現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 断じて「悔し紛れ」にいってるワケじゃない! 2世代古いヘッドライト「ハロゲンランプ」がもつLEDやHIDにはないメリット

ここから本文です

断じて「悔し紛れ」にいってるワケじゃない! 2世代古いヘッドライト「ハロゲンランプ」がもつLEDやHIDにはないメリット

掲載 60
断じて「悔し紛れ」にいってるワケじゃない! 2世代古いヘッドライト「ハロゲンランプ」がもつLEDやHIDにはないメリット

 この記事をまとめると

■かつては当たり前の装備だった「ハロゲンライト」のよさを解説

気がつけば消滅! 「明るい」「キレイ」で人気だった「HIDヘッドランプ」はなぜLEDに負けたのか

■ライトの色温度がLEDよりも低いので目に優しい

■発熱するので雪に強く交換作業も簡単に行えるというメリットもある

 LEDヘッドライトの採用が増え続けている

 スマホやパソコンの世界の技術の進化は日進月歩で、いまや半年も情報のキャッチが遅れると、取り返しが付かないくらいの遅れとなってしまうことも珍しくありません。クルマの業界もそれは同じで、15年くらい前までのヘッドライトは「HID(高輝度放電ランプ)」が主流でしたが、いまや軽自動車を含めて多くの車種に「LED」が採用されています。そして昨今では「レーザービーム」なんていう新たな方式のヘッドライトが登場しており、まだ高級車など一部にしか採用例はありませんが、順次下のクラスにも普及していくでしょう。

 そうして新型車には以前のものよりも高い性能を備えたものがどんどん採用されていき、古い技術のものは採用されなくなって廃れていくという大きな流れがあります。しかし、古い技術の製品が、すべての面で劣っているかというと、けっしてそうではありません。

 ここでは、世代でいうといまのLEDよりも2世代も前となってしまった「ハロゲンランプ」にスポットを当てて、そのよさを掘り起こしてみようと思います。

■自動車のランプの歴史で見ると、ハロゲンは新しいほうかもしれない

 はじめに、ザックリと自動車用ヘッドライトの歴史を振り返って見ましょう。

・アセチレンランプ

 最初に自動車用ランプとして実用化されたのは「アセチレンランプ」と呼ばれる燃焼型のランプでした。登場は1900年代初頭。原理はアルコールランプと同じで、燃料を燃焼させて発生した光で前を照らすというものです。アルコールよりはるかに激しい光を発するアセチレンを使用してレンズで収束させることで、それなりに実用性の高いヘッドライトだったようです。

・白熱球

 アセチレンランプの実用化から10年後の1910年頃には、電気をフィラメントに通して発光させる「白熱球」タイプのランプが登場します。ただ、この当時はまだダイナモ(発電機)が登場していなかったので、電気を溜める蓄電池を積んでその電力を使って照らしていたようです。

・シールドビーム

 徐々に自動車にダイナモが搭載されるようになり、電気式のランプが普及してくると、よりシンプルで頑丈な構造の「シールドビーム」が登場してきます。これは自動車のヘッドライトの用途に特化した形状とシンプルな一体型の構造をもっていて、省スペース性にも優れていたことから一気に各国のメーカーに採用例が増えていきました。

 登場は1940年ごろですが、それから30年以上にわたって自動車用ヘッドライトのスタンダードとして使われ続けていました。

・ハロゲンランプ

 一体型による交換のしやすさなどから広く普及したシールドビームですが、その原理は家庭の白熱電球と同じなので明るさはそこそこというレベルなのに加えて、フィラメントの劣化や振動による断線などで球切れとなるケースがそれなりの頻度で起きてしまうのが宿命でした。

 そこで1960年頃に新たに登場したのが「ハロゲンランプ」です。基本構造は白熱電球と同じですが、電球の中に封入したハロゲンのガスの効果でフィラメントの劣化が防げるようになったので、より高い温度で稼働させることができるようになり、明るさが格段に増しました。

 普及して性能が安定したころのハロゲンランプは、60Wの消費電力で、白熱灯の100W相当の明るさが出せるという売り文句で性能がアピールされていて、実際に装着した際にも段違いの明るさを見せていたので「あながち嘘ではないな」と評判になり、当時のカー用品店のヘッドライト関連コーナーの棚にはかなりの数の製品が並べられるほど人気を博していました。

 その後は2000年頃にHIDランプが登場し、ハロゲンランプは廃れてしまいます

 ハロゲンのいいところを探してみた

■ハロゲンランプに優位な部分はあるの?

