もくじ
どんなクルマ?
ー 第4世代のRS4
ー 筋力アップとダイエットを両立
ー 迫力のルックス、引き立てる高価なオプション
アウディ新型RS4アバント 初試乗 4代目の操舵/乗り心地、洗練と迫力を両立
どんな感じ?
ー 強烈に速いクルーザー
ー パフォーマンスカーとしては不満な走り
ー 1.7トンの功罪
「買い」か?
ー 楽しむには高すぎる限界
スペック
ー アウディRS4アバントのスペック
どんなクルマ?
第4世代のRS4
4代目となるアウディRS4アバントは、ベース価格が6万ポンド(約900万円)を突破。メカニズムは、面白みに欠けた先代から大幅な変更を遂げた。マラガでの国際発表会でも試乗しているが、今回は3月に発売を控えた英国の路上が舞台だ。
新たな装備の多くは、現行RS5と共通する。特徴的な4.2ℓ自然吸気V8に別れを告げ、2.9ℓV6 TFSIを搭載。これは初代以来のV6ツインターボ復活だが、2.7ℓだったかつてのユニットよりわずかに排気量を拡大している。先代より燃費性能は20%近く向上し、CO2排出量は実に半減しているという。
とはいえ、それらはもちろん、取り上げるべき数字のほんの一部に過ぎない。
ダウンサイジングユニットのV6は、V8より31kgの軽量化を実現し、その分だけ鼻先が軽くなっている。また、両バンクの間に排気マニフォールドとタービンを配置する、いわゆるホットVレイアウトを採用。吸気系の取り回しが短縮され、結果、ターボラグの軽減に成功している。
筋力アップとダイエットを両立
そして、このユニットはパワフルだ。排気量は縮小したが、爆発的な能力を秘めている。450psのパワーは今や驚くほどの数値ではないが、1900~5000rpmで発生する61.2kg-mのトルクは、凶暴なまでの加速が持続することを示唆している。
0-100km/hのタイムは4.1秒、最高速度はリミッターが250km/hで作動するが、1450ポンド(約22万円)の追い金で解除すれば280km/hに達する。
軽量化は、エンジンのみに留まらない。ボディで15kg、前後アクスルで12kg、電動ステアリングで3.5kg、クワトロ4WDシステムで12.5kg、そして、リアアクスルに備わるスポーツ・ディファレンシャルだけでも1kgを、先代のものから削り落としている。
さらに、オプションのカーボンセラミック・ブレーキと20インチのホイールを装着すれば、それぞれ8kgのダイエットに。こうしたもろもろを積み重ねて、このB9系RS4は、先代のB8系より最大80kgも減量。もしかしたら、これを皮切りにRSシリーズの重量削減が進むかもしれない、と期待させる。
ただし、オプションリストの項目が例によって山盛りなので、せっかくの軽量化を損なわないよう気を付けたい。走りにかかわるアイテムをピックアップするなら、スポーツサスペンションが2000ポンド(約30万円)、ダイナミック・ステアリングが950ポンド(約14万円)といったところ。1200ポンド(約18万円)でスポーツエグゾーストも追加でき、アウディの言うB5系のV6を彷彿させるサウンドが味わえるが、その元ネタは鈍くて冴えない音だったのだから、別にうれしくもない話だ。
迫力のルックスを引き立てる高価なオプション
ルックスについては、先代よりだいぶ迫力が増している。シャープな角度や彫りの深い造形、スポーティな味つけを各部に与え、前後ライトをダーク処理としたことなどが要因だ。ほぼメルセデス-AMGのC63ワゴンと同等のサイズだが、RS4はハードなメカっぽさで差をつけている。
ナバラブルーのようなコンサバティブなカラーでも645ポンド(約10万円)のオプションだが、一見して装備を充実させた3.0 TDIと見分けにくいようなそれが、多くのユーザーには支持されるだろう。
周りが避けて通るような個性が欲しいなら、同じ金額で奇抜なソノマグリーンに塗ることもできる。これにプライバシーガラスと、550ポンド(約8万円)のブラックスタイリングパッケージを追加すれば、近寄りがたい存在になれるだろう。いろんな意味で。
しかし、パール色のベガスイエローに2400ポンド(約36万円)、アンスラサイト塗装の20インチ・ツインスポークホイールに2400ポンド(約36万円)、カーボンブラックパッケージに5000ポンド(約75万円)と、際限なくアイテムを足していくと、価格はスーパーカーのレベルに近づいていく。はっきり言って、それは実用性に乏しい出費だ。
どんな感じ?
