQSのキャビン
EQSのインテリアは、明るく輝くパネルや光の演出、これまでみたことのないようなデジタル技術などに圧倒される。クラシックな高級サルーンらしさもある。乗ってしまえば、Sクラスと根本的な違いはなく、居住スペースも似たようなものだ。
しかし外観は、ウェッジシェイプがキツく、エアロダイナミクスを追求した、まったく異なるものだ。運転環境や二次的な操作系は、多くをSクラスと共用している。しかし、車載テクノロジーに関しては、ダッシュボードいっぱいに広がった、印象的なタッチ式ディスプレイのハイパースクリーンを含めて、持てる限りの技術が投入されている。
しかし、それは目に見える部分だけではない。『マイノリティ・リポート』のトム・クルーズは、ダッシュボード全面を占めるディスプレイやメニューコンソールをドラッグ操作して、ほしい情報を選んでサイズを思ったとおりに調整し、場所も形式も望んだとおりに表示してみせた。もしも生粋のハイテク好きで、トムのような操作をしたいと思っているなら、ようやくそれに近いものが現実になりつつある。
実際のところ、7995ポンド(約124万円)のオプションとなるハイパースクリーンに備わるのは、助手席側のタッチ式12インチディスプレイと、メルセデスのMBUXインフォテインメントシステムの最上位機種に用いられる18インチのセンターディスプレイ、そして大型表示のARヘッドアップディスプレイ。さらに、指紋スキャナーも含まれ、登録したドライバーを乗車時や設定呼び出し時に認識する。
デジタル計器盤の標準装備を踏まえて、メルセデスは小型スクリーンをいくつか用意し、まるで調整可能な超大型ディスプレイのように見せている。すべてが一枚の連続した画面のようだが、それはトリックだ。どれをとっても、機能もルックスもいいし、狙い通りの効果ももたらしている。テスラのように、車載ディスプレイでゲームをすることも可能だ。
もっとも、助手席用ディスプレイや巨大なヘッドアップディスプレイは、それがいかに鮮明で、ユーザーに歓迎されるとしても、同様のアイテムを装備したクルマは以前にもあった。その意味では、革新的と言えるものはない。
馴染みやすいiXのインテリア
iXのほうはというと、BMWのオペレーションシステム8.0を採用するが、ハイパースクリーンほどの武器になるとは言えない。そのキャビンは、1990年代のグラフィックノベルのようなところはEQSよりずっと薄く、はるかに落ち着けるものだ。
驚くほど未来的なEQSに対し、iXは内外ともに、温かみや風変わりさは上だが、フォーマルさは抑え気味。好ましいクルマだ。ただし、ラジエーターグリル代わりに据え付けられたインテリジェンスパネルの見た目が気に入らなければ、すぐに好きにはなれないかもしれない。
概してiXは、EQSより違和感がなく、どこもかしこも馴染みやすい。間違いなくBMW iのクルマで、それはフットウェルに露出したカーボンケージシャシーの一部に強く感じられる。2スポークのステアリングホイールや、フローティングタイプの操作用ディスプレイ、独特な造形のCピラーなどもそうだ。拡大されたi3のように見えないこともない。
インテリアは、好ましい空間だ。非常に広いだけではなく、包まれ感があり、考えられていて、デザインはすっきりしていて、高級感も満点。そして、やや控えめ。慣れ親しんだドイツの高級車らしさがあり、それをアップデートして、合理化を図った感じだ。とはいうものの、風変わりなファンタジーを思わせるEQSのキャビンのほうが好きだと思う気持ちには、抗いがたいものがある。
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