ついに最終章を飾るLP780-4ウルティメが登場した、筆者にも思い出深い存在であるアヴェンタドール。2011年の発表以来、数々の変化を遂げた12気筒ミドシップスーパーカーだが、そのオーダー方法も激変している。その最大の要因である、特別注文システム“アドペルソナム”を、サンタガータで実際に経験した。
最も成功した12気筒ミドシップスーパーカー
クアトロポルテへの道(後編)──イタリアを巡る物語 vol.17
この7月、アヴェンタドールの最終章を飾るLP780-4ウルティメが日本でも披露された。クーペ350台、ロードスター250台、合計600台の世界限定車。アヴェンタドールの形をした限定車としては、ブランド50周年時のLP720-4アニヴェルサリオ(世界限定200台)、ミウラ50周年時のLP400-4ミウラオマージュ(同50台)、SVJ63クーペ&ロードスター(同63台ずつ)に次ぐ“少なさ”である。ちなみにSVはクーペ600台・ロードスター500台、SVJはクーペ900台・ロードスター800台で、これはアヴェンタドールの年間生産台数が約1000台であったことを考えても、真の限定モデルとは言いづらい数字だった。アッセンブリラインを独占していたわけだし。
いずれにしても2011年3月のジュネーブショーでデビューして以来、10年以上にわたってランボルギーニのフラッグシップを務め、世界のスーパーカーの頂点に君臨し続けたアヴェンタドールがいよいよ新車オーダーという大舞台から降りることになったというわけだ。
史上、最も成功した12気筒ミドシップスーパーカーである。日本で披露されたウルティメ(世界を巡回する展示車)の車体番号は10600。過去、最も売れた12気筒スーパーカーといえばフェラーリのテスタロッサで同じ車型の512TRやF512Mを入れても9855台で1万台に満たなかったから、アヴェンタドールが生産台数(12気筒ミドシップ)においてトップに立ったことは間違いない。
アヴェンタドールは筆者にとっても思い出深い存在だ。2010年、先代に当たるムルシエラゴの生産が終わると、サンタガータは次期型モデルについて少しずつ情報を公開しはじめた。パワートレーンの詳細を発表する、とか、テスト走行が始まる、といったスニークプレビューイベントに出席するため、新型コロナ禍の今となっては夢のような話だけれども、毎月のようにサンタガータ詣を繰り返したものだ。カウンタック以来、初めてシャシー&ボディからサスペンションシステム、パワートレーンまで全刷新となったから、メーカーの力の入れようも凄まじかった。
そしてデビュー前から確信していた。これは素晴らしいスーパーカーになる、と。
国際試乗会は確か11年5月のローマだったと記憶するが、車体番号200番台後半という超初期モデルを日本でテストしたのは同年9月のこと。日本での正式発表(同年11月29日)を前にナンバーをつけたグリジオエストーケの個体は筆者がオーダー体験したもので、当時は数種類のボディカラーとホイールカラー、内装の組み合わせと、リアのエンジンフードをガラスにするかしないか、程度のチョイスしかできなかったものだ。しかもやってきた個体は電動シートレスという、今となっては貴重な超初期型だった(モデナ近郊で起こった地震のせいでシート部品の供給が止まったため、というのが理由だった)。
新車オーダーの半数以上がアドペルソナムを活用
以来、10年間でアヴェンタドールのオーダー方法は激変した。最も大きな要因は特別注文システム“アドペルソナム”をサンタガータが構築し、推し進めたことにある。新車オーダーの半数以上がなんらかの形でアドペルソナムを活用するといい、12気筒フラッグシップのアヴェンタドールではその比率がさらに高まる。日本市場は世界でも稀に見る“シザースドア”愛好国なので、必然的にそのパーセンテージは一層上がっているはずだ。おそらく日本向けアヴェンタドールのほとんどがアドペルソナム仕立てではないだろうか。
もっとも初期の頃とは違って、アドペルソナムのオーダーシステムも年々体系化されてきた。突拍子もないワンオフオーダーが出てくるのはやはり稀というべきで、多くのオーダーを受けるうちに彼らもカスタマーの地域性や嗜好による好みのパターンを見出したに違いない。実をいうと完全にゼロベースで特別な仕様を自由にオーダーするなんてことは、なかなか難しいことである。なんでもできる、と言われると、かえって何もできなくなってしまうものだ。
そこでアドペルソナムではカスタマーの好みを5つのテーマ、SPORTIVA(スポーツ)、CONTEMPORANEA(コンテンポラリー)、ECLETTICA(革新)、CLASSICA(クラシック)、TECNICA(テクノロジー)に分類し、カスタムオーダーとはいえまずは御膳立てを整えて選びやすくするなど、工夫をはじめたのだ。また本社のみにあったアドペルソナムスタジオをニューヨークや東京で展開するなど、特注の物理的な敷居も下げた。そんなことが功を奏してカスタムオーダーが増えたというわけである。
