現在位置: carview! > ニュース > ニューモデル > 最新高級EV対決 前編 電動化時代の旗艦モデル ドイツの双璧 キャビンは未来派と合理派に二極化

ここから本文です

最新高級EV対決 前編 電動化時代の旗艦モデル ドイツの双璧 キャビンは未来派と合理派に二極化

掲載 更新 3
最新高級EV対決 前編 電動化時代の旗艦モデル ドイツの双璧 キャビンは未来派と合理派に二極化

自動車業界激動の10年

自動車業界において、10年というのはとくに長い年月ではない。これくらいがモデルチェンジのサイクルだというクルマもある。トレンドが切り替わったり、セグメントをリードするモデルが入れ替わったりもするだろう。

【画像】BMWとメルセデスの最上級EV 全27枚

10年間のうちには、さまざまな出来事が起きるものだ。しかし自動車業界における直近10年は、地質時代が切り替わるくらいの混乱と変動をみた。テスラ・モデルSが登場したのは2012年で、その3年後に採択されたパリ協定は、あのドナルド・トランプの率いたアメリカが離脱し一時は先行きが危ぶまれたが、大統領交代とともに事態は収束し、内燃機関に引導を渡そうとしている。

10年前には、エンジニアたちを排ガス不正に駆り立てたユーロ6規制も存在しなかった。ススやNOxを撒き散らすディーゼルが、欧州では人気を得ていたころだ。

テスラ・ロードスターは例外として、本格量産EVは、世界的にみても3車種しかなかった。日産リーフと三菱i−MiEV、そしてルノー・フルーエンスZEだ。欧州市場全体では、それらすべてを合わせても8000台ほどしか売れていなかった。2011年に破綻したサーブでさえ、それ以上の販売台数があったという数字だ。

そのころに比べれば、タンカーの稼働率は低くなった。ディーゼルゲートやブレグジット、世界的不況が発生し、英国は2030年までに内燃機関を廃止すると宣言した。そして、世界的なパンデミックが発生し、ふたたびの不況や半導体不足に見舞われている。次から次へと新たな危機に襲われている状況だ。

高級ブランドの最上級EV

しかし、これほど不確定なきっかけはそうそうやってこない。2012年当時、10年後にこれほど多くの自動車メーカーが完全電動化への移行を宣言することになると予想できたひとがどれほどいただろうか。また、欧州の高級車市場で中心的な存在の2社が電動化を進め、ゼロエミッションのフラッグシップを神輿に担ぎ上げることになろうとは、想像すらできなかったのではないだろうか。

大きな変化は、自動車市場の頂点にもたらされた。20世紀を勝ち抜いた高級車メーカーの雄たちが送り出した、高級車のサステイナブルな未来が、いまわれわれの面前にある。完全電動車のメルセデス・ベンツEQSとBMW iXだ。

ここで読者諸兄に質問。巨大なポテトと、怒り顔の半水棲齧歯類(凶暴そうなカピバラといったところか)、どちらがお好みだろうか。そう尋ねたなら、どちらもお断り、という答えが返ってきそうだが。そんな冗談はさておき、われわれはこの2台のEVのうち、どちらを選ぶべきか、これからじっくり検証していく。洗練性も扱いやすさも最上級で、もっとも納得できるEVを手に入れ、モダンでサステイナブルな、魅力あふれる自動車生活を満喫しようとしている幸運な人間になったつもりで話を進めるので、そのつもりでお読みいただきたい。

もしも、まだその世界に足を踏み入れていないなら、決断すべきは今なのか。2台のEVで冬の二日間ほどを過ごして、現実的な使い方をした場合のドライビングや充電、積載性や快適性を、市街地や混み合ったA級道路、カントリーロードなどあちこちで試し、その答えを端緒なりとも見つけたい。

航続距離の長い最先端モデル

まずはシンプルな、しかし重要な観察からはじめよう。この2台は、それぞれのやり方はあるにせよ、明らかにそうだとわかる進歩を遂げたEVなのだろうか。もし、今すぐEVに多額の投資をすることにシリアスなのだとしても、価格だけで見切るのは賢明な判断ではない。その長所や優先事項、好みやクセ、そして欠点も含めて、それらがどんなものであろうと、それでもやはりこの2台は、期待どおり最先端のEVには違いない。混迷を経験したドイツ自動車界の名門は、より強さを増してよみがえった。

どちらも、これまでのEVにはなかったものを持っている。iX xドライブ50は、ラグジュアリーなハイパフォーマンスSUVでありながら、アウディE−トロンSを置き去りにできる航続距離を誇る。しかも、ハンドリングはジャガーIペイスに肩を並べ、洗練性やキャビンの魅力的なしつらえはテスラ・モデルXなど寄せ付けない。万能で、包み込まれるようで、思いがけないほど個性あふれるクルマであり、止まっていても走っていても感じられる完璧さは、競合他車に対して革命的ともいえる大きな差をつけている。

