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これぞメルセデス・ベンツ! GLA 200d 4MATIC試乗記

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これぞメルセデス・ベンツ! GLA 200d 4MATIC試乗記

メルセデス・ベンツの新型「GLA 200d 4MATIC」に今尾直樹が試乗した。かつての190Eを思い出した理由とは? おなじプラットフォームをつかったGLBとも較べた。

1980年代の190Eを思い出す

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2019年に販売されたメルセデスのうち、SUVはグローバルで約35%、日本国内では約20%を占めた。

SUVの伸び代が国内市場にはまだまだある。メルセデス・ベンツ日本がそう考えるのも当然で、さる10月上旬、SUVを全部集めた試乗会を神奈川県・大磯で開いた。

Hiromitsu Yasuiこの試乗会でGQは、GLA 200d 4MATICを選んだわけだけれど、このコンパクトSUVは、とってもいい感じのメルセデスだった。これぞメルセデス・ベンツ! という現代のスモール・メルセデスをあらためてご紹介したい。

長らくオウナーの平均年齢の上昇が悩みのタネだったメルセデスは、近年、若者受けを狙ってスポーティヴネスを打ち出したクルマをつくっていた。それは筆者が思うに、2012年、それまでのサンドイッチ構造をすっぱりやめて、宗旨替えを明らかにした3代目「Aクラス」以降の傾向で、あの3代目のAクラス、ワイド&ローのスタイル優先で、室内はクーペみたいに狭く、乗り心地はスポーツカーのように堅かった。

Hiromitsu Yasui最新のGLA 200d 4MATICは、そのAクラス、といっても現行Aクラスは2018年登場の4代目だけれど、をベースにしながら、それこそ、1980年代の「190E」を思わせるような、メルセデス・ベンツ本来のやさしい乗り心地を披露したのだ。

190Eだなんて書くと、お年寄り向けみたいだけれど、メルセデス・ベンツ日本が設定したGLAのターゲット層は「40代以上のアクティブな方(街乗りがメインで安心安全を重視)」だそうで、これは2020年6月、国内で同時に発表されたGLBのターゲット層とはやや趣が異なっている。GLBのそれは、「30~40代のファミリー層」「30~40代の独身男性(自分のライフスタイルを確立していて、アクティブ)」で、GLBのほうが若いのである。

筆者もそうだったけれど、若い頃は乗り心地に頓着しない。筆者も嬉々としてミニに乗っていた。まだ骨と骨のあいだの軟骨がいまほどヘタっていなかったのかも知れない。ぐるぐるぐるぐるグルコサミンとかセサミンとかシジミ習慣、マカとか、そういう広告がSNSにしょっちゅう出てきたり、あるいはそういう広告に目がいったりする今日この頃。

ということはさておき、メルセデスのディーゼルで4WDのコンパクトSUVがほしいとお考えの方に、選んで間違いのない1台である、と申し上げたい。いまのところ、この要件を満たすのはGLAしかない、ということもあるのですけれど。

そう。GLBの200d、すなわち2.0リッター直列4気筒ディーゼル・ターボ搭載モデルは、駆動方式がFWD(前輪駆動)で、4MATIC、すなわち4WDの設定がない。4MATICを欲すると、GLBはガソリンの2.0リッター直列4気筒ガソリンターボの250を選ばざるをえない。

Hiromitsu Yasuiしかし、それはGLB 250 4MATICスポーツという名前が示すように、足まわりが「スポーツサスペンション」になっていて、目地段差でガッツンガッツン突き上げがある。若人はこれを“リア充”だととらえることができる。しかし、世の中にはこれを是としない若人ではないひとびともいて、あいにく筆者もそのひとりなのである。

GLAもGLBも、200dは「コンフォートサスペンション」で、タイヤ&ホイールは18インチ、AMGラインを選ぶと19インチになるのはおなじ。けれど、GLB 250 4MATIC スポーツに限って、235/45の20インチに大型化する。「スポーツサスペンション」で、やや車高が低くなり、20インチの扁平タイヤという出立だからスタイリッシュで、ヤング&ヤング・アト・ハートなピープルはウェルカムであろう。しかし、世の中にはこれを是としない(以下同文)。

なので、「コンフォートサスペンション」で、AMGラインでも19インチにとどまっているGLA 200d 4MATICのほうが断然いい。ほんとうにぜんぜん違うのです。

GLAとGLBの違い

じつはGLAとGLBを前にして筆者が思ったのは、GLAは「なんて地味なんだろう!」ということだった。先代GLAにしてから筆者の記憶のなかではおぼろげだということもある。まして隣にGLBがある。オフロード4×4らしいはっきりした輪郭と存在感のGLBに較べ、GLAはいささか影が薄い。都会派のSUVクーペと呼ぶにはクーペっぽくもない。う~む。という感じ。

ところがです。走り始めると、そのやさしい乗り心地とメルセデス・ベンツならではのボディの堅牢感、ディーゼル・ターボ・エンジンのやさしいトルクの出方、強力なブレーキに、俄然、カタチまでよく見えてきた。勝手なことばかり言って、どーもすいません。 

Hiromitsu YasuiHiromitsu YasuiHiromitsu YasuiGLAとGLBがメルセデス・ベンツ日本にとって2020年の目玉だったことは疑いない。どちらも、Aクラスと同じ、エンジン横置き前輪駆動プラットフォームをベースとするコンパクトSUVのブラザーである。

ただし、GLBのホイールベースは2830mmと、Aクラスとおなじ長さのGLAよりも100mm長く、エンジン縦置きプラットフォームの、ひとつ上のクラスのGLCの2875mmに迫るサイズを誇っている。GLBは横置きのGLAと縦置きのGLCの間の小さからぬ空白を埋める重要な役割を担ってもいるのだ。