 ヘッドライトの歴史を振り返ってみると、世代が変わるごとにその明るさは確実に向上しています。むしろその前方を照らすというヘッドライトの役割を考えると「明るさこそ正義!」といっても過言ではありませんが、実際にいろんなシチュエーションで運転してみると、ただ単に明るければいいとは限らない、という認識をもっているドライバーも少なからずいると思います。

 たとえば「視認性」で考えて見ましょう。ハロゲンランプの特徴のひとつは、色温度が低いという点です。「色温度」というのは熱で発光するときの温度と発光色の関係を表す基準です。物体やガスは温度が上がるとその発光色が変化します。鉄を溶かすシーンを思い浮かべてもらうと真っ赤に発光していることと思います。鉄が溶ける温度がだいたい800度くらいで、そこからさらに温度を上げていくにつれて明るくなり、約5200度くらいでは色が白になります。そしてさらに温度を高くして1万度付近になるとその発光の色は青白くなります。

 これを電球で見てみると、ハロゲンは黄色寄りの白色で、HIDは青白い色味になっています。色温度を表すケルビンという単位では、ハロゲンは4000~6000K、HIDは5000~8000Kといった感じでしょうか。

 ちなみにこのケルビン数は明るさとは別の基準なのですが、熱光源のランプの場合は温度と明るさがほぼ比例しているので、明るさ(ルーメン)が増すとケルビン数は高くなる傾向です。

 さて、そのケルビン数が低く、色味が黄色寄りのハロゲンランプですが、ケルビン数が低いとどんなメリットがあるでしょう?

 ひとつは目に優しいという点です。ヘッドライトの役割は前方を照らすことなので明るい方がいいというのは当然なのですが、逆に照らされる側になってみると、HIDやLEDの強い光は、人によっては目を攻撃されたかのようにまぶしさを感じます。暗ければまぶしくないのは当たり前と言うなかれ、明るすぎるライトには照らされる側の被害を含んでいるというのもまた事実なのです。

 もうひとつは「視認性」の点です。通常の夜間の走行時については、ヘッドライトが明るいほど前方がはっきりと見えて、遠くまで物体が確認できます。しかし、雨が降っているときは路面の反射が強くなり、逆に視認性を低下させてしまうシチュエーションもあります。そういう場面では光が強すぎず色温度も程々なハロゲンランプのほうが適していることも十分あり得ます。

 また、たまに遭遇する濃霧のシチュエーションではそれが顕著に表れるでしょう。霧というのは水の細かい粒子が舞っている状態なので、光を乱反射させる働きを持っています。そこに強い光を当てると、前方に通らないばかりか、乱反射の強さと範囲が大きくなり、まるで前方に光源があるかのように視界が阻害されてしまうことがあります。これは霧が濃いほどひどくなります。

 ハロゲンランプは光が強すぎないので乱反射の範囲が少なく済むということに加え、色温度が低いので乱反射に紛れず遠くまで光が届きやすいという特性があるんです。フォグランプの光が黄色いのもその理由からです。

 そしてもうひとつ、ハロゲンランプならではのメリットがあります。

 それはヘッドライトに雪が積もりにくいという点です。ハロゲンランプはHIDやLEDに比べるとランプ自体の発熱量が高いという特性を持っています。そのため、点灯している状態では温度が高く保たれるため、付着した雪を溶かして積もりにくくなるのです。

 これは一部の豪雪地域の人だけが得られるメリットかもしれませんが、せっかく明るい光を発しても、雪が積もってしまっては前方を照らせませんので、これはこれで確かなメリットといえるのではないでしょうか。

■扱いがカンタンという面もある

 これは性能面でのメリットではありませんが、ハロゲンランプはHIDと比べて扱いが容易だという点もメリットに数えていいのではないでしょうか。

 ハロゲンランプはシンプルな電球のカタチをしているため、脱着の際はカプラーを外して電球を抜き、新たな電球を差し込んで固定してカプラーを戻すだけで済みます。

 ちなみに標準的なH4タイプのハロゲンランプはハイ/ローの電球が一体型の構造なので、いまどきのハイ/ロー別々のLEDライトに比べても交換作業は容易と言えるでしょう。

 こうして「ハロゲンランプ」のメリットを挙げてみました。一部の限られたユーザーにはまだまだメリットは存在するといっても差し支えないとは思いますが、やはり明るさの面でのビハインドはいかんともしがたく、一般の多くのユーザーにとっては「やっぱり明るいのは正義!」という結論に落ち着いてしまうかもしれません。それでも「ハロゲンランプ」がなくなってしまうのは寂しい限りですので、個人的に「旧いクルマにはハロゲンがオススメです」といい張っておきます。

