高年式のトヨタのクルマに乗る。そんなクルマ選びをしてみたい、と心からそう思うのです。しかし、こう言うと周囲の人はとても悲しそうな顔をします。本当だから仕方がありません。
例えばハリアー。使い勝手がいいし、誰を乗せても困りません。装備も充実。どこへ行くにもストレスがない。このクルマを、仕事やプライベートで乗るとああいうクルマの利点もとても魅力的に感じるものです。しかしながら、いかんせん高い。みんながいいと思うから値が下がらないのです。しかもトヨタ車の場合、「クルマ離れ」と業界が言って、ユーザーとの間で「妙な忖度(ソンタク)」をしあっている日本国内だけではなく、経済的な勢いもあって、本当にクルマを必要としている外国のユーザーもライバルであります。都合よく、日本人が自国の中古車だからと言って安く手に入れることができることなどもはや叶わない「再びの高嶺の花」なのですから。
と、こんな話をすると、周りの人たちは半ばいらだちを隠しきれなくなる始末。まったくこちらとしては心外であります。何を私に期待しているというのでしょうか。答えは別にあったようです。こちらこそなんだかなあと思うものです。
それならば、私は言いたいのです。「カッコいいクルマ選び」なんてものを決め打ちでできると思ったら大間違いだ!と申し上げたい。「カッコいいクルマ選びはあなたが好きなクルマに乗ることではない!」ということを肝に銘じるべきだと思うのです。お金を出せば好きなクルマは買えるでしょう。好きな仕様にできるでしょう。それでよければよろしいのではないでしょうか。しかしながらそのクルマ、その仕様、あなたに似合っているとは限りませんよ。いっそあなたがクルマに合わせますか?まじめな話、その方が話の早いこともありますが。悪いとは言いません。できるなら。でもなかなかそうはいかないと思います。
そしてそのうえで、時に予期せぬクルマが現れることがあります。例えば私のマセラティも、その前のシトロエンもそうでした。別にその時、何が何でも欲しい車種なんかではありませんでした。むしろ積極的に欲しかったのは、シトロエンの時はBXではなくエグザンティアでしたし、マセラティ430ではなく、そのあとのクアトロポルテでした。でも、目の前に現れて「そのクルマを買わねばならなかった」のです。天賦天命、大げさかもしれませんが、その類のご縁なのです。抗おうにも他の選択肢がない、あるいは断たれてしまっている。そのクルマに乗るほかに選択の余地がない場面があるということを、「カッコいいクルマ選び」などを追い求めて妄信している皆さんは知るべきだと言いたいのです。
でも、その出会いは、そのクルマ以上に出会うべき人と出会わせてくれたり、何か大きなチャンスをくれたりすることもあるでしょう。もはやクルマを買う以上の「ご縁」であるのです。クルマを想い、クルマに浸っていると、そういうことがあるものなのです。あのクルマが私に似合っているか、正直知りません。知ったことではありません。でも、あのクルマなしに今の私はないのです。
果たして世の中で言われる「カッコいいクルマ選び」とはそういうものでしょうか。そうでもなければ、その目の前にあるクルマを買ってみる。ただ何となく、思うがままに。そうすると、時に上のようなことに似たことはあるかもしれません。そうでもなければ、繰り返しで恐縮ですが、高年式のトヨタ車とか、そういう穏便なクルマ選びにこそ、よほど強く魅力を感じるものです。
少なくとも「カッコいいクルマ選びのためのカッコいいクルマ選び」というものは、私見ですが有り得ないと思っています。WEBCGの堀田氏が買ったダッジバイパーにも、僕は氏が引き寄せた「定め」のようなものを感じるのです。クルマの神様のお導きがあったのではないか。そんな風に感じてしまうのです。
カッコいいクルマ選びを目論むより、あなたを選んでクルマがやってくる。オーナーが見込む、そんな人を目指してみてはいかがでしょうか?皆さんがクルマ好きなら。まあ、それでも私は高年式のトヨタ車をサラッと乗る。そんなカーライフにも憧れがあるのですが(笑)。
[ライター・画像/中込健太郎]
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