2025年は金・水銀・公害・環境&自然保護などのテーマに触れる
ポルシェジャパンが2021年から展開しているユニークなプログラム「LEARN with Porsche」。これは、東京大学先端科学技術研究センター(以下、東大先端研)とのパートナーシップによりおこなわれている、若者の夢の実現をサポートするプロジェクトで、2025年で早くも5年目を迎えました。
【画像】「えっ!…」ポルシェ×東京大学が開催! これが若者の夢の実現を応援する「LEARN with Porsche」です(30枚以上)
自動車の総輸入元であるポルシェジャパンはなぜ、東大先端研とこうしたプログラムに取り組んでいるのでしょう? 今年度の「サマープログラム」の様子を振り返りながらその理由を深掘りしたいと思います。
「LEARN with Porsche」は毎年夏、中高生を対象に「ものづくりが好きな若者向けのプログラム」と「君の学びを変えるサマープログラム」というイノベーティブな経験の場を提供。若者たちが夢を叶えるためのサポートをおこなっています。
原点である「LEARN」は、Learn Enthusiastically(熱心に学び)、Actively(積極的に)、Realistically and Naturally(現実的かつ自然に)の頭文字に由来するプログラムで、東大先端研「個別最適な学び」寄付研究部門のシニアリサーチフェローである中邑賢龍さんと研究室のメンバーが展開しています。
「LEARN with Porsche」は、若者の夢の実現をCSR活動の柱のひとつに掲げるポルシェジャパンが「LEARN」と手を組み、学校教育とは異なる学びを提供するスカラーシッププログラムとなっています。
その中の「サマープログラム」は、毎年、異なるテーマと内容で開催されます。今夏は、“未来を駆け抜ける君へ「君の学びはこのままで十分か?」”というテーマの下、学校教育や自動車とはかけ離れた内容のプログラムが展開されました。
1年目は北海道・帯広、2年目は四国・愛媛、高知、3年目は北海道・利尻島、礼文島、4年目は熊本・天草地域と日本中を巡ってきた同プログラムですが、5年目となる2025年は東京と新潟、そして北海道・道東を舞台に5日間の日程で開催されました。
ちなみに同プログラムには、中邑さんや研究室のメンバーに加えて、ポルシェジャパン広報部長の黒岩真治さんや料理研究家の土井善晴さんも全日程に帯同。参加者とともに過ごし、サポートやアドバイスをおこないます。
2025年の参加者は、中学3年生から高校3年生までの男女10名。参加者たちは「どこへ行き、何をするのか」といった行き先や内容などを一切知らされぬまま、目的地を目指します。しかも参加者たちには、スマートフォンなど電子デバイスの使用禁止というルールも。人と出会い、話をすることで何かを得て、さまざまな体験を通じて知識を深めていくことが学びの基本となっているのです。
こうして始まった2025年の「サマープログラム」は、東京と新潟の2チームに分かれてスタートしました。
東京チームは「日本橋ってどんな街?」というテーマの下、日本橋の「金座」、すなわち日本銀行の貨幣博物館を訪問。金座は江戸時代に金貨をつくっていた場所であり、経済と文化の中心でした。その後、参加者たちは、田中貴金属本店で1kgの金のインゴット(時価約1700万円)を手に取り、お金の価値を改めて実感したのでした。
一方の新潟チームは、「阿賀野川といえば何を思いつく? 今から上流に行ってみよう」をテーマに阿賀町(かつての鹿瀬町)を訪問。新潟水俣病の被害者から当時の暮らしぶりやエピソードなどをうかがいます。新潟水俣病は高度経済成長期に多発した公害病のひとつであり、企業が放出したメチル水銀により引き起こされたものです。
その後、参加者たちは北海道へと移動。それぞれのチームには「イトムカを探せ!」というミッションが与えられます。街で聞き込みをしていると、偶然、“イトムカ”のことを知っている人に遭遇。現地までの地図まで書いてもらうなど、人との出会いから新たな知識を深めていきます。
2日目、両チームの参加者たちは列車で移動。車内でそれぞれが合流し、東京チームと新潟チームがそれぞれ得てきた情報を共有しながら留辺蘂(るべしべ)駅を目指します。
実はこの日の目的地であるイトムカは、かつて東洋でも屈指の水銀生産量を誇った鉱山があった土地。今では同地にある野村興産イトムカ鉱業所が、日本で唯一、水銀リサイクル処理事業を手がけています。
全国から集まった蛍光灯や乾電池など水銀を含んだ廃棄物から、水銀を回収するリサイクルがおこなわれています。
世界的なリサイクル施設を訪問した後、参加者たちは鉱山が活況だった頃の思い出をうかがうべく地元の人と交流。かつて水銀は貴重な軍事物資であったことや、最盛期には街に映画館もあるなど繁栄していた様子、さらに、この地でも水銀中毒が発生していた事実などを学んでいました。
川や海の環境を守るべく山林の植林活動をおこなった常呂町
続く3日目の舞台は、カーリングチーム「ロコ・ソラーレ」が本拠を置く北海道北見市の常呂町。ここでは漁業と農業のチームに分かれ、早朝から地元の人たちといっしょに作業し汗を流します。
漁業チームは名産であるホタテの養殖場、農業チームは同じく名産として知られるたまねぎ農場で作業。それぞれ現場のプロから話を聞き、都会では触れる機会のない第一次産業の現状について実体験を交えながら学んでいきます。
この地は高度経済成長期、工場排水が原因で河川が汚れ、漁業が打撃を受けた過去があるのだとか。そのため漁師さんらの抗議により工場を移転させた一方、自然環境を守るべく、漁協が山林を買いとって植林活動をスタートさせたといいます。
そうした歴史から、今も常呂町の漁業関係者の間には、海を守るには陸を守らなければいけないという思いが息づいているようです。
一方の農業チームは、収穫したたまねぎがベルトコンベアで続々と運ばれてくる機械の前で、長い茎葉を切ったり、形の悪いものを避けたりする作業に従事。北海道らしい広大な農場で、日常では味わえない収穫体験をおこないました。
そんな作業の合間には、ちょっとしたサプライズが。今回のプログラムに帯同していた東京フィルハーモニー交響楽団のコンサートマスターであるバイオリニスト近藤薫さんと3名の音楽家が、漁港や農場で演奏を披露してくれたのです。実は近藤さん、中邑さんが懇意にしている音楽家で、4人はさらに同日夕方、北海道常呂高校で地元の人たちを招いて音楽会を開催してくれました。
「サマープログラム」の参加者たちは、バイオリンやチェロ、ヴィオラ、クラシックギターの音色に酔いしれつつ、音楽会にいっしょになった地元の人々から、北海道や常呂町での暮らしなどを学んでいるようでした。
行程もいよいよ終盤となる4日目は、知床、斜里町へと舞台を移します。参加者たちは世界自然遺産に登録されるこの地で、“しれとこ100平方メートル運動”など、乱開発の危機にあった地を保全して原生の森に復元する取り組みや施設の管理、野生動物対策を体験しました。
レクチャーは、実際に環境教育や普及啓発、野生生物の保護管理・調査研究、森づくりなどをおこっている公益財団法