強すぎるN-BOX!! スペーシアが誕生から10年を迎えるが、未だ販売台数で勝てた年はないという状態。だが、SUV風のギアなどを追加し新たな顧客を獲得するなど、大健闘している。スペーシアは何が足りないのか!? 勝つにはどうしたら!?
文:青山尚暉/写真:ベストカーWeb編集部
打倒N-BOXで10年!! スペーシアはどうすりゃ勝てる!?
■N-BOX一強かと思いきや……スペーシアも大健闘中!?
王者N-BOXもライバルに負けじと地道な改良を実施中。モデル途中で内外装と先進装備強化など全方位で進化し続けているのだ
ホンダのスーパーハイト系軽自動車のN-BOXの快進撃が止まらない。何しろ2017年8月に登場した2代目は、いきなりスタートダッシュ。軽自動車販売台数NO.1の常連であり、直近2022年度の登録車を含む国内販売台数でもNO.1を獲得しているのだ。
2023年2月の軽自動車販売台数を見ても、N-BOXは1万9652台を販売。ここのところライバルであるダイハツ タントの1万2743台、スズキ スペーシアの9790台、日産ルークスの9140台を大きく凌いでいる。
コロナ禍、半導体不足で新車の販売がガクリと落ちた2022年の5月には、打倒N-BOX!! のスペーシアが健闘。販売台数は8670台と落ち込むものの、2位のN BOXの8631台を僅差でリードし、念願の軽自動車販売台数1位を獲得している。
■一方スタート価格とラインアップはスペーシア強し!! この差は一体……
SUV風のギアに商用モデルのベースの追加など、クラス随一のラインアップもスペーシアの魅力!! しかも唯一のマイルドハイブリッドも採用
とはいえ、2022年1~12月の年間乗用軽自動車販売台数では、1位のN-BOXの20万2197台に対して3位につけるスペーシアは10万206台と、N-BOXの半分ほどでしかない。
では、スーパーハイト系軽自動車というと同カテゴリーのクルマで、N-BOXとスペーシアはどうしてそこまでの差が、カスタム、ギア、商用車のベースというより多くのラインナップを持ちながら開いてしまうのだろうか。
これまで、何度となくN-BOXとスペーシアの比較試乗を行ってきたが(もちろん、タントやルークスも合わせて)、N-BOXに対するスペーシアの商品力は決して負けていない。
一部装備の充実度や走行性能でもなかなかの出来栄えであり、カスタム系の顔つきに至っては、もはやスペーシアのほうがグリルが巨大で立派に見えるほど。
価格的にもマイルドハイブリッドを採用していながらスタート価格はN-BOXの144.87万円に対してスペーシアが139.48万円とリーズナブルなのである。
スペーシアがN-BOXに対して販売台数で敵わない(2022年5月は除く)理由のひとつとして挙げられるのが、販売店の数。ホンダの販売店に対してスズキの販売店はほぼ半数にすぎない……。
■サイズもほぼ一緒も最大の差は後席にアリ!? 広さ座り心地ともにN-BOX優勢
簡単操作のチルトアップ機構など手軽なシートアレンジもN-BOXの強さの秘訣!! なにより後席のかけ心地がイイのだ
ここでN-BOXとスペーシアの室内パッケージを比較してみると、身長172cmの筆者のドライビングポジション基準で、前席頭上(前席シート位置最下端)はN-BOXが290mm、対するスペーシア320mm。
後席頭上はN-BOXが250-260mm(シートスライド位置による)、スペーシアは270-280mm(シートスライド位置による)、膝周り空間はN-BOXが最大420mm、スペーシアが最大340mmとなる。
どちらもスーパーハイト系軽自動車ならではの大容量の室内空間の持ち主だが、ここで注目すべきは後席膝周り空間だ。
N-BOXがより余裕があり、販売店でスライドドアを開けた瞬間、後席スライド位置が最後端にセットされていれば、後席の広さにより感動できることになる。
また、後席のかけ心地はN BOXが優れている。ソフトでソファ的かけ心地なのに対して、スペーシアは座面、背もたれともにやや平板なかけ心地となるのだ。
ホンダ独創のセンタータンクレイアウト採用のN-BOXは、後席スライド位置最後端でもシート下は空洞で、足が引けて、立ち上がり性に優れているのも大きな特徴。
