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長期テスト BMW M135i(最終回) 改造プロジェクト終了 M2と比較

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長期テスト BMW M135i(最終回) 改造プロジェクト終了 M2と比較

もくじ

ー BMW製のFRホットハッチは革新的な存在
ー 落ち着きのない足回りとLSDがないのが欠点
ー バーズにモディファイを依頼 まずはハンドリングから
ー 大入力に対する身のこなしが改善
ー LSDを導入し、最後はECUのリマッピング
ー M2と比べると?
ー テストの記録

長期テスト BMW M135i(4) リマッピングで395ps

BMW製のFRホットハッチは革新的な存在

2012年のデビュー当時、このFRのホットハッチがどれほど素晴らしいのかについて触れていないクルマ雑誌やユーチューブのチャンネルを探す方が難しかった。

あれから6年。M135iは本当にゲームチェンジャーと言える存在だった。3万ポンド(437万円)しない価格ながらプレミアムブランドのバッジを掲げ、後輪駆動の動力性能と304psを備えるという、これまで現れたことのない存在で、走りも良かった。とても200psくらいの、フォードやヴォグゾール製のFFマシンのは賢明だと思えなかったのだ。

それくらい、デビューしたM135iへの熱狂は欠点のひとつふたつを隠すには十分で、少なくとも多くの人が見落としていた。しかし、数年がたつとその興奮も薄れ、今ではM135iの欠点も正しく目を向けることができるようになった。

落ち着きのない足回りとLSDがないのが欠点

欠点と言っても、そこまで多いわけではない。

まずは乗り心地とハンドリングのバランスについて。M135iに乗っても、BMWと聞いて期待するほどの素晴らしさは得られない。排水溝のふたなどを踏むとかなりの衝撃を伝えてくるし、うねった道ではボディコントロールがルーズに感じられる。そこそこのスピードで強い衝撃が加わった際には、すぐにリアが浮いてくる感触に思わず毒づいてしまうだろう。

サウンドや少々間抜けな1シリーズのスタイリングについても不満を覚えるかもしれないが、ダイナミクスについて他に大きな問題があるとすれば、それはLSDが標準で装着されていないことだろう(ディーラーオプションには存在しているが、ほとんど装着事例はない)。これにはいくつかの理由が考えられる。

ひとつは、上から2番目のグレードに当たるM パフォーマンスと、全車ロッキングディファレンシャルを装着している最上級グレードのMモデルを差別化するため。

他には、実際のところオープンデフの方が安全であるため。つまり、1輪だけならまだしも、2輪がスピンするとスライドにつながってしまうからだ。

特にモデル間のヒエラルキーや安全性への企業責任を考えなくて良ければ、オープンデフに対するロッキングディファレンシャルのメリットは、デメリットを大きく上回る。トラクションが向上し、限界域でのハンドリングが予想しやすく、必要な時にはパワーオーバーステアを引き起こせる。LSDは是非とも装着したいところだ。

バーズにモディファイを依頼 まずはハンドリングから

M135iのポテンシャルを高めるため、われわれは有名BMWスペシャリストであるバーズの手を借りることにした。

ヒースロー空港にほど近い同社は、アップグレードパッケージを開発していた(これはM135iだけでなく、M235iや後期型のM140i、M240iにも装着可能だ)。ご存じの通り、B1キットでは新しいスプリングとダンパー、クワイフ製LSD、エンジンのリマッピング等が含まれる。

昨年夏に、われわれは走行距離4万8000km弱のM135i 3ドアモデルを1万7500ポンド(255万円)で購入していた。B1キットは合わせて6640ポンド(96万8000円)かかるため(24カ月の保証を含む)、われわれはこのマシンに計2万4100ポンド(352万円)を費やしたことになる。ちなみに、このキットは個別に装着することも可能で、M135iもやや値下がりして1万4000ポンド(204万円)程度で購入することができる

われわれは手始めに、ハンドリングの改善に着手した。経験豊富なレーシングドライバーであるジェームズ・ウェーバーと、彼と長い間ともに戦っているレースエンジニアのピーター・ウェストンとともに、バーズはM135i用のサスペンションキットを開発していた。

大入力に対する身のこなしが改善

レーサーとエンジニアが参加していると聞くと、サーキット向けにガチガチに固められたものを想像するが、このキットは決してそういう類いのものではなかった。ロードカーとして、標準仕様の不安定な乗り心地と予測不可能なボディコントロールを取り除くことが目的だ。

ダンパーはビルシュタイン製、スプリングはアイバッハ製だが、決してぽん付けではない。ウィーバーとウェストンはスプリングレートを細かく指定し、ダンパーカーブも変更している。そのためビルシュタインはこのスペックに合わせて、バーズのためにダンパー類を特別に製造しているのだ。

新しいサスペンションでフロントは10mm低くなり、フロントのトラックはスペーサーによって少々広げられている。これによってルックスがよりアグレッシブになった。

スプリングは標準比で10%固められ、ダンパーのリバウンドも抑えられている。当然、目には見えない細かな路面の凹凸から来る衝撃は増したが、轍などもっと大きな入力に対する身のこなしは明らかに改善されている。

