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還暦過ぎたオヤジたちが「フォーミュラ」に挑戦! 本格レーシングマシン「VITA」購入で始まった「お達者倶楽部」の物語

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還暦過ぎたオヤジたちが「フォーミュラ」に挑戦! 本格レーシングマシン「VITA」購入で始まった「お達者倶楽部」の物語

「レースは人生、だからチェッカー受けるまでわからんよ」

 2月15日(月)、三重県・鈴鹿サーキットの南コースで、一台のフォーミュラマシンがシェイクダウンを行なった。シェイクダウンといっても新車ではない。随分と昔のモデルとなってしまったFJ1600マシンだ。フジムラ・レーシング・デベロップメント(FRD)のMF105である。詳細な年式は不明だが30年ほど前の車両である。 日本のレース界で、タイヤがむき出しのレーシングマシンであるフォーミュラカーとして、世界のF1レースへと通じるエントリーフォーミュラマシンとして生み出されたFJ1600は、1980年から始まったカテゴリーである。

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 搭載エンジンは、スバルの1600cc水平対向4気筒OHVエンジンEA71。市販のスバル・レオーネに搭載されていたものをリファインしたエンジンでのワンメイクのシリーズとなるが、そのフォーミュラの車体製作には国内コンストラクター各社が参入してきた。そして各地でシリーズ戦も行なわれ、1戦に70台80台のエントリーを数えるほど大いに盛り上がった。中嶋悟、片山右京、鈴木亜久里、田中実、野田秀樹…世界に旅立つドライバーを次々に産んでもいったFJ1600でもある。 この時代の数あるFJマシンの中でも存在を知らしめていたひとつFRDの「MF105」のシェイクダウンがこの日、それもFJ1600のレースを含め、国内モータースポーツが大いに盛り上がった1980年代に活躍したレーサーたちによって行なわれたのである。経歴はそれぞれ異なるものの、若かりし日にこのFJをはじめとするレース界のさまざまなカテゴリーの第一線で活躍した面々である。生活のためであったり、経済的な理由などからでもあったり、プロとして活動を続けることができなかったり、自ら引退を決めるなどしてレースの場から離れていったものの、生活に余裕のできた今だからこそ、とふたたびサーキットへ戻ってきたのだ。

 まずはこのメンバーで軽自動車での耐久レースに出ようということで、軽自動車の耐久シリーズ参戦に向けた準備も進めている面々は、このFJマシンのシェイクダウンを前に、近郊のミニサーキットで軽自動車の走行会にチームMRT(ムラタ・レーシング・チーム)として参加している。 この走行会に参加したのは、栗生敏之さん、流井和幸さん、山田勝治さん、皆川幸男さん、加藤佳宏さん、吉井士郎さん、村田敏治さんの7名。実に下は59歳から上は73歳まで、平均年齢は66歳という、まさに御達者倶楽部、である。 「軽自動車は難しい」とそれぞれで切磋琢磨しながら、ライバルとなる若手ドライバーの走りなどもチェックしたり、と走るからには真剣だ。さらに、その翌日にはサーキットのライセンス更新など、着々とレース復帰への感覚も取り戻しつつ、である。 そして、手に入れたもののしばらくメンバーのガレージに眠っていたこのFJ車両の整備が終わったということで、実際にサーキットへ持ち込んで走らせようということになったのだ。その車両の保管をしていた久保田敏一さんらが、前々日の軽自動車の練習会のメンバーに加わる形でチームに合流してきてもいた。 早朝から雨であったものの、昼前には雨は上がり、午後いっぱいにわたって走行を重ね、シェイクダウンと、各メンバーがしっかり走行練習を重ね、大きなトラブルもなくこの日の走行を終えた。

 予定されていた走行時間が終了し、車両をトラックに積んでサーキットを撤収すると、今度は鈴鹿サーキットにほど近い、鈴鹿市内にあるウエストレーシングカーズの応接室に面々は再び勢ぞろいした。 ウエストレーシングにあった当時のアルバムを見ながら、ワイワイとその当時を振り返り、昔話に花が咲く。そして、話は、この日最大の案件である「VITA-01」について、ということになっていった。