アヴェンタドールがいよいよ最後になるかもしれない。そう感じはじめたのは2018年夏のペブルビーチで限定車のSVJが発表された時である。もう一度、オーダー体験してみたい。今度は憧れのアドペルソナムで。そこで筆者は10年前と同じように、正規ディーラー(ランボルギーニ福岡)を経営するRPMの入江公司社長に相談しサンタガータのアドペルソナムを訪問、SVJのオーダーを体験することになった。
サンタガータでSVJをオーダーする
2019年6月、筆者は晴れてサンタガータのアドペルソナムスタジオにいた。本社の正面を入って右手にウラカンとアヴェンタドールの最終アッセンブリラインの、左手に社員食堂の、それぞれ入った建物を眺めつつ進むと右手にアドペルソナム専用のスタジオが見えてくる。
無機質なファクトリーにあってその見栄えに特別な雰囲気はないけれど、扉を開けるとそこはファンにとって夢のような空間になっている。もっともその雰囲気の一端を今では東京・六本木の“ザ・ラウンジ”の地階で味わうことができるようになったのだが。
大きなモニターの前に座って、アドペルソナム責任者のプレゼンテーションを聞く。今回、アドペルソナムで仕立てるのはSVJクーペだったが、この場に臨む前にあらかじめ、コンフィギュレーションのおよその方向性を決めておいた。
どんな色に仕上げても目立つクルマであることは間違いない。ならば、色目は多少派手であっても、ディテールやインテリアをできるだけシックに仕立て、スポーティながらエレガントなSVJにしてみようと思っていた。アドペルソナムに来たからには、日本のディーラーではできない特別な相談もしたい。この時はまだ東京のラウンジがなく、アドペルソナムスタジオとオンラインで繋いでの本格的なコンフィグができなかったので、メニューやカタログにない仕様の可否をその場で聞くためにはサンタガータに来るほかなかったのだ。もちろん、ランボルギーニファンならば一度は本社に足を運んで(たとえさほど特別な仕様でなかったにしても)オーダー経験してみたいというのが本音ではあった。
この手のコンフィグでは通常、外装色から決める。インテリアよりもエクステリアの好みがはっきりしているパターンの方が圧倒的に多いからだ。筆者も2パターンを想定して臨んだ。1つは地味なグレー系、もう1色は抑え目のレッド系、いずれもアドペルソナむらしくルーフを黒系に塗り分けて、クーペだけどロードスターのように見える、流行りの2トーンカラーに仕上げようという魂胆だった。
まずはグレー系のメタリックを濃淡色々と検討し、さらにソリッドのグレーやマットのグレー、おまけに大好きなシャンパンゴールド系などのコンフィグを次から次へと大画面で見せてもらう。パソコンやディーラーの画面で見るよりは随分とイメージも掴みやすい。さらにスタジオ内には参考事例のアヴェンタドールSVJが飾ってあって、細かな検討もその場で可能だ。
SVJはエアロデバイスを中心に要所要所がブラックで締められている。そこをカーボンで仕上げるのが常套手段だが、グレー系との相性はそもそも良い。けれどもあまりに相性が良過ぎてSVJの“速いイメージ”がストレートに表現されてしまう。こちらとしては速いクルマなのだから、遅く見えて欲しいとは言わないまでも、どこか静的なエレガンスが欲しいと思っていた。グレー系にシャイニーカーボンを組み合わせるといかにも“速そう”、なのだ。
次にレッド系だ。フェラーリっぽい赤や、SVの赤メタリック、マットレッドなどさまざまな赤があって、どうしても好みの赤が見つからないというのであれば、具体的なイメージ(あのメーカーのあの色、とか、あの色のマット、とか)を伝えて新たに作ってもらうことももちろん可能だ。すでにアドペルソナムスタジオでは400色近い色が作られている。全く新しい色であれば自分でカラー名を付けることもできるので、ある意味“究極”のオーダーカラーとなるのだ。
ただし、そうなると1回の訪問で全てを決めることはできない。カラーサンプルのやりとりなどをしなければならず、仕様を決めるまでかなりの時間がかかってしまう。豊富なカラーパレットの中から好みの1色を選び抜き、そこに自分なりの工夫を加えた方が良さそうだ。
赤系とマット黒の2トーンがいい。そう決めるまで時間はさほどかからなかった。悩み始めるとキリがないことは経験上よく知っている。外装色を決めるだけで1年かかった人も過去にはいらっしゃった。このあたりは経験、といってもオーダーした回数だけではなく、いろんなコンフィギュレーションの個体を見た数、のなせる技だと自負する。結局のところコンフィグギュレーションは実物になった姿を想像する力もさることながら、さまざまな実物を見た経験の力がものをいうのだ。(vol.02へ続く)
文・西川淳 写真・Lamborghini S.p.A. 編集・iconic
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