EQS450S+はといえば、より型破りで、航続距離はさらに長く、別世界を見せてくれる。間違いなく、いっそう華やかなクルマだ。宇宙カプセルのようなルックスのサルーンで、インテリアはまるで未来像を提案したコンセプトカーからそのまま持ってきたよう。それも、比較的最近のショーで展示されていたものから。それこそ時代を遡れば、このままショーモデルとして出展できそうだ。

近未来を具現化したEQSのキャビン

EQSのインテリアは、明るく輝くパネルや光の演出、これまでみたことのないようなデジタル技術などに圧倒される。クラシックな高級サルーンらしさもある。乗ってしまえば、Sクラスと根本的な違いはなく、居住スペースも似たようなものだ。

しかし外観は、ウェッジシェイプがキツく、エアロダイナミクスを追求した、まったく異なるものだ。運転環境や二次的な操作系は、多くをSクラスと共用している。しかし、車載テクノロジーに関しては、ダッシュボードいっぱいに広がった、印象的なタッチ式ディスプレイのハイパースクリーンを含めて、持てる限りの技術が投入されている。

しかし、それは目に見える部分だけではない。『マイノリティ・リポート』のトム・クルーズは、ダッシュボード全面を占めるディスプレイやメニューコンソールをドラッグ操作して、ほしい情報を選んでサイズを思ったとおりに調整し、場所も形式も望んだとおりに表示してみせた。もしも生粋のハイテク好きで、トムのような操作をしたいと思っているなら、ようやくそれに近いものが現実になりつつある。

実際のところ、7995ポンド(約124万円)のオプションとなるハイパースクリーンに備わるのは、助手席側のタッチ式12インチディスプレイと、メルセデスのMBUXインフォテインメントシステムの最上位機種に用いられる18インチのセンターディスプレイ、そして大型表示のARヘッドアップディスプレイ。さらに、指紋スキャナーも含まれ、登録したドライバーを乗車時や設定呼び出し時に認識する。

デジタル計器盤の標準装備を踏まえて、メルセデスは小型スクリーンをいくつか用意し、まるで調整可能な超大型ディスプレイのように見せている。すべてが一枚の連続した画面のようだが、それはトリックだ。どれをとっても、機能もルックスもいいし、狙い通りの効果ももたらしている。テスラのように、車載ディスプレイでゲームをすることも可能だ。

もっとも、助手席用ディスプレイや巨大なヘッドアップディスプレイは、それがいかに鮮明で、ユーザーに歓迎されるとしても、同様のアイテムを装備したクルマは以前にもあった。その意味では、革新的と言えるものはない。

馴染みやすいiXのインテリア

iXのほうはというと、BMWのオペレーションシステム8.0を採用するが、ハイパースクリーンほどの武器になるとは言えない。そのキャビンは、1990年代のグラフィックノベルのようなところはEQSよりずっと薄く、はるかに落ち着けるものだ。

驚くほど未来的なEQSに対し、iXは内外ともに、温かみや風変わりさは上だが、フォーマルさは抑え気味。好ましいクルマだ。ただし、ラジエーターグリル代わりに据え付けられたインテリジェンスパネルの見た目が気に入らなければ、すぐに好きにはなれないかもしれない。

概してiXは、EQSより違和感がなく、どこもかしこも馴染みやすい。間違いなくBMW iのクルマで、それはフットウェルに露出したカーボンケージシャシーの一部に強く感じられる。2スポークのステアリングホイールや、フローティングタイプの操作用ディスプレイ、独特な造形のCピラーなどもそうだ。拡大されたi3のように見えないこともない。

インテリアは、好ましい空間だ。非常に広いだけではなく、包まれ感があり、考えられていて、デザインはすっきりしていて、高級感も満点。そして、やや控えめ。慣れ親しんだドイツの高級車らしさがあり、それをアップデートして、合理化を図った感じだ。とはいうものの、風変わりなファンタジーを思わせるEQSのキャビンのほうが好きだと思う気持ちには、抗いがたいものがある。