ボディコントロールもずいぶんと改善され、荒れた道でも簡単に浮いてしまうことなく、タイヤが地面を追従しているのが感じられる。

LSDを導入し、最後はECUのリマッピング

次に装着したのがLSD。これによってわれわれがM135iに求めていたハンドリングが手に入った。この段階で、バーズはショートシフトキットを組み込み、クラッチペダルをより重いタッチに変更している。どちらも攻め込むなら効果的で、タイトでシャープな感覚が得られるようになった。とは言え、ストップアンドゴーが続く状況では、左足の筋トレ以外の何物でもないが。

最後に手を加えたのがエンジンだ。リマッピングは、シンプルですぐにできるが効果的なレシピで、このN55型直列6気筒エンジンはすぐに約395psまでパワーアップを果たした。エンジンのポテンシャルで言えば400psを超えることも可能だが、それを維持するためには非常に多くの費用が必要になってしまう。

58.1kg-mの大トルクは言うまでもなく、このサイズのクルマで395psなら十分異常と言えるだろう。リマップしたエンジンはかなり強力で、もとの鋭いスロットルレスポンスと生き生きしたトップエンドという特性はまったく失われていない。

上のメニューすべてがM135iを非常に魅力的なクルマに生まれ変わらせている。何より、このプロジェクトの素晴らしかったところはM135iの優れた点はそのままに、欠点を払拭することに成功した点だ。特に、コストパフォーマンスの良さを犠牲にしていない点は特筆すべきだろう。1万4000km以上を走ったがこのクルマは信頼性が高く、アップグレードや通常の点検整備、サイドに入ったキズの補修を除けば、一銭も使う必要がなかった。おそらく手放したあとには非常に恋しく思うことだろう。

M2とくらべると?

この2台を並べても、どちらが高価なのかを判断するのは非常に難しいだろう。実際にたくましさが増したM2と比べると、線が細くアップライトなM135iは到底パフォーマンスカーには見えない。だが実は、このシンプルなルックスのハッチバックの方が速いのだ。

われわれのM135iはM2よりも25ps、7.1kg-m高いスペックを持つため、中回転からパワフルに感じるし、レッドゾーンまで回したときの刺激も上だ。しかし、M2はパワーこそ負けるが太いタイヤを履いているため、トラクションに優れる。逆に、バンピーな道ではM135iの方がしなやかに路面からの入力をいなしてくれる。M135iならタイヤが路面にしっかりと押しつけられているのが感じられるが、M2では少しスキップしているのがわかるだろう。

ちなみに、このフェイスリフト後のM2は前期型からかなり進化している。多くのBMWのハイパフォーマンスモデルと同様、元々ボディコントロールに難があったが、この後期型では自身を持ってコントロールすることが可能になっている。

M2がM135iより優れている点は、スタビリティとコーナーで感じる迫力だ。膨らんだホイールアーチはトラックが拡大されていることを語るが、コーナーを攻めればそのありがたみが実感できるだろう。

この2台はプラットフォームとエンジンを共有しているが、実はライバル的な存在ではない。M2の新車価格は4万6700ポンド(680万円)。かたやわれわれのM135iを手に入れるには2万ポンド(291万円)あれば事足りるのだ。

M2は非常に優れたマシンで有り、資金力が許せばこちらを買うと良いだろう。だが、もし価格がネックとなるのなら、M135iをモディファイするのが次の候補となる。なにしろM2の半分以下の価格で収まるのだ。

テスト車の記録

モデル名:BMW M135i
テスト開始日:2017年8月7日
テスト開始時走行距離:47958km
テスト終了時走行距離:62201km

価格

新車時価格:3万ポンド(437万円)
テスト車の価格:1万7500ポンド(255万円)

アップグレード

B1キット計6640ポンド(96万8000円)

内訳
サスペンションアップグレード1870ポンド(27万2000円)(税込)
クワイフ製LSD2030ポンド(29万6000円)
ショートシフトキット 532ポンド(7万7500円)
クラッチペダル調整 113ポンド(1万6500円)
ECU リマッピング2700ポンド(39万3000円)

燃費&航続距離

カタログ燃費:16.0km/ℓ
タンク容量:52ℓ
平均燃費:13.0km/ℓ
最高燃費:14.0km/ℓ
最低燃費:10.6km/ℓ
航続可能距離:514km

主要諸元

0-100km/h加速:4.0秒
最高速:265km/h(推定)
エンジン:2979cc 直列6気筒ガソリン
パワー:395ps/5800rpm
トルク:58.1kg-m/1500rpm
トランスミッション:6速マニュアル
トランク容量:360ℓ
ホイール:18インチアロイ
タイヤ:225/40 R18(フロント)、245/35 R18(リア)
乾燥重量:1505kg

メンテナンス&ランニングコスト

CO2 排出量:188g/km
メンテナンスコスト:-
燃料コスト:1600ポンド(23万3000円)
その他のコスト:キズの補修360ポンド(5万2400円)
燃料含めたランニングコスト:1960ポンド(28万6000円)
1マイル当りコスト:22ペンス(30.1円)
故障:なし

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