クルマがモデルチェンジを果たす際、誰もが注目し期待するのが、デザインがどのように、どれだけ変わったか、だろう。
しかしこれは本当に難しい問題だ。新たなモデルを生み出す側としては、前モデル(あるいはそれより先代)のイメージを損なわないよう継承しつつ、新しい部分も見せなければならない。
混ぜるな危険!! レギュラー指定にハイオクを、ハイオク指定にレギュラーを入れてはいけない事情
結果、あまりの変わらなさに「大丈夫か??」なんて声が飛び出したりもすれば、三菱デリカD:5のようにマイナーチェンジながら大胆に変貌を遂げしかもウケがいい、なんてケースだってある。
ここでは、そんなデザイン面での「いいモデルチェンジ・うーんなモデルチェンジ」について考えてみたい。
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※本稿は2020年8月のものです
文/ベストカー編集部、写真/ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』 2020年9月10日号
■「代わり映えがしない」は悪なのか
せっかくフルモデルチェンジしたのに、「なんかあんまり変わり映えしないな~」って思っちゃうクルマがある。
最近だとハスラー。よく見りゃサイドのリア回りやら違うんだけど、パッと見た印象がそっくり。もちろん、それが狙いってことはわかっちゃいるけど……。
スズキ ハスラー(旧)
スズキ ハスラー(新)…リアドアの後方、Cピラーが大きな違いで、さらに新型のホイールベースは35mm長い!
N-BOXやタントもパッと見、ほとんど「間違い探し」ですよ、実際。
ホンダ N-BOX(旧)
ホンダ N-BOX(新)…フロントフェンダー上部のアーチ形状の違いと、ボンネットフードの開口ラインが新旧の識別点となる
ディテールは違っているし、むしろ「見た目の印象を変えずに新しさを出す」のって、デザイナーとしてはものすごく大変で、腕の見せどころなんだろうけど、乗り換えようかと迷うユーザーにしてみれば、「うーん、新味がない!」って思っちゃう。
そんなモデルチェンジを「キープコンセプト」なんていうけれど、ここでいうコンセプトはデザインコンセプトのこと。
いっぽう、車両コンセプト自体は「キープコンセプト」ながら、ガラリとデザインを変化させてくるクルマもある。マーチなんかそのパターンの代表格だ。
日産マーチ(初代:1982~1992年)
日産マーチ(2代目:1992~2002年)
日産マーチ(3代目:2002~2010年)
日産マーチ(4代目:2010年~)…初代登場は1982年の日産マーチ。38年も経つのにまだ4代目という、各モデルのライフの長さも特徴的。1モデル10年程度というモデルチェンジサイクルのためか、時代に合わせて各世代、デザインはガラリと変わっている
マーチ、1世代のライフが10年程度と長いこともあるんだろうけど、各世代、見た目の連続性を感じさせない。
コンパクトハッチバックという基本コンセプトは維持しながら、毎度モデルチェンジのたびに先代のイメージを打ち消すかのようにガラリと雰囲気を変えてくるのはお見事だ。
■時代を反映するモデルチェンジも
デザインがガラリと変わっても、例えばシビックのように、ポジションというか、クルマの基本コンセプトが時代とともに変化していったクルマは、そりゃデザインどころかサイズや車形自体が変わったんだから「別のクルマ」。
インサイトなんて、3世代あるけど、それぞれ基本コンセプトが違うんだから、まったく違ったクルマになって当然ってこと。ありゃ、名前だけが同じで、モデルとしては別ものだ。
ホンダ インサイト(初代:1999年登場)…インサイトは3世代のモデルに使われているが、現実的には各世代、それぞれコンセプトがまったく異なっており、→
→しかも「モデルチェンジ」ではなく、各世代が違うモデルとして誕生し、「インサイト」という同じ名前が与えられているということ。世代ごとにいったん名前は途切れているし……(写真は2代目:2009年登場)→
→初代は2ドアハッチバックの燃費追求スペシャルモデル、2代目はプリウス対抗の5ドアHB、そして2018年に登場した現行型は4ドアサルーンとなった(写真は3代目:2018年登場)
そんななか、基本コンセプトを比較的キープしながらも、デザインのイメージをうまいこと変化させているのが最近のトヨタ車に多い。
クラウンやカムリ、ハリアーなどは見た瞬間「おッ、新型!」と思える変化を見せている。
トヨタ カムリ(旧)
トヨタ カムリ(新)…新型は圧倒的にスタイリッシュだ!
トヨタ ハリアー(旧)
トヨタ ハリアー(新)…新型はグリルが薄くなった
クラウンは印象的なグリルを採用するフロントマスクこそ先代を受け継いでいるが、ラウンドしたルーフの低さや、6ライトのサイドビューなど、これまでのクラウンとの違いをアピールしている。
トヨタ クラウン(旧)
トヨタ クラウン(新)…顔は似ているけどCピラーのラインが違う!
■対照的だったフィットとヤリスのモデルチェンジ
4代目となるフィットはこれまで3代、約20年にわたりキープコンセプトのモデルチェンジをしてきたが、今年登場した4代目は見た目の雰囲気をガラリと変えた。
ホンダ フィット(初代:2001~2007年)
ホンダ フィット(2代目:2007~2013年)
ホンダ フィット(3代目:2013~2020年)
ホンダ フィット(4代目:2020年~)…初代デビューは2001年で、最近登場した現行型が4代目。センタータンクのフラットフロアでダイブダウンするリアシートというユーティリティを追求する基本コンセプトは一貫しているが、デザインは変化した
一見して新型フィットとわかるエクステリアだが、「ユーティリティを追求したコンパクトカー」という車両コンセプトは初代以来不変である。
一方ヤリスは、先代までのヴィッツ、さらにそれ以前はスターレットだった名称を一新するとともに、ニッポンのコンパクトカーに欠かせないユーティリティ性をあえて捨ててスポーティ性に割り切った。
トヨタ ヴィッツ
トヨタ ヤリス…意外と似ている!?
つまり車両コンセプトを一新し、名前も変えたんだけど、なーんか、パッと見た雰囲気が前型ヴィッツに似ているんだよね。
いや、ヴィッツとヤリスは全然違うんだよ。それはわかっているんだけど、一瞬「あれ、今のヤリス? ん? ヴィッツだった?」ってなる。
フィットは一発で新旧見分けられるもん。
どっちがいいって話じゃないけど、やっぱり新型に乗るんだったら「おっ、新型もう乗ってる!」って注目されたいってのが本音だな。
■変えようがない?? MINIシリーズの不変性
これまた見分けが難しいMINI。もっともクラシックMINIをオマージュした造形こそが現代のMINIなのだから、変えようがないというのが実際のところ。フロントグリルなど、デザインの洗練度は先代のほうが高いかな。
MINI(旧)
MINI(新)
■ポルシェ911は変わらないことが魅力!?
930型や964型時代には「違い」がわかりやすかったポルシェ911だが、ここ最近の997→991→992型になると、ちょっと見分けが難しくなってきた。ま、この形こそが「ポルシェ911」なんだけどね!
ポルシェ 997
ポルシェ 991
ポルシェ 992
■カローラはある意味原点回帰のフルモデルチェンジ
全幅が1700mm以上に拡幅され3ナンバーとなったり、ラウンドしたルーフラインなど大きくイメチェンしたカローラ。でも、ある意味、カローラの基本コンセプトって「若者に向けた走りのいいクルマ」だったはず。原点回帰かもしれない。
トヨタ カローラ
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