最新のBMW製プレミアムSUVたちを、同時にロードテスト。クリーンディーゼルが持つ可能性は、まだまだ広がりを見せてくれるように思えた。(Motor Magazine2021年9月号より)
キビキビとして小気味いいX6
電動化は、もはや全世界的なトレンドとして定着しつつある。一方で、内燃機関を「延命」するための技術的革新や創意工夫もまた、その勢いが衰えることはないようだ。今回、乗り比べた2台のSUVは、BMW製クリーンディーゼルユニット搭載車としてのイメージリーダー的存在だ。
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一方で、スペック以上にその味付けが異なっていることが、とても興味深かった。3列シートを備えたプレミアム7シーター「X7」と、流麗なシルエットが自慢のクーペ「X6」では、外観の印象が異なっていることはもちろんだが、走行フィーリングはそれぞれさらに際立つ個性を持っている。
X6、X7ともに搭載されるのは、3L 直6 DOHCディーゼルツインターボである。型式はB57D30B型と共通だが、スペックはかなり異なる。「35d」のグレード名が付くX6は最高出力が286ps、最大トルクは650Nmを発生。これだけを見れば十分にパワフルな仕様だが、X7「40d」のユニットはさらに強力で、340ps/700Nmに達する。
どちらも48Vのマイルドハイブリッドテクノロジーを採用。スタータージェネレーターは、加速時に電動駆動システムとしても機能する。アシスト時の力はささやかなものではあるが、もともとトルクフルなディーゼルユニットとの相性は非常にいい。
とくに、X6 35dはそのキビキビと小気味いい加速感が、とても好印象だった。ゼロ発進からの立ち上がりや中間加速時のアクセルペダルの踏み込みに対するリニア感が優れている。車両重量が2500kgを超えるX7に対して、10%以上(270kg)も軽いのだから当たり前なのだけれど、それ以上に1500-2500rpm(X7 40dは1750-2250rpm)というより広いレンジで最大トルクを発生し続けるマネジメントが、差をつけているように思えた。
X6は、身のこなしも軽快だ。上級仕様としてV8 DOHCツインターボを搭載したM50iが設定されているのだが、街乗りレベルでの機動性はクリーンディーゼルモデルが上回っているだろう。
贅沢感の中にもあふれるX7の「冒険者」魂
パーソナル感が魅力のX6に対して、X7は極上のマルチパーパス感が見た目でも走りでも際立つ。キビキビ感こそ控えめだけれど、あらゆる速度域でたっぷりとした力感を伴った加速感を味わうことができる。高めの着座位置と合わせて、「上から目線」でゆうゆうと流す姿が似合う。
乗り心地は、見た目以上に引き締まった印象だ。とくに走行モードでSPORTを選ぶと、やや角は感じられるものの、しなやかな乗り味が楽しめる。逆にひとり乗りでCOMFPRTやECOに設定すると、路面状況によっては軽い揺り返しを感じることがあるかもしれない。今回は残念ながら試す機会がなかったが、多人数乗車で十分な荷重がかかった時の乗り心地も、折を見て確認しておきたいところだ。
多様化が一気に進んでいるプレミアムSUVというジャンルにあって、BMWが提示してきた「らしさ」は、硬軟ともに甲乙つけがたい完成度を誇っていた。(文:Motor Magazine編集部 神原 久/写真:井上雅行)
BMW X6 xDrive35d Mスポーツ主要諸元
●全長×全幅×全高:4945×2005×1695mm
●ホイールベース:2975mm
●車両重量:2240kg
●エンジン:直6DOHCディーゼルターボ+モーター
●総排気量:2992cc
●最高出力:210kW(286ps)/4000rpm
●最大トルク:650Nm/1500-2500rpm
●モーター最高出力:8kW(11ps)/10000rpm
●モーター最大トルク:53Nm/400rpm(原動機始動時)、35Nm/2500rpm(原動機アシスト時)
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:軽油・80L
●WLTCモード燃費:12.4km/L
●タイヤサイズ:前275/45R20、後305/40R20
●車両価格(税込):1081万円
BMW X7 xDrive40d Mスポーツ主要諸元
●全長×全幅×全高:5165×2000×1835mm
●ホイールベース:3105mm
●車両重量:2510kg
●エンジン:直6DOHCディーゼルターボ+モーター
●総排気量:2992cc
●最高出力:250kW(340ps)/4400rpm
●最大トルク:700Nm/1750-2250rpm
●モーター最高出力:8kW(11ps)/10000rpm
●モーター最大トルク:53Nm/400rpm(原動機始動時)、35Nm/2500rpm(原動機アシスト時)
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:軽油・80L
●WLTCモード燃費:11.9km/L
●タイヤサイズ:285/45R21
●車両価格(税込):1286万円
iXの登場で、BMWのICE(内燃機関)に匹敵する高性能BEVへの挑戦が始まる
前後に2基のモーターを搭載。日本導入は2021年秋
i3でEV界の先達となったものの、ここ数年はこの分野でやや遅れていた感じがあったBMW。しかしそれは「パワー・オブ・チョイス戦略」に基づきICE、PHEV/HEVそしてEVと広い選択肢を提供していたから。そして今回、本格的な「iX」が全世界でほぼ同時に公開された。
前後に搭載された2基の電気モーターによるシステム出力は523ps(385kW)、最大トルクは765Nmを発生、Cd値0.25のクロスオーバーSUVのダイナミック性能は0→100km/hが4.6秒、最高速度は200km/hと発表されている。
鋭角的な面とラインを持つエクステリアデザインは際立った個性と新鮮さを持つ。とくに巨大なキドニーグリルと横長のLEDヘッドライトが立ちはだかる顔立ちは、プレステージ性が高い。ただし、好みは大きく分かれそうだ。
一方、インテリアは快適なシート、リサイクル素材を使ったトリムで質感も高い。キャビンは広々としており、まるでデザイナーズラウンジのような雰囲気が漂う。
ドライブモードは「パーソナル」「スポーツ」「エフィシェント」の3種が用意され、各モードはパワートレーンとシャシ、さらに走行サウンドが同調、パネルの色がそれに合わせて変化する。またコンソールには「D」と「B」の回生スイッチがあって、ワンペダルドライブも可能だ。
iXは最高速度までM50iを思わせる力強い加速を見せるが、あくまでも快適で、当たり前だがずっと静か。また7シリーズとほぼ同じ3000mmのホイールベースは滑らかな乗り心地と安定感をもたらす。
ほぼすべてが期待以上なのだが、やはり最後まで気になったのはエクステリアデザインだ。「自動車のデザイン」というよりも「建築物」のようで、優れたダイナミック性能を表現しきれていない。もちろん好き嫌いもあるが。
もっとも、先立って発売されたiX3はx3と同一、さらに今回、同時に発表されたi4は4シリーズと同一のボディを有しており、トラディショナルな自動車デザインを求めるユーザーもしっかりカバーしている。(文:アレキサンダー・オースルテン<キムラ・オフィス>/写真:キムラ・オフィス)
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みんなのコメント
とうの欧州自身が既にディーゼル見切って全面禁止方向、ちょっと前まで「環境への最適解は(日本のHVではなくて)クリーンディーゼル!」とか言ってたのも無かったことになってるのだが。
日本のバカ自動車メディア、ほんとオメデタイな!
いま欧州メーカーが日本にディーゼル攻勢かけてるの、アメリカの巨大タバコ会社が自国で売れなくなった90年代以降、代わりにアフリカや南米にタバコ売りまくったのと全く同じですからね。