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世界初公開されたメルセデス・ベンツ EQSはサプライズの宝庫! 革命的テクノロジーの塊を渡辺慎太郎が解説

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世界初公開されたメルセデス・ベンツ EQSはサプライズの宝庫! 革命的テクノロジーの塊を渡辺慎太郎が解説

Mercedes-Benz EQS

メルセデス・ベンツ EQS

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高級セダンのまったく新しいカタチ

新型Sクラスの試乗記に「まだ過渡期」みたいなことを書いた。大変よく出来てはいるけれど、高級セダンの新基軸や再定義と呼ぶにはどこか物足りないなとなんとなく感じたからである。

EQSの広報資料はA4サイズの英語版で約70ページにも及び(Sクラスは73ページだった)、その冒頭には「メルセデスはEQSで高級サルーンを再定義します」と書かれていて「ああやっぱりな」と思った。高級サルーンでネックとなる振動や騒音は、内燃機と比べるとEVのほうが圧倒的に有利なわけで、究極を目指すなら高級サルーンは将来的にEVに置き換わるかもしれないと個人的には想像している。

後輪駆動と4輪駆動をラインナップ

EQSはメルセデスにとって史上初となるEVのセダンであると同時に、EV専用のまったく新しいプラットフォームを初めて採用したモデルでもある。発売当初に用意されるのは「EQS 450+」と「EQS 580 4MATIC」の2タイプで、パワースペックはそれぞれ333ps/568Nmと523ps/855Nm。EQS 450+はリヤにモーターを置く後輪駆動である。

ボディサイズは全長5216mm、全幅1926mm、全高1512mm、ホイールベース3210mm。これをメルセデス Sクラスの標準ボディと比較してみると、EQSのほうが長く幅広く背が高いが、SクラスのロングとではEQSの全長のほうが短い。

“EV専用ならでは”のデザイン

メルセデスではEVのデザインフィロソフィーをふたつに分けたそうで、既存の内燃機を積んだモデルのプラットフォームをベースにしたもの(EQCやEQA)は「コンバージョンデザイン」、EQSのように専用のプラットフォームを持つモデルを「パーパスデザイン」と呼んでいる。内燃機とEVはパワートレインがまったく異なるので、パッケージとデザインの自由度も大きく違ってくるのが当然であり、それぞれに見合うスタイリングを行うということのようである。

EQSは前後のオーバーハングが短く、Aピラーからルーフを経てCピラーに至るラインが弓のような曲線でつながり、さらにキャブフォワードになっている点が特徴である。ドアはサッシュレスのクーペタイプで、大きなハッチゲートを持つ2BOXでもある。フロントグリルは「ブラックパネル」という光沢感のあるパネルで覆われ、その奥には超音波センサー/カメラ/レーダー/ライダーなどの運転支援システム各種が配置されている。

自ら空力のCd値記録を更新

Sクラスと同じ3BOXではなく、ボディ剛性では不利な5ドア+サッシュレスドアにした理由について、エクステリア担当のデザイナーは「基本的にEQシリーズのセダン系は2BOXのパッケージとなります。いくつか理由はありますが、内燃機を積むメルセデスとのデザイン上での差別化や、クーペのシルエットにすることで空力的に有利になることなどが挙げられます。ボディ剛性に関しては、ボディ設計のエンジニアが腕を振るってくれたのでまったく問題はありません。2BOXにしたことによるデメリットはひとつもないはずです」と語った。

そのスタイリングに関してメルセデスがもっとも胸を張るのがCd値である。EQSは0.20という世界トップレベルを達成した。これには、空力的に有利な専用のホイール&タイヤ/ブラックパネルからヘッドライドにかけたフラットなフロントエンド/Aピラーのデザイン/アンダーボディパネル/前後のホイールスポイラーなどが貢献しているという。なお、EQSがCd値のトップを獲得するまではAクラスセダンとSクラスが共に0.22で並んでいた。

人間の「視」「聴」「嗅」「触」に訴えかける

すべてが電気によってコントロールされるEVは、普通の自動車よりも人間から少し離れたところにあるように感じてしまう。そんな拒絶感のようなものを少しでも払拭しようと、メルセデスはEQSの開発にあたり、あえて人間の五感に訴えかける設計を随所に行っている。

ひと目で内燃機を積んだクルマではないと分かる特徴的なエクステリアデザインやダッシュボード一面に広がるMBUXハイパースクリーン、ARを使ったヘッドアップディスプレイなどは、目で見て感じるから視覚。クルマに乗り込んだ時やロック時など、さまざまな機能や機構が稼働する際には特徴的なフィードバック音が聞こえる。これが聴覚。

