メディアセンターってどんなところ?
モータースポーツをはじめ、多くのメディアが取材に駆けつける場には「メディアセンター」が設けられます。これは取材者の基地となるところで、ここで主催者から情報が公開されたりするなど、記事作成には欠かせない場所となっています。今回は、2024年のル・マン24時間レースという長丁場のレースにおいて、メディアセンターではどのように過ごしているのかをリポート。きちんと取材しながらも、楽しんでいる姿は日本では考えられないかも!?
「ル・マン24時間レース」が超人気のワケとは? 街あげての一大フェスの主役は昨年に続きフェラーリでした【みどり独乙日記】
記者やカメラマンなどが入り乱れる、ある意味戦場
まったくレースとは関係ない職業の友人からは、メディアセンター(プレスルームともいいます)で、いったい私たちメディア関係者は何をしているの? という質問をたまに受けます。たしかに謎ではありますよね。
基本的にそこで自分の仕事道具(ノートパソコンやカメラなど)を広げ、取材の準備や撮った写真の取り込みや整理、リザルトをチェックしたり、記者会見に参加したり、原稿執筆などを「マジメに」していることが多いのですが、たまにサボって通販サイトを覗いたり、一般的なニュースを読んだりもしています。
シーズン中の私はヨーロッパのサーキットをウロウロしているのですが、大体どこのレースに行っても会う人々は同じ。ここル・マンでは、当然ですが地元フランスメディアの方が非常に多いです。毎年ここでしかお会いしない方々もいます。今回、私の後ろの席のグループが、『Ouest-France』というフランスの大手新聞社の記者の方々でした。ル・マン24時間レースだけで、いったい何人の方々が従事しているの? と思うほどに大所帯。
もちろん、みなさんフランス人ですから「サヴァ?(元気?)」とお互いに声かけしているのですが、それを1日何回も同じ人に聞いていて驚きました。心の中では「何回サヴァ、サヴァ言うねん!」と思いながら……。私の住むドイツも日本でも、1日に同じ人と10時間以上一緒にいるのに「元気?」としつこく何回も声かけをしないので。
そして、これまたフランス人はよくしゃべる! 狭いメディアセンターの席でぎゅうぎゅうに人が立ち、それぞれがしゃべりまくるので、まるで文鳥やインコがいっぱいいる鳥籠のようです。
こちらも多忙な時間もありますので、耳栓をしておしゃべりの声を遮断しようとしますが、とにかく4平方メールくらいの範囲に10名前後がひしめき、しゃべりまくるのでレーシングカーのエキゾーストノートさえかき消してしまいそうな音量です……。輪になって翌日の朝刊用の編集会議もその場で行っていたので少し見学させてもらったのですが、なんと誌面の割り振りは手書き! 思わず写真を撮らせてもらいました。
現場の取材から戻るとまさかの……
そんなおしゃべり好きな彼らとも、レースの残り数時間は、誰が一体勝つだろう? と一緒になって予想してみたり、あれやこれや言いながらゴール前のひとときを過ごしたのでした。私は一旦自分の席を離れ、パドックをウロウロしていたのですが、帰ってくると……ナニナニ? 私の隣席の机の上には色んな食べ物が並んでいます。なんとこの新聞社の方々が集ってワインで宴会中でした。
「一杯一緒にいかが?」とお声がけ頂いて、私もこの仕事人生初めてのメディアセンターでの宴会を楽しみました。私も好物のリエットというル・マン地方の名物である豚肉のパテがあり、クルミパンにたっぷり塗って頂きました。リエットは赤ワインにもよく合い、たまらないおいしさでしたが、残念ながらエスプレッソ用の小さい紙コップの半分ほどでストップ。
いろいろありはしましたが、異国のレース、異国の同僚らと楽しいひと時を過ごせたのはとてもいい思い出です。ピーチクパーチクうるさかったのは、この際目をつぶりましょう! この数時間後には表彰式や記者会見を取材し、彼らは朝刊用の記事作成に入り、やっと少し静かになりました。来年は何かドイツか日本から宴会用のおつまみを差し入れしようかと思ったのでした。
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