ポルシェとリマックの合弁会社が世に送り出す新生ブガッティ
ブガッティは2024年11月7日、最高出力1800psを誇る最新ハイパーカー「トゥールビオン」を日本初公開しました。380万ユーロ(約6億1822万円)という驚きの価格にも関わらず、すでに限定数の250台は完売済み。デリバリーは2026年にスタートする予定です。
【画像】「えっ…!」これが最高速度445km/hを記録するブガッティの最新モデル「トゥールビヨン」です(27枚)
ブガッティは、1909年にエットーレ・ブガッティが創業したスポーツカーメーカーですが、1963年には吸収合併により自動車製造から撤退。その後、1987年に復活し、「EB110」を世に送り出しますが、その1モデルのみで1995年には再び歴史に幕を下ろします。
現代のブガッティは、1998年にフォルクスワーゲンが再興を図ったハイパーカーブランド。2005年に発売された復活第1弾の「ヴェイロン16.4」は、ユニークなW16気筒クワッドターボエンジンを搭載し、最高速度400km/h以上を可能としました。
2016年には「シロン」へと進化したブガッティのハイエンドモデルですが、本記事でフォーカスする「トゥールビヨン」はその最新モデルとなります。
「トゥールビヨン」の発表会には、ブガッティオトモビルのプレジデント、クリストフ・ピオションさんを始め、開発に携わったヘッドオブ・エクステリアデザインのジャン・シュミッドさんなどの多くのスタッフが来日。メディアや顧客とコミュニケーションを図りました。
「トゥールビヨン」は、2021年にドイツのスポーツカーメーカー・ポルシェとクロアチアの電気自動車メーカー・リマックによって設立された合弁会社“ブガッティ・リマック”の手によるもので、新体制となったブガッティ初の作品として全面刷新が図られたことがうたわれました。
そのスタイリングは、現行モデルである「シロン」との共通性を感じさせるもので、一見、マイナーチェンジモデルにも思えるかもしれません。
もちろん、ブガッティのヘリテージである馬蹄型のフロントグリルや“ブガッティライン”と呼ばれるボディサイドのC字状デザイン、大胆なツートーンカラーなどのアイコンがしっかりと継承されていますが、その細部は大きく異なります。
新たなオマージュとして取り入れられたセンターラインを始め、空気の流れを最適化するフライングフェンダー、より絞り込まれたサイドビュー、「シロン」よりも33mm抑えられたルーフ、大型のリアデュフューザーなど性能追求により生まれたデザインが与えられ、400km/hを超える最高速を実現可能なエアロダイナミクスを実現しています。
もちろん、この機能的なデザインのアプローチは現代的なものですが、「スピードによって形づくられる」という概念は、ブガッティの伝統的なクルマづくりそのものです。
次世代の幕開けを告げる「トゥールビヨン」の開発では、創業者であるエットーレ・ブガッティの「唯一無二でなければ、ブガッティではない」という言葉を指針に、ブガッティのDNAを受け継ぎながら、新たな価値の創造が目指されたといいます。
その中で重視されたのが、100年先でも愛されるタイムレスなものとなること。その思いが最も表現されているのがコックピットです。
なんとメーターパネルは、600を超えるパーツで構成された機械式メーターパネルとなっており、スイス時計メーカー・コンセプトウォッチにより、機械式時計同様のつくりとなっているそうです。
デザイン担当のシュミットさんによれば、「トゥールビヨン」という車名にもつながる時計仕掛けのアナログメーターを採用するというアイデアは、長く愛されるクルマというテーマを話し合う中で生まれたものだといいます。
クルマにおいて、最も時の流れを感じさせるのはメータークラスターであり、「トゥールビヨン」はそれを機械式とすることで、機械式時計と同様、古さを感じさせず、長く愛用できるものとなって欲しいとの願いが込められています。
また、クルマからの情報を最小限とすることで、よりドライビングを楽しんでもらいたいというねらいもあるようです。
ステアリングポストに固定されるメーターパネルは、まるで高級時計のような華やかさが印象的。直感的に速度やエンジン回転数などをドライバーに伝えてきます。
さらにセンタークラスターには、エアコンやシフトなどの操作部のみが備えられており、最新モデルでありながらアナログ風のコックピットに仕上げられていることが分かります。
もちろん、スマートフォンとの連携などに必要なモニターは装備されていますが、その存在は巧みに隠されており、ボタンひとつでダッシュボード中央に出現するギミックが備えられています。
●システム全体の最高出力はなんと1800psをマーク
ブガッティの「トゥールビヨン」におけるもうひとつの象徴的アイテムが、新開発のパワートレインでしょう。
昨今のブガッティの伝統となっていたW型16気筒エンジンに別れを告げ、エンジンのスペシャリストである英国コスワース社の協力を得た全面新設計の8.3リッター自然吸気式V型16気筒エンジンにモーターを加えたプラグインハイブリッドに仕上げられています。
電気モーターを2個備えたフロントeアクスルに加え、リアアクスルにも電気モーターを搭載。エンジンの駆動は8速DCT(デュアルクラッチ式トランスミッション)を介して後輪のみに供給されるe-4WDとなっています。
驚くべきは、エンジン単体でもW16ターボに迫る1000psをたたき出すこと。さらにそこへ電動システムの800psが加わり、システム全体では1800psを発生します。
それにより、0-100km/h加速はわずか2秒。最高速度は445km/hとうたわれています。さらに、25kWhのリチウムイオン電池が満充電状態の場合、EVモードで60kmの航続が可能。つまり日常的な移動は電気モーターのみでまかなえてしまうのです。
そのほかシャシーも刷新され、前後サスペンションがマルチリンク式に変更されている点も見逃せません。
昨今のブガッティの面影を受け継ぎながら、よりシャープとなったスタイリング、ガルウイング化されたドア、後部に配置されたむき出しのV16エンジン、衝撃吸収機能を備える巨大なリアディフューザーなど、各部のディテールだけを切り取ると格段に獰猛な野獣へと変貌を遂げたように感じる「トゥールビヨン」。
しかし、上品なボディカラーに代表されるように、エレガントさも感じさせる新感覚のハイパーカーという側面も備えています。ブガッティというブランドが、美女と野獣という双方の美点を持ち合わせた存在であることが、「トゥールビヨン」のクルマづくりにおける指針となっていることがよく分かるポイントです。
ブガッティオトモビルのプレジデントであるピオションさんは「日本は、クルマを愛する文化のある市場です。現在、25台以上のブガッティが存在し、それらはすべて希少なモデルばかりです。
我々は、将来的に重要なマーケットのひとつとして位置づけており、世界中の顧客と同様、ユニークな体験を提供できるよう努めていきます」と、熱心なブガッティファンが存在する日本市場にも注力していくと明言しました。
ブガッティはこれまで、日本市場での納車予定など、各種情報を一切公表していませんでしたが、今回、これほど熱心なローンチイベントを開催したことからも分かるとおり、日本にも複数台の「トゥールビヨン」が上陸することが予想されます。
その姿を目撃できるのは2026年以降とのこと。そのすべてがユーザーの意向を反映したビスポーク仕様となるだけに、どのようなモデルを目にすることができるのか興味深い限りです。
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