大型のHEPAフィルターと室内のエアフィルターに使用されている特殊な活性炭は非常に大きな内部表面積を持っていて、吸着面積はサッカー場の約150個分に相当するという。これにより、PM2.5はもちろん二酸化硫黄や窒素酸化物などあらゆるサイズの粒子の99.65%が除去可能で、この能力はクリーンルームや手術室に匹敵する。これは嗅覚。そして手触りのよい上質な本革やステッチ、ウッドパネル、タッチスクリーンのレスポンスフィードバック機能、10種類のマッサージプログラムなどが触覚を刺激するといった具合である。

横幅1.4mの巨大なスクリーンを配置

インテリアのハイライトはMBUXハイパースクリーンだろう。室内の左右いっぱいに広がる横幅141cmのスクリーンユニットは、3つのディスプレイが1枚のガラスでカバーされていて、まるで全体でひとつのモニターのように見える。運転席ディスプレイは12.3インチ、センターディスプレイは17.7インチ、そして助手席ディスプレイは12.3インチで、センターと助手席は有機ELとなっている。

また、EQSはメルセデスとしては初めてOTA(Over The Air Update)を導入した。これは、さまざまな機能領域におけるプログラムなどを通信を介してアップデートしたり追加できるもので、就寝中にアップデートを済ませておけば、翌朝には新しい機能が使えるというPCのような使い方ができるという。

最長航続距離は約800km

EQSではモーターやリダクションギヤなどを収めた電動パワートレインのユニットをeATSと呼び、EQS 450+ではこれをリヤに、EQS 580 4MATICではさらにフロントにも置いている。EQS 580の4MATICは前後のトルク配分が連続可変式で、状況に応じて最適な割合で駆動力を振り分ける。

フロア下に敷き詰められたリチウムイオンバッテリーは新開発のもので、航続可能距離は最大で770km。使用可能エネルギー量は107.8kWhを誇っている。エネルギーの回生率や充電効率も世界トップレベルだそうで、充電器によっては15分で約300km分の充電が可能となる。安全性や耐久性や経年劣化などの性能面は徹底的にテストが繰り返され、10年または25万kmまで70%の残量を保証している。コバルトの含有量は10%以下に抑えるなどサステナビリティに考慮した設計でもある。

エアサス+後輪操舵は全車標準装備

サスペンションはフロントが4リンク、リヤがマルチリンクでSクラスとほぼ同じ形式となっている。これに空気ばねと電子制御式ダンパーを組み合わせたエアサスペンションが標準装備となる。また最大4.5度の操舵角を持つリヤアクスル・ステアリング(後輪操舵)も全車に装備されている。

このエアサスペンションは、セルフレベリング機構により常に一定の車高を保つだけでなく、速度に応じて車高を自動的に変更する。また、40km/hまでなら任意で25mmまで最低地上高を上げることも可能である。回生ブレーキはパドルによって3段階の調整ができる他、ECOアシストモードではもっとも効率的な走行となるため、スロットルペダルだけで十分な減速から停止までができる、いわゆるワンペダル走行を実現しているそうだ。

4枚すべてに“自動ドア”を設定

EQSには先進の安全装備やレベル3の運転支援システムの他にも、すでにSクラスに採用されている機能や機構が数多く投入されているが、このクルマに初採用となるのが「オートマチックコンフォートドア」、つまり自動ドアである。オプションのこの機構では、4枚のドアがすべて自動で開閉できる。

例えば、ロックしたEQSにドライバーが近づくと、約6mの距離でまず格納式ドアハンドルが浮き上がり、1.5mまで近寄ると運転席ドアが自動で開く。また、運転席から他のドアを閉めたり、ブレーキペダルを踏めば運転席ドアが自動で閉まる機能もあるという。もちろん、コンフォートドアの作動にあたっては障害物検知を行い、周囲の状況を360度スキャンして、安全が確認できたときのみ作動する仕組みである。

EQSは将来のSクラスに取って代わるかもしれない高級サルーンである一方で、メルセデスがまったく新しい乗り物の模索を始めたかのようにも思える。オンライン発表会で「EQSはメルセデスにとってターニングポイントである」と語られていた。Sクラスの先だけでなく、自動車の先にある乗り物を彼らは探り始めているのかもしれない。

REPORT/渡辺慎太郎(Shintaro WATANABE)

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みんなのコメント

3件
  • コンセプトモデルはカッコ良かったな
  • 電気自動車は「変な形にしなければならない」という法律でもあるのだろうか?
    どう見てもカッコ悪いよ、コレ。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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