こんな記事も読まれています

車検の更新、「2か月前」からに拡大 2025年4月から変更 国土交通省
車検の更新、「2か月前」からに拡大 2025年4月から変更 国土交通省
グーネット
[音響機材・チョイスの勘どころ]「単体サブウーファー」の細かなスペックの見極め方を解説!
[音響機材・チョイスの勘どころ]「単体サブウーファー」の細かなスペックの見極め方を解説!
レスポンス
【MotoGP】マルク・マルケス「今のMotoGPは長期キャリアが難しい」なお当人は来年13年目に突入
【MotoGP】マルク・マルケス「今のMotoGPは長期キャリアが難しい」なお当人は来年13年目に突入
motorsport.com 日本版
天候不良の中、ドライバーたちは何を訴えていた? スーパーフォーミュラ第3戦SUGO、レース当日の無線交信を振り返る
天候不良の中、ドライバーたちは何を訴えていた? スーパーフォーミュラ第3戦SUGO、レース当日の無線交信を振り返る
motorsport.com 日本版
ホンダの「V型10気筒エンジン」搭載スーパーカー!「“NSX”後継車」指名された本気の「超ロングノーズ」モデルに反響あり!
ホンダの「V型10気筒エンジン」搭載スーパーカー!「“NSX”後継車」指名された本気の「超ロングノーズ」モデルに反響あり!
くるまのニュース
アルピーヌA290をル・マンで発表 アルピーヌのEVモデル国内導入を検討中
アルピーヌA290をル・マンで発表 アルピーヌのEVモデル国内導入を検討中
Auto Prove
パワーは333馬力に、VW『ゴルフR』 改良新型…実車は6月26日発表予定
パワーは333馬力に、VW『ゴルフR』 改良新型…実車は6月26日発表予定
レスポンス
軽じゃないダイハツ「コペン」で国内ラリーに参戦! 770ccに排気量アップして、WRCラリージャパン・クラス3連覇を狙います
軽じゃないダイハツ「コペン」で国内ラリーに参戦! 770ccに排気量アップして、WRCラリージャパン・クラス3連覇を狙います
Auto Messe Web
スカニアジャパンの新大型トラック「スーパー」はスポーツカーも採用するメカを起用
スカニアジャパンの新大型トラック「スーパー」はスポーツカーも採用するメカを起用
driver@web
日産 スカイラインHT 2000GT-R(昭和48/1973年1月発売・KPGC110型)【昭和の名車・完全版ダイジェスト072】
日産 スカイラインHT 2000GT-R(昭和48/1973年1月発売・KPGC110型)【昭和の名車・完全版ダイジェスト072】
Webモーターマガジン
名車復活!? 新型「“全長4m級”スポーツカー」日本導入か! 斬新な“X”ライト&旧車デザイン! ブースト機能つき「A290」がカッコいい!
名車復活!? 新型「“全長4m級”スポーツカー」日本導入か! 斬新な“X”ライト&旧車デザイン! ブースト機能つき「A290」がカッコいい!
くるまのニュース
メルセデスAMG『CLE 53 4MATIC+クーペ』新型を発売…価格は1290万円
メルセデスAMG『CLE 53 4MATIC+クーペ』新型を発売…価格は1290万円
レスポンス
使わなきゃ損しかないクルマの「ACC」機能! ただし危険な「けっこう見かける」間違った使い方に要注意
使わなきゃ損しかないクルマの「ACC」機能! ただし危険な「けっこう見かける」間違った使い方に要注意
WEB CARTOP
トヨタ得意の高速グラベルで挽回なるか。7年ぶりのラリー・ポーランドは「ドライバーに合っている」とラトバラ
トヨタ得意の高速グラベルで挽回なるか。7年ぶりのラリー・ポーランドは「ドライバーに合っている」とラトバラ
AUTOSPORT web
ヒョンデの高級車ブランド、「ジェネシス」のスポーツセダン『G70」がニュルタクシーに…7月から開始
ヒョンデの高級車ブランド、「ジェネシス」のスポーツセダン『G70」がニュルタクシーに…7月から開始
レスポンス
クルマを買わないと……なプレッシャーなし! 「見るだけOK」グッズも買えて飲食までできる「クルマ好きのシャングリラ」的ショールーム5選
クルマを買わないと……なプレッシャーなし! 「見るだけOK」グッズも買えて飲食までできる「クルマ好きのシャングリラ」的ショールーム5選
WEB CARTOP
スペインで大失速RB&角田裕毅、レッドブルお膝元のオーストリアGPへ。「今週末は挽回できることを期待」
スペインで大失速RB&角田裕毅、レッドブルお膝元のオーストリアGPへ。「今週末は挽回できることを期待」
motorsport.com 日本版
CLEにハイパフォーマンスとカブリオレ、2つのモデルが登場|Mercedes Benz
CLEにハイパフォーマンスとカブリオレ、2つのモデルが登場|Mercedes Benz
OPENERS

みんなのコメント

3件
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

BMW iX

3.8 6件

新車価格(税込)

1075.01740.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

588.01337.9万円

中古車を検索
iXの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

1075.01740.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

588.01337.9万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村