強烈に速いクルーザー
英国のひどい舗装の上でも、どこまでも速い。実際、このクルマのポテンシャルを引き出せるかは、精神力にかかっているといってもいい。絶叫マシンのように興奮して乗るのではなく、淡々と走らせるのだ。
450psは、アウディスポーツ物件としては控えめだ。かつてクワトロGmbHと名乗ったチューニング集団の作品としては、RS7パフォーマンスが605psだ。もっとも、ウェイトはRS4の1715kgより200kgばかり重いが。となれば、このクルマは一般的なアウディが快適に走れる範疇で生きるべきクルマだ。めちゃくちゃに飛ばすと、路面状況にかかわらず、スタビリティが怪しいことになってくる。
クワトロシステムには期待を寄せるところだろう。おまけに、試乗車ではコンチネンタルのスポーツコンタクト6だったタイヤは、265幅もある。
レースさながらの走りをしてみても、8段のトルコンATが苦も無くスムースに変速し、クルマとのマッチングの良さを示してくれる。前後駆動力配分は通常40:60だが、トラクションの状態により最大でフロントへは85%、リアへは70%まで比率を高められる。その変動ぶりは、十分に感じ取れるレベルだ。
試乗車のパッシブダンパーは、高速道路を滑らかに走るようセッティングされているようだ。ホイールコントロールは簡潔で、ロールはかなり走り重視のホットハッチのように制限されている。
方向転換も文句なしだが、細いリムとクイックレシオのステアリングには、決してアルファ・ロメオがジュリア・クアドリフォリオで味わわせてくれるような爽快感を期待してはいけない。クルーザーのようでありながら速い、そんなクルマだ。
パフォーマンスカーとしては不満な走り
スタビリティの問題は、つまるところこのステアリングに起因する。軽く精確だが、フィールはデッドだ。スロットルやブレーキの操作と組み合わせても、たいていの場合は無難な仕事をする。
アンジュレーションのあるS字で、2速や3速での全開加速を試してみると、馬鹿にしたようにあっさりとこなす。路面の荒れた低速コーナーへの進入でハードにブレーキングしても、動じることはない。
ここで自問自答してしまうのだ。これが本当に、パフォーマンスカーに望むものなのか、と。ファミリー向けのワゴンであれば、これでいいのだが。
3ステージ式スタビリティコントロールはよく調整されており、どんな場所にもそうと気づかぬうちに合わせてくれる。トルクベクタリングの助けもあって、走りはまさにオン・ザ・レールだ。
では、それを解除したらどうなるか。
スポーツ・ディファレンシャルをダイナミックモードに入れると、RS4は中速コーナーをとりあえずは抜けながらも、テールを振り回せるようになる。
ただし、C63ワゴンのようにナチュラルではなく、基本的にはアンダーステア傾向だ。メルセデスで楽しめるようなパワー・オーバーステアに持ち込もうというなら、幸運を祈るとしか言いようがない。試みた途端、強烈な荷重移動に見舞われることとなる。
1.7トンの功罪
乗り心地において、大きな振動を抑える上で重量は核となる要素だ。一日中移動するような使い方が多ければ、その重要度は高い。ところが、短距離移動が多いような場合には、その重さが燃費というかたちで財布にのしかかってくる負担を増すことになる。
RS4のようなパフォーマンスカーであればやむなし、と考えるのが常識だが、アウディなら何とかしてくれる、と勘違いしているなら、結果には失望するだけだ。
今回、短時間ながらRSスポーツサスペンション・プラス仕様にも試乗が叶った。これは、対角線上にある3ステージ式アダプティブダンパーを油圧経路で結んだ、ダイナミックライドコントロールを備える仕様だ。
2000ポンド(約30万円)の価格は決して安くないが、本体が6万ポンドを超えるクルマのオプションとしては妥当なのかもしれない。少なくとも、ボディカラーにそれ以上を払うよりは有意義な出費だ。
この構造の狙いは、加減速時やコーナリング中のピッチとロールを軽減することにある。その恩恵をはっきりと享受できるのは、サスペンションのセッティングをコンフォートモードにした際で、そこでは低速の突き上げを和らげ、コーナーでは適度にロールしてくれる。
買いか?
楽しむには高すぎる限界
はたして、この1.7トンのワゴンはドライバーズカーなのか。個別の要素をつなぎ合わせていけば、そうだといえる。
速さ、断然たる機敏さ、どこまでも予測しやすいレスポンス、どれをとっても、どれをとっても満足度は間違いなく高い。これがワゴンだということも考え合わせれば、驚くべきアジリティの持ち主だ。
しかしながら、このクルマの捉え方は、乗り手の好みに大きく左右される。振り回して楽しみたいというなら、メカニズムがそれを許容しない。まず、RS4の限界は、公道上で引き出すには高すぎる。そして、電子制御デバイスが、そういった走りを受け入れようとはしてくれない。
ただし、限界域は間違いなくC63ワゴンより上だ。また、そのAMGのワゴンにはソウルフルなV8ツインターボと秀逸なハンドリングバランスを備えるが、インテリアはクオリティもエルゴノミクスもRS4には敵わない。試乗することなく発注するようなユーザーには、RS4は実に魅力的な商品と映るだろう。
アウディRS4アバントのスペック
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