新型リーフを体験する試乗会があり、参加してきた。航続距離400kmやワンペダルでのドライビングプレジャー、プロパイロットやプロパイロット・パーキングなど先進の技術を搭載しつつ、ガソリン車の代替にも成り得るという新型の実力はどうだったのだろうか。<レポート:高橋明/Akira Takahashi>
2010年に初代リーフが発売されてから7年後の2017年9月6日に、世界一斉同時に新型リーフが発表された。2代目に課せられた役目は、EVのコモディティー化ではないだろうか。改良されたポイントの説明を聞くたびに、そう思うし、新たな魅力も追加して商品の魅力訴求をしていると感じる。
新型リーフの詳細はすでに記事掲載しているので、ここではポイントを絞ってお伝えしたい。
*詳細記事:日産 航続距離400kmを達成した第2世代の電気自動車「リーフ」が登場
100%電気で走るEV車のリーフが、一般的に使えるクルマである、ということを実現していくには、さまざまな障害、壁があるが、日産は少しずつ乗り越えているように思う。
■充電インフラとバッテリー
一般的にEV車を乗ろうとしたときに気になるのは、航続距離と充電インフラだろう。その点に関し、インフラとしては初代リーフが発売されたときの急速充電器は360基程度だったが、2017年には7100基に増えている。200Vの普通充電器を合わせれば2万8260基にもなる。じつは高速道路において、ガソリンスタンドより数は多いのだ。
ガソリンスタンドのあるSA/PAは全体の25%で、急速充電器は40%になる。平均すると40kmごとに急速充電器があることになる。もちろん、充電器の数や充電時間など、まだまだ壁はあるものの、実用領域にきていることを実感できる。
また、200Vで6kWの充電器というのも日産では用意しており、最もローコストな200Vの普通充電でも8時間で満充電できる。余談になるが、欧州ではすでに350kWの瞬間充電器というのも存在し、実用化へ向けて加速している。
一方、バッテリーに関しても従来のバッテリーケースサイズのまま、容量アップしている。先代のリーフは30kWだったが新型は40kWまでアップし、初代リーフの航続距離200kmの倍となる、400kmの航続距離を謳っている。
バッテリーは日産とNECの合弁会社AESC社製で、新しい電極と電解液の工夫をすることで、同じ体積としながら大容量、大出力化を実現したという。
今回の試乗では航続距離のテストはできていないので、何とも言えないが、回生効率の良さを考えると、近距離での日常的な利用であれば、充電頻度はかなり少ないのでは?という印象だ。聞いた話では、往復30km程度の通勤利用だと1週間充電しなくても問題ないという話もあった。
こうして考えてみると、日常利用では週一ガソリンスタンドに行くイメージに近く、長距離ドライブであれば高速利用によって航続距離をどんどん伸ばせる環境がかなりのレベルで整備されていることが分かる。もちろん、ナビには近隣の充電ポイントが表示されるので、知らぬ土地でも充電ステーションは確保できるわけだ。
■新型リーフの魅力
こうしたインフラや充電の不満をすこしずつ解決している一方、車両本体にも魅力的な装備を加わえている。そのひとつはe-Pedalだ。ノートe-powerのときに登場したワンペダル操作で、アクセルペダルだけでドライブできるというもの、それが2代目のリーフにも装備されたのだ。
運転方法は簡単で、アクセルを離せばブレーキがかかったように減速する。その時の減速Gは0.2Gだという。ガソリン車のエンジンブレーキは概ね0.05G程度なので、通常のフットブレーキをかけているのと同等のイメージでOKだ。そして、ブレーキペダルを踏まずとも車両は最後まで停止する。そして停止中もブレーキがかかっているので、ブレーキペダルを踏む必要がない。それは下り、登り坂でも同様なので、アクセルペダルだけの操作でいいのだ。ちなみに、ストップランプも点灯している。
今回はカートコースを利用し、e-Pedal走行を体験した。カートコースなので、コーナーはタイトだし、ストレートでは100km/hを超える速度まで出せる。それでも本当にアクセルペダルのon、offだけで走行できるのか。これは新しい体験で楽しい。