世界的に人気の、Gクラスを思わせる、本格4×4っぽい四角いカタチにくわえて、国内ではニッポン人が大好きな3列シートの7人乗りが標準だ。GLAにはない加点要素がふたつもある。

Hiromitsu YasuiHiromitsu YasuiHiromitsu YasuiGLBのほうがメルセデス・ベンツ日本もスポットライトが当たると見たのだろう。GLAが200d 4MATICの1グレードのみなのに対して、GLBは前述したように200dと250 4MATIC スポーツの2本立てとしている。

ちなみにその販売比率は65:35と、200dのほうが多い。200dは車両価格512万円、250は696万円と、250のほうが断然高いのだから当然だ。

話はここからが肝心である。ようするに筆者は、なぜGLBの200dには4MATICがないのだ、という疑問を呈してきた。しかして、メルセデス・ベンツ日本はGLBのラインナップをさらに充実させるべく、時期は未定ながら、200d 4MATICを導入すべく準備中だということが明らかにされた。

Hiromitsu YasuiHiromitsu YasuiHiromitsu YasuiHiromitsu Yasuiこの200dの4MATICがコンフォートサスペンションとなれば、これがいちばんよい、と筆者は推察する。ただし、車両価格はガソリンよりディーゼルの方が高いのが常識だから、700万円を超える可能性がある。

そうなると、GLA 200d 4MATICの502万円という価格はますますもって魅力的にピカピカと光り輝き始める。いや、筆者にはわからなかっただけで、そうならなくても、その魅力はピカピカと光り輝いているというべきか、2代目GLAの販売は「大変好調。(具体的な販売台数は申し上げられません)」で、約80%が試乗車と同様、AMGラインを装着しているという。GLAオウナーになる方々はよりスポーティなルックスがお好みなのだ。

AMGラインは、外観では前後サイドのスポイラーや19インチ のAMG 5ツインスポークアルミホイール等、内装では本革巻きマルチファンクションステアリング等を含む、28万円のオプションである。

完成度の高いディーゼル・エンジン

200dの2.0リッター直列4気筒ディーゼル・ターボは最高出力150ps/3400~4400rpm、最大トルク320Nm/1400~3200rpmを発揮する。1730kgの車重には十分だ。しかも、ギアボックス はAクラスより1枚ギアの多い8速デュアル・クラッチ式トランスミッションを組み合わせている。

1速増えたおかげで100km/h巡航は8速トップで1400rpm程度に過ぎない。これは最近の2.0リッターのディーゼル車より200rpmほど低い。つまり燃費に貢献する。巡航中、エンジンはたいへん静かで、そこからアクセルを踏み込むと、8速ギア固定のままでも加速する。ステアリングのパドルでマニュアル・シフトすると、電光石火で変速。ダウンシフトの際、ブリッピングが入らないのは、個人的には惜しいところだけれど、コモンレールのディーゼルでそれをやるのはむずかしいのかもしれない。その分、落ち着いたマナーだとも言える。

Hiromitsu YasuiHiromitsu YasuiHiromitsu Yasui4600rpmあたりから始まるレッド・ゾーンまで淀みなくまわり、しかもディーゼルとも思えぬ、なかなかいいサウンドを発する。

AMGラインを選ぶと、足まわりは「コンフォートサスペンション」から「スポーツコンフォートサスペンション」と称されるセッティングになり、最低地上高が202mmから179mmへと2cmほど低くなる。山道をちょこっと走ったところによれば、重心が2cm低い分だろうか、ロールはヨリおだやかで、ゆっくりしている。AMGラインではない、ピュア・コンフォートサスペンションだとどうなるのか? 興味があるところだけれど、冒頭記したように、このスポーツコンフォートサスペンション仕様のGLA200d 4MATIC(AMGライン)は、これぞメルセデス・ベンツの乗り心地を実現している。

Hiromitsu YasuiHiromitsu Yasui可変ダンピングは備えていないのに、センターコンソールの「ダイナミックセレクト」のスイッチで、コンフォートからスポーツに切り替えると、乗り心地が硬くなったような気がしたのは、エンジン、ステアリング等のレスポンスが上がって、クルマ全体がタイトに感じられたためかも知れない。

電子制御の前後トルク配分は、コンフォート/エコモードでは80:20、スポーツで70:30、オフロードで50:50となる。ドライの舗装路面だったせいか、コンフォートとスポーツでのトルク配分の違いは正直なところよくわからなかった。車検証に見る前後重量配分は59:41とフロント・ヘビーで、それに伴い前輪へのトルク配分も多くなるはずだ。いずれにしても、前輪駆動っぽく安定して走りやすい、ということは言える。

Hiromitsu Yasuiというわけで、GLBの4MATICをお求めの方は、GLAも試乗されてはいかがでしょう。どうしても7人乗りが必要な方に、無理にとは申しません。GLB 200dの4MATICをお求めの方は、しばしお待ちください。果報は寝て待て、です。

さらに、もっと速いGLAをお求めの方は、年内にGLA 35 4MATICとGLA 45S 4MATIC+のAMGモデル2台が上陸する。35は306ps、45Sは421psのモンスターである。

くわえて、GLAにもGLBにも1.4リッター直列4気筒ガソリン・ターボ、136psの180の導入を検討中だそうで、メルセデス・ベンツはベーシックなガソリン、ディーゼルから超高性能AMGモデルまで、コンパクトSUVでも盤石の布陣を敷こうとしている。スリー・ポインテッド・スターにとっては当たり前のことかもしれない。けれど、ここんちほど徹底的にやりきっている自動車メーカーはここんちしかない。

文・今尾直樹 写真・安井宏充(Weekend.)

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