11月27~28日の週末にシーズン最終戦『グラン・プレミオ』として開催された2021年スーパーTC2000(STC2000)第12戦は、TOYOTA GAZOO Racing YPF・インフォニアの“スピードスター”ことジュリアン・サンテロ(トヨタ・カローラSTC2000)が、通常フォーマットとは異なる日曜1発勝負で勝利を挙げ有終の美を飾った。
しかしその背後では、タイトル候補とその所属チームが総力を挙げた最終決戦を繰り広げ、最終的に3位表彰台を獲得した2016年王者のアグスティン・カナピノ(シボレーYPFクルーズ)が自身2度目のシリーズチャンピオンを獲得。ルノースポール・カストロール・チームのエースカーである3号車をドライブした、2019年チャンピオンのリオネル・ペーニャ(ルノー・フルーエンスGT)は、2位フィニッシュを果たすものの一歩及ばずの結末となった。
豪華ゲスト参戦の耐久戦はネストール・ジロラミ組シビックが制覇/TCRサウスアメリカ第6戦
アルゼンチンの首都ブエノスアイレスにあるオスカー・ファン・ガルベスで、今季5度目のイベント開催となったシーズンフィナーレは、188点のランキング首位カナピノを筆頭に、2位ペーニャが178点、サンテロが129点、以下、124点でプーマ・エナジー・ホンダ・レーシングのファクンド・アルドゥソ(ホンダ・シビックSTC2000)、そしてトヨタのエースであるシリーズ4冠のマティアス・ロッシ(トヨタ・カローラSTC2000)が123点で続く状況で始まった。
通常なら土曜の計時予選を経てクオリファイレースを実施し、日曜にメインのフィチャーレースを開催するSTC2000だが、この最終戦では第8戦の200kmレースと同様に、日曜決勝のみで雌雄を決するフォーマットとした。
その走り出しとなる最初の公式練習ではルノーのペーニャが最速に。続く2回目のセッションではシボレーのカナピノがトップタイムとし、各ファクトリーチームのエースが一歩も譲らない速さで王者への意欲を示すと、予選でも1分18秒462を記録したカナピノがポールポジションを獲得。フロントロウにダミアン・フィネンチ(ルノー・フルーエンスGT)、セカンドロウにベルナルド・ラヴァー(シボレーYPFクルーズ)が並び、3列目をサンテロとペーニャが分け合うグリッド順となった。
この予選終了時点で、選手権首位カナピノは191点としてポイントリードを13にまで広げることに成功する。しかし明けた日曜8時40分からの“フルタンクテスト”ではペーニャのフルーエンスGTが最速を記録するなど、決勝に向けた良好なレースペースを確認するとともに、逆転タイトルに向けライバルに重圧を掛けていく。
正午にスタートが切られた今季最後の決勝は40分+1ラップのウエット勝負となり、レース全域にわたってサイド・バイ・サイドからポジションチェンジが演じられる白熱の展開に。
■「ひどい状況だったよ。3回か4回はコースをはみ出した」とカナピノ
スタート直後の攻防では2番手フィネンチが背後のエースに貢献しようとポールシッターに仕掛け、このバトルにペーニャも参戦。三つ巴でお互いにコンタクトを伴いながらのレインバトルを繰り広げる。
その状況を利用して前進したのが5番手発進のサンテロで、ヘアピン出口でフィネンチのルノーに張り付くと、オープニングラップ終了のホームストレートで早くも首位浮上に成功する。
この時点で2番手にカナピノが続き、ペーニャは6番手と結果的にポジションアップは果たせず。後方から迫る連覇経験者アルドゥソのシビックをケアする必要に迫られる。その状況を打破しようと、ふたたびチームプレーに出た3番手フィネンチは、前を行くライバル陣営のシボレーにサイド・バイ・サイドを挑むと、ふたりは雨中のサーキットをそのまま周回し、悪天候のなか詰めかけたファンからは大きな拍手が沸き起こる。
その後さらに雨脚が強まると、一時は4番手まで浮上したトヨタのエースがジリジリと後退するのとは対照的に、ルノーのペーニャがペースアップ。シボレーのラヴァーを仕留めて4番手とすると、フィネンチはすぐさまラインを譲ってエースを表彰台圏内へと先行させる。
ここからカナピノとの直接対決……と思われた矢先に“無用なバトルは避けた”とでも言わんばかりにルノーのオーバーテイクを許したカナピノは、数学上の優位性を考慮して3番手でレースを進め、背後のフィネンチを抑えるのに専念。これでルノー勢が逆転タイトルを得るためには、当事者の2番手ペーニャは首位を行くサンテロのカローラを、4番手のフィネンチがライバル候補の当事者カナピノをともに仕留めることが必要になった。
しかし無常にもレース最大時間の方が早く訪れ、トラック上の雨量が増すなかで首位サンテロに迫ったペーニャだったが一歩及ばず。TGRの“スピードスター”はシーズン最終戦で今季2勝目、キャリア通算3勝目を飾るとともに、2位ペーニャ、3位カナピノの表彰台に。この結果、カナピノが221点、ペーニャが213点で、シボレーのエース2度目のチャンピオンが決定した。
「非常に激しく厳しいレースだったが、僕らのクルーズは濡れた路面はもとより、一部乾いたレコードラインでも非常にうまく機能した。実際1日を通して素晴らしい時間を過ごしたジュリアン(・サンテロ)より、後半のレースペースは良いくらいだったからね」と、上機嫌で振り返ったカナピノ。
「でも雨量が増した終盤はやっかいなことに、フルーエンスのペースが上がった。レオ(・ペーニャ)は追いつきざまにとてもタイトな動きで僕を追い越し、すぐに(ダミアン・)フィネンチが襲い掛かってきた」
「彼ら2台がともに前に出た場合、ルノーにタイトルが渡ることは理解していた。雨が降り始めてから最後まで瞬きする間もない、ひどい状況だったよ。3回か4回はコースをはみ出したし、不可解なアドレナリンを感じた。それは完全な狂気だったよ」
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