 VITA-01とは、日本のレース・コンストラクターのひとつであり古くから数々の名レースマシンを手掛けてきたウエストレーシングが製作するオリジナル車両。面々は古くからのFJマシンシェイクダウンだけでなく、これからのレース活動のマシンとしてVITA-01に興味津々、必然的流れで現場を訪れたわけであった。 現代の入門レースマシンのひとつでもあるVITA-01は、セミモノコックフレーム+スペースフレームのオリジナルシャシーに、トヨタヴィッツRSに搭載される1.5Lの1NZ-FEエンジンをリアに搭載(トランスミッションもヴィッツRSの5速マニュアル)。4輪には280mm径のベンチレーテッドディスクローターに4ポッドキャリパーを組み合わせた高性能ブレーキを奢る。また前後バンパーのサイドにはストラクチャーを設け、高い安全性を持つマシンである。

 車両は非常に軽量で、そのボディサイズは全長3712×全幅1600×全高1070(mm)、ホイールベース2200(mm)、トレッドは前1390/後1440(mm)。フロントフェイスには異なる3種類のタイプのカウルを用意してもいる。車両価格は税別355万円(タイヤとホイールは別)、という入門レースマシンだ。 入門用レースマシンという位置づけだが、現在、このVITA-01を使用したレースシリーズは、北は北海道の十勝スピードウェイから、ツインリンクもてぎ、筑波サーキット、袖ケ浦フォレストレースウェイ、富士スピードウェイ、鈴鹿サーキット、岡山国際サーキット、オートポリスと国内7つのサーキットで開催されており、海外でも中国とフィリピンでシリーズ戦が行なわれている。他にもKYOJO-Cup(競争女子選手権)やレジェンドカップにも使用されている人気のマシンなのだ。 実はこのメンバーも、昨年末に福井のタカスサーキットでVITA-01に試乗をしていた。メンバー皆で最新のレーシングカーに実際に乗ってみようということで、オフシーズンということもあって、レースに実際に使用していた1台をレンタルして走行体験をしたのだという。試乗をしてみると「これは本格的にやらなあかん」ということになって、まずは購入しようということで、この日の訪問となったのだという。「コロナが無かったらもっと早く購入していた」というほど、前のめりである。 この日は車両購入に際しての納車時期や疑問点などの確認ということで、メンバーそろっての、ウエストレーシングカーズ訪問であった。さっそく見積書を作ってもらい、タイミング的には、レースシーズン途中での納車となるようなところまでこぎつけたのだが、まずは練習をして、順調にいけば、来季には本格参戦もあるかも、という。

 昔のレース仲間にも声をかけているということで、このVITAをきっかけにまた昔の仲間とレースを楽しんでいければ、と盛り上がる。「もちろん若い連中には勝てないが、こういった楽しみがあることが一番」と面々は語る。

 レーサー・モータージャーナリストでレーシングスクールを開催していた故ポール・フレールの国内スクール一期生だったという久保田さんは、ポールが引退した歳まであと13年ある。腹筋・スクワット・腕立て伏せを毎日30回ずつ行なっているし、レーシック手術を受けたから視力はバッチリ、と語ってくれた。他のメンバーもまた体力作りにいそしんでいるとか…。

 これからの時代、こういった御達者倶楽部的なサーキット走行もそう珍しいものではなくなるかもしれない。

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みんなのコメント

5件
  • 楽しそう・・っていうか、目標(速く走りたいってのが)があるってのはイイ。
  • この年代の男性は、一部を除いては車好きであることが当然であったし、この歳でサーキット走行しようなんて思うぐらいだから、サーキットの基本的なライン取りなんかも知っているハズ。

    そう考えると、車への関心が薄く、車が趣味の2番目3番目やそれ以上というような若年層よりもラップタイムは良いかもしれない。

    頑張れ、還暦オヤジレーサー!
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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