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「YZF-R1」歴代モデルのプロジェクトリーダー集結 開発秘話を披露

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「YZF-R1」歴代モデルのプロジェクトリーダー集結 開発秘話を披露

■理想から始まったYZF-R1の開発とは

 ヤマハはYZF-R1のデビュー20周年を記念し、宮城県のスポーツランドSUGOにて「YZF-R1 20th Anniversary YZF-Rオーナーズミーティング」を開催しました。会場には歴代モデルのPL(プロジェクトリーダー)、つまり開発責任者が一堂に会してさまざまな開発秘話を披露。その模様をお届けしましょう。

フルフェイス? ジェット? タイプもいろいろ<前編> バイク用ヘルメットの違いとは?

 司会:最初にYZF-R1の開発がスタートした頃の話を聞かせてください。

 1998年・2000年PL三輪邦彦さん:会社からは「とにかくNo.1を作れ!」と言われました。そう言われてできるなら苦労しませんけどね(笑) とはいえ、私なりに考えたのは、まず常識を破るくらい軽くするということ。シンプルにカッコイイこと。そしていかに「俺って速い」と思えるか。ゼロスタートですから、すべては理想から始まりました。

 司会:それが見事にカタチになり、初代モデルは世界的なヒットになったわけですが、跡を引き継がれた小池さんはいかがでしたか?

 2002年・2004年PL小池美和さん:初代モデルではボディ実験を担当していたのですが、三輪さんからはいつも「それでいいの? ホントにいいの?」と言われていました。決して「ダメ!」とはおっしゃらないものの、だんだん「やっぱりダメかもしれない」と思えてくるという(笑) でも三輪さんの期待を超えられていないということはお客様にとっても同じことですから自問自答の日々でしたね。PLを任せて頂いてからもそれは変わらず、かなり背伸びした目標を掲げてみんなには無理をお願いしました。

 司会:期待に応えるのではなく、超える。そういう強い意志がYZF-R1のスペックに感じられるのは確かですね。ただし、普通のライダーが扱えなくては意味がありません。そのあたりのサジ加減はどのようにされたのでしょうか?

 2006年PL島本誠さん:バイクにとってエンジンは大切ですが、それ自体が走るのではありません。フレームやサスペンション、タイヤ・・・・・・といったパッケージ全体としてどうすべきかを考えました。開発過程でYZR-M1(モトGPマシン)と同じタイプのロングスイングアームを装着し、エンジン全長を短くしてみたところ評価が高く、それ以降エンジンに対する考え方が大きく変わりましたね。パワーよりもバイクを構成するパーツの一部としていかにバランスさせるか。常にそれを意識するようになりました。

 司会:事実、それ以降はエンジンの仕様が大きく変わっていきましたね。

 2007年・2009年PL西田豊士さん:まずエンジンのバルブ数を5バルブから4バルブにして、可変ファンネルも採用。フレームにも実験的な試みを盛り込んでいきました。あまり知られていませんが、発売前なのに鈴鹿8耐でプロトタイプをこっそり走らせていたんですよ。当時はフレーム変更が許されているXフォーミュラというクラスがあったからできたことですが、会社にはかなり怒られました(笑)

 そういうこともあって、2007年モデルはいわくつきであるのと同時に、個人的な思い入れも強いですね。そして、2009年モデルはクロスプレーンの投入に尽きます。それまでは吹け上がりの鋭いエンジンに車体をどう合わせ込むか。それが基本的なスタンスでしたが、クロスプレーンになって出力特性が激変。どんどんスロットルを開けていけるようになったため、それを活かす車体設計に方向性が切り換わったんです。そのあたりは何時間でも話せるので今日は控えますけど(笑)

 司会:ところで、2009年モデルでは日本仕様がラインナップされましたが、なにか苦労されたことはありましたか?

 2009年国内仕様PL竹田祐一さん:日本のレギュレーションに合わせて単にスペックを落とすのではなく、実際の道路環境にふさわしいエンジン特性が得られるように作り込みました。会場を見ていると国内仕様でお越し頂いている方も多数いらっしゃり、ありがたく思います。

■サーキット最速を目指せば一般道でも乗りやすくなる

 司会:そしていよいよ2015年に現行モデルが登場。大きな話題になりました。

 2015年PL藤原英樹さん:クロスプレーン化された2009年モデルと2015年の現行モデルの間には実に6年の歳月があり、その間にスーパースポーツ界は大きく変わりました。国産メーカーに加えてBMWやドゥカティ、アプリリアといったヨーロッパ勢が台頭してきましたから、その中でどうしても勝ちたかったんです。しかもわかりやすくサーキットで勝とうと。

 ただし、歴代のYZF-R1は「セカンダリー・ロード最速」を謳ってきました。これは「いかにワインディングで楽しいか」と言い換えてもよく、ラップタイムありきのサーキットとは本来方向性が異なります。その整合性に悩みましたが、そういう意識を変える出来事があったんです。

 司会:といいますと?

 2015年PL藤原英樹さん:実は開発に際して技術者を集め、YZR-M1に乗る機会を作ってもらいました。とてもじゃないけれど普通のライダーの手には負えない。そんな風に思っていたのに「このままツーリングに行ける」と言い出す者がいたほど、それは扱いやすかった。それがきっかけになり、最新の技術でサーキット最速を目指すとおのずと乗りやすいバイクになり、結果的に「セカンダリー・ロード最速」というコンセプトも守れると確信しました。それが分かると、あとはやりやすかったですね。迷った時はラップタイムがよくなる方を選べばよく、ブレることなく突き進めたというわけです。

 司会:サーキット最速を狙った現行のYZF-R1はデビューイヤーから鈴鹿8耐を3連覇(2015~2017年)。全日本ロードレース選手権でも2年連続(2015~2016年)でタイトルを獲得し、世界スーパーバイク選手権でも優勝を果たすなど絶好調ですが、今年はいかがでしょう?

 2018年PL平野啓典さん:「サーキットで勝つ」というシンプルな目標はプレッシャーですが、強力な後ろ盾にもなっています。ライバルのメーカーとのガチンコ対決を制し、特に鈴鹿8耐では4連覇をしてくれると信じています。

 司会:最後に、初代PLの三輪さんから現行PLの平野さんにエールをお願いします。

 1998年・2000年PL三輪邦彦さん:常に頭にないといけないのは「突き抜けるとは一体どういうことか?」ということです。目の前にある技術の延長線上で「ここを改良したらこうなる」なんて考えているようではダメ。なによりもまず「こんなコトができたらスゲェ!」という理想が先にあり、そのためには「スゲェって一体なんだ?」という思いをしっかり持っていることでしょうね。強い意志と同時に「ホントにこれでいいのか?」という疑問を持ち続け、人を動かしていく。それがPLの資質だと思います。

 2018年PL平野啓典さん:とても重たい言葉ですが、まだまだできることがあると自覚していますので次期モデルにつなげていきたいと思います。他のメーカーがスーパースポーツを止めてもヤマハだけは作り続ける。そういう思いでやっていきますので、これからのYZF-R1にもご期待ください。

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