それと、プロパイロット・パーキングも先進性を感じる装備だ。これまでの自動パーキングアシスト=インテリジェント・パーキングアシストはステアリング操作のみ自動で行なうものだったが、プロパイロット・パーキングは、ステア操作はもちろん、アクセル、ブレーキ、切り替えしの際のシフトチェンジ、そして駐車後のPレンジへのシフト、パーキングブレーキを引くところまで完全に自動で行なう。縦列駐車や車庫入れなどの駐車方式にも対応しているので、これは便利だ。この部分は、スイッチひとつで自動運転が成立している。
■一般道試乗インプレッション
さて、これらの最新機能と性能を持った新型リーフだが、走り出すと改めて静粛性の高さを実感する。当たり前なのだが、モーターは静かで、タイヤのロードノイズ、風切り音くらいしか音らしい音はない。が、その風切り音も一般的なガソリン車よりも少ないと思う。
また、タイヤに関してはエコタイヤを装着しているので、残念ながらロードノイズが気になる。ここはぜひ、コンフォート系のタイヤを装着してほしいと思う。もちろん、車両側で穴、隙間をふさぐことや吸静音材を使うなどは行なっているというが、単純にタイヤを交換すれば解決できるレベルのノイズなので残念だ。
一般道とはいえ、多少のワインディングも走行した。こうした場面ではe-Pedal=ワンペダルが楽しい。アクセルを離したときにエネルギー回生をするので、可能航続距離が減らない、あるいは増えるといった現象を目の当たりにする。ちょっとしたゲーム感覚で楽しいが、それよりハンドリングが低重心で、ロールも少なく、ヨーがしっかりあるドライバビリティというのが気に入った。
ここでも「エコタイヤがもったいない」と思ってしまう。それほど速度は高くないのに「キッ~~~」というスキール音を発する。恥ずかしくもあるがコンフォートタイヤであれば・・・と思ってしまう。
そして大きく進化したのが中間加速だ。バッテリー容量が30kWから40kWに増加したことや、新型インバーターの採用などで、先代と比較してパワーは80kW(108ps)から110kW(150ps)になり、出力トルクは254Nmから320Nmまで増えている。その結果0-100km/h加速では15%短縮でき、60-100km/h加速では30%短縮できたというデータがある。
体感的にも十分力強い中間加速で、モーター特有の走り出しからの強烈な加速力を、中間加速でも味わうことができる。ガソリン車で言えば大排気量のエンジンに乗っているのと同等のフィーリングを得られるのだ。
ひとつ気になるのが、回生ブレーキと油圧ブレーキの協調部分で、リーフはエンジンを持たないため負圧をモーターで作りだしている。油圧ブレーキはペダルストロークを検知し、モーターで負圧を作り油圧ブレーキを作動させている。だが、e-Pedalの回生ブレーキで減速し、減速が足りないので、フットブレーキを踏むといった場面では、大きな減速力は得られるのだが、停止寸前に思った地点に止まらない誤差が気になった。もちろん数十センチというレベルでの話だ。
つまり、印象的には停止寸前に回生ブレーキが解除され、フットブレーキ(油圧)だけに切り替わり、回生ブレーキ分の減速力がなくなるので、油圧ブレーキを踏み増ししないといけないという印象なのだ。だが、エンジニアに確認すると、実際は回生ブレーキは途切れていないという。ここは、協調制御の穴なのかもしれない。
さて、ピュアEVとしてグローバル展開しているリーフだが、もうひとつの魅力に、日産がいうインテリジェント・インテグレーションがある。これはリーフ to Home。リーフからの給電だ。キャンペーンなどで太陽光パネルの設置などもあるので、こうした次世代のエネルギーコントロールは自身で可能になるということも魅力だ。
電源すら自作することも可能で、リーフが満充電であれば一般的な家庭の場合、2~3日は家の電気を賄うことも可能という。ただし、現在の太陽光発電のレベルでどこまでリーフを充電できるかは不明だが、いずれにせよ節電に寄与することは間違いない。そして、こうした取り組みに挑戦しつつ楽しめるのも魅力を感じる。
リーフはもともとリージョナルなピュアEVというより、ガソリン車の代替として利用していこうという大きな目標を持っている。そのため2代目リーフにはコモディティー化が課題だと冒頭書いたが、こうしてリーフの持つ特徴や魅力を考えると、すでに実用領域にあることも実感する。ただ、何も考えずにガソリン車の代替車というには、まだ壁がありそうだが、特徴を理解していけば十分利用できるし、ガソリン車では絶対にできないエネルギーマネージメントということも楽しめる、まさに次世代のクルマのではないだろうか。
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