スペーシアなどほかのスーパーハイト系軽自動車は後席下に燃料タンクがあり、その出っ張りによって、後席後端位置では足が引けず、足腰が弱った人を含めた立ち上がり性で劣ってしまうのである(シートを前出しすれば解決する)。
一方で、N BOXになく、スペーシアに用意される装備のひとつとして、天井のスリムサーキュレーターがある。大空間で窓の面積も大きいだけに、とくに暑い時期の後席の空調環境としては、スペーシアが優位になりそうだ。
■よりフラットなのはスペーシアもラゲッジの開口部は断然N-BOX
スーパーハイト系軽自動車は自転車などの積載も可能で、その大容量空間を生かし、アウトドアにもうってつけのクルマ、軽自動車と言っていい。
荷物の積載性を見ると、ラゲッジルームの開口部地上高はN-BOXが驚異の低さの480mm。スペーシアは自転車の車輪ガイド(開口部の凹み)があるのが特徴だが、開口部地上高は540mm(自転車車輪ガイド部は510mm)と、パッと見にも、スペーシアのほうがラゲッジルームのフロアは高く見えてしまう。
とはいえ、540mmでも世界のステーションワゴンの平均値、620mmよりずっと低いのだが。
よって、重い荷物の出し入れがしやすそうに見えるのはN-BOX。ただ、後席を格納して、ラゲッジルームを拡大したときのフラット度ではスペーシアが上である。
■電子パーキングなどN-BOXは先進装備で大幅リードもスペーシアも負けてないゾ
モデル途中で電子パーキング&オートホールド機能を採用したN-BOX。タントも同様となっており、この機能がないのはスペーシアだけ
今ではクルマ購入のひとつのポイントとなる先進運転支援機能については、N-BOXがいち早くACC(アダプティブクルーズコントロール)を含むホンダセンシングを全グレードに装備し充実を図ってきた。
しかも、N-BOXは今や電子パーキングブレーキ、オートブレーキホールド機能まで搭載。スペーシアもACCを追加装備したものの、依然、スズキ全車に電子パーキングブレーキとオートブレーキホールド機能は付かない。
それが選択肢の絶対条件とはならないだろうが、ホンダとスズキのお店で競合商談したとすれば、ホンダのセールス氏はそのあたりの優位性をアピールしてくるに違いない(実際、電子パーキングブレーキとオートブレーキホールド機能はあると実に便利で快適になる)。
走行性能、燃費性能では、スペーシアはマイルドハイブリッドを採用。N-BOXは非ハイブリッドのエンジンしか持ち合わせていないものの、燃費性能に極端な差はない(NAエンジン/FFの場合、N BOXは21.2km/L、スペーシアは22.2km/L)。
ただし、スペーシアも文句なしの操縦安定性、乗り心地、快適性を誇るものの、最新の熟成の極みと言えるN-BOXの乗り味は、もはや下手なコンパクトカーを凌ぐレベルにあり、このあたりは両車をじっくり比較試乗してそれぞれの良さを確認してほしいところだ。
■打倒N-BOXには電子パーキングは必須!? 後席の改善を
そうした両車の比較から浮かび上がる、スペーシアの対N-BOXの必勝法としては、販売店数の拡張はともかく、商品力として今ではライバルすべてに装備される電子パーキングブレーキとオートブレーキホールド機能の追加装備はライバルとの比較材料として必須(コスト高の吸収が急務か)。
そして、口コミなどでも言われる高速走行時の安定感、安心感をさらに高めることや、N-BOXに迫るエンジンフィールの気持ち良さ。さらに車内の静かさ、後席のより良いかけ心地の実現が課題と言えそうだ。
とはいえ、販売店数でリードされるホンダ N-BOXはともかく、同じく日産のルークスより売れているのだから、スペーシアは十分に健闘しているとも言えるのだ。
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みんなのコメント
スズキはラインナップ豊富だから、1車種だけでN-BOXに張り合おうとしなくても良い。
そもそも販売目標台数が違うし、スペーシア目標達成してるよ。
スズキはバイトワゴンは複数ラインナップしてるので、
言うならスペーシア+ワゴンRとN-BOXじゃ無いか?
それなら勝ってる。