関連タグ

こんな記事も読まれています

アルファベット3文字だらけのクルマ用語……意味わからん! とりあえずこれだけ知っとけばOKの13用語を解説
アルファベット3文字だらけのクルマ用語……意味わからん! とりあえずこれだけ知っとけばOKの13用語を解説
WEB CARTOP
動かさずに室内保管……の「箱入り愛車」もシッカリ劣化する! しかも超久しぶりでいきなり乗るのは壊れる原因だった
動かさずに室内保管……の「箱入り愛車」もシッカリ劣化する! しかも超久しぶりでいきなり乗るのは壊れる原因だった
WEB CARTOP
なんで!? バカ売れ[ヤリスクロス]も樹脂パーツだらけ!! 最近の新車に多いワケ
なんで!? バカ売れ[ヤリスクロス]も樹脂パーツだらけ!! 最近の新車に多いワケ
ベストカーWeb
日本全国いますぐチェック! 梅雨&台風シーズンに向けて必須の「愛車チェック&メンテ」6つ
日本全国いますぐチェック! 梅雨&台風シーズンに向けて必須の「愛車チェック&メンテ」6つ
WEB CARTOP
軽には軽の流儀がある! 「軽デコトラ」をイケてる名車にするための三大奥義
軽には軽の流儀がある! 「軽デコトラ」をイケてる名車にするための三大奥義
WEB CARTOP
初代NSXはアルミボディだから永遠にヤレない……ワケじゃない! アルミはあくまで「錆びにくい」だけだった
初代NSXはアルミボディだから永遠にヤレない……ワケじゃない! アルミはあくまで「錆びにくい」だけだった
WEB CARTOP
日産エクストレイルについて解説! VCターボエンジンと進化したプロパイロット搭載で話題のSUVとは
日産エクストレイルについて解説! VCターボエンジンと進化したプロパイロット搭載で話題のSUVとは
WEB CARTOP
フル液晶メーターにステアリングスイッチってもはや上級乗用車レベルじゃん! 新型キャンターの豪華内装と安全装備がスゴイ
フル液晶メーターにステアリングスイッチってもはや上級乗用車レベルじゃん! 新型キャンターの豪華内装と安全装備がスゴイ
WEB CARTOP
車名の由来は「セクシー」&「エレガント」! 日野「セレガ」の最新モデルが最新技術のるつぼだった
車名の由来は「セクシー」&「エレガント」! 日野「セレガ」の最新モデルが最新技術のるつぼだった
WEB CARTOP
クロカンSUVがもつもうひとつのシフトレバー! 副変速機って何? トランスファーと何が違う?
クロカンSUVがもつもうひとつのシフトレバー! 副変速機って何? トランスファーと何が違う?
WEB CARTOP
よく見るコイルスプリングだけじゃない! 板バネに空気バネなどクルマのサスペンションの「バネ」の種類と特徴
よく見るコイルスプリングだけじゃない! 板バネに空気バネなどクルマのサスペンションの「バネ」の種類と特徴
WEB CARTOP
「LEDヘッド&フォグプレミアムモデル2」発売 ハイロー同時点灯機能搭載 レーシングギア
「LEDヘッド&フォグプレミアムモデル2」発売 ハイロー同時点灯機能搭載 レーシングギア
グーネット
【試乗】BYDの「真打ち」スポーツセダンが日本上陸! 激安「SEAL」の走りを徹底チェックした
【試乗】BYDの「真打ち」スポーツセダンが日本上陸! 激安「SEAL」の走りを徹底チェックした
WEB CARTOP
「下手くそ棒」なんて悪口も!? もはや絶滅危惧種の「コーナーポール」の有効度ってどんなもんだった?
「下手くそ棒」なんて悪口も!? もはや絶滅危惧種の「コーナーポール」の有効度ってどんなもんだった?
ベストカーWeb
2038馬力のハイパーカー……は流行のBEVじゃない! 水素燃料の「XP-1」はボディがソーラーパネル化できる未来のマシンだった
2038馬力のハイパーカー……は流行のBEVじゃない! 水素燃料の「XP-1」はボディがソーラーパネル化できる未来のマシンだった
WEB CARTOP
「TBA」「ガチャマン」「特約店」! クルマ好きなら知っておきたい「ガソスタ業界用語」7つ
「TBA」「ガチャマン」「特約店」! クルマ好きなら知っておきたい「ガソスタ業界用語」7つ
WEB CARTOP
スズキ・スペーシアベースについて解説! 唯一無二の魅力をもつクロスオーバーは最強の遊びクルマだった
スズキ・スペーシアベースについて解説! 唯一無二の魅力をもつクロスオーバーは最強の遊びクルマだった
WEB CARTOP
使わなきゃ損しかないクルマの「ACC」機能! ただし危険な「けっこう見かける」間違った使い方に要注意
使わなきゃ損しかないクルマの「ACC」機能! ただし危険な「けっこう見かける」間違った使い方に要注意
WEB CARTOP

みんなのコメント

60件
  • エガちゃんねらー
    ヘッドライトは目潰しかと思うくらい眩しいのに
    ウインカーはアホみたいに小さくて視認しづらい
    マジに最近の車はどうなってんのよ?
  • ru3********
    HIDはまだよかったが、LEDは本当に対向車のライトで目が眩みます。ハロゲンとかHIDだと降雪時に溶けやすいってメリットもありますね。
    運転している本人だけにメリットがあり、他人は知ったこっちゃないって感じが現代を象徴している気がする。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村