日本発装置の国際標準化
少々前の話になるが、2025年6月、自動車のペダル踏み間違い時加速抑制装置が国際基準として正式に採用された。国連自動車基準調和世界フォーラム(WP.29)で発効したものだ。
この装置は日本発の安全技術を基盤としており、世界の自動車安全性向上に寄与すると期待されている。国際標準として認められたことは、日本の自動車産業にとって技術的優位性を示す機会であり、海外市場における競争力の強化にもつながる。
ペダル踏み間違い時加速抑制装置は、AT車でアクセルとブレーキを踏み間違えた際の事故被害を抑える機能だ。アクセルとブレーキは横並びで配置されており、ドライバーが減速や停車を意図してブレーキを踏むとき、誤ってアクセルを踏み込んでしまうケースがある。特に強くブレーキを踏む感覚でアクセルを踏むと、車が急発進し、店舗や歩行者に被害を及ぼす事故につながることがある。
国内ではAT車の比率が9割を超えており、踏み間違いによる事故は依然として起きやすい状況だ。MT車ではクラッチペダルがあるため同様の事故は少ないが、世界的にはAT車の普及が進む中で、国際基準化は日本発技術の市場価値を高め、海外メーカーにとっても導入の動機となる。
日本メーカーは国際的な安全基準を先取りすることで、技術リーダーとしてのポジションを確立できるだけでなく、輸出戦略や海外販売拡大の追い風となる可能性もある。
池袋事故が浮き彫りにした課題
アクセル踏み間違いによる事故は国内でも以前から発生していたが、社会の注目を集めたのは2019年の「池袋暴走事故」だ。当時87歳のドライバーがアクセルとブレーキを踏み間違え、交差点に進入した結果、母子ふたりを含む10人が死傷した。
加害者側の対応や態度も問題となり、事件は社会現象化した。当初、加害者側は車の誤作動による急加速を主張したが、裁判で踏み間違いが認定され、刑が確定した。
この事故は高齢ドライバーの
・認知機能低下
・操作ミス
といった課題を浮き彫りにした。事故を契機に高齢者の免許返納が増加したことは、国内の交通市場における需要構造や運転人口の変化を示す指標とも言える。
事故後、国内メーカーはペダル踏み間違い防止機能の開発を急速に進めた。トヨタはわずか1年で開発を完了し、2020年に新型車へ導入した。他の国産メーカーも追随し、現在では9割以上の新車に同機能が搭載されている。
こうした迅速な対応は、社会的課題を技術的解決策に変換する能力を国内メーカーが持つことを示す。事故の教訓を車両機能に反映させたことで、安全性の向上と同時に、メーカーのブランド力や技術力のアピールにもつながっている。
また、高齢化社会にともなう事故リスクや安全装置の需要増は、国内外での自動車販売戦略や技術開発方針に影響を与える重要な要素となる。
ドライバー認識を支える警報機能
ペダル踏み間違い時加速抑制装置は、どのような機能を備えるのか――。
国土交通省は国内義務化にあたり、明確な要件を定めている。急発進抑制では、障害物の手前1.0mおよび1.5mで、停止状態からアクセルをフルに踏み込んだ場合、障害物に衝突しないこと、もしくは衝突時の速度が8km/hを超えず、障害物がない場合に比べ30%以上速度が低下していることが求められる。ドライバーへの警報については視覚的表示が必須で、機能解除中の状態を明示し、復帰条件も示す必要がある。
急発進抑制の条件は厳格であり、アクセルを強く踏み込んでも大きな被害が発生しない仕組みになっている。衝突を避けることが最優先だが、万が一の衝突でも速度を抑え、被害を最小化する構造だ。視覚警報や解除条件の明示により、ドライバー自身が踏み間違いに気づきやすくなる。
国内メーカーはすでに独自の同等機能を搭載していたが、義務化により国内外の全メーカーが対応を迫られる。これは安全装置の普及にとどまらず、日本市場での車両開発や販売戦略に影響を与える大きな要因となる。
海外メーカーにとっても、日本で販売するためには安全基準を満たす必要があり、開発や搭載コストを踏まえた販売計画の見直しを余儀なくされることになる。さらに、視覚警報のようなドライバー支援機能は、ユーザー体験や運転の安心感を高める要素として、車両価値の差別化にも寄与するだろう。
国内メーカーの迅速対応
これまで交通事故による被害は後を絶たず、重大事故が起きるたびに被害者の家族は再発防止を訴えてきた。自動車事故の多くはドライバーの操作ミスに起因するため、再発防止策は主に啓蒙活動が中心だった。
しかしペダル踏み間違い事故は、社会問題化を契機に非常に速いペースで車の機能として反映された例だ。ヒューマンエラーを車両機能に組み込み、新型車に迅速に浸透させた国内メーカーの取り組みは、技術力と市場対応力の両面を示している。
この取り組みは、安全性を高めるだけでなく、メーカーのブランド力や競争力を強化する効果もある。事故の教訓を素早く技術化する能力は、国内メーカーがグローバル市場で技術リーダーとしての地位を維持するうえで重要な要素となる。さらに、古い車向けには後付け用の装置も販売されており、消費者が安全性向上に積極的に取り組むことで、市場全体の価値向上にもつながる。
とはいえ、装置があってもドライバーの不適切な操作次第では事故は起きる。啓蒙活動や注意喚起は依然として重要であり、技術と意識の両面から事故防止を進める必要がある。悲惨な事故を防ぐためには、ドライバー自身の責任と意識の向上が、今後ますます求められるだろう。(鳳つくも(自動車ライター))
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みんなのコメント
出力特性が暴走を生み出している側面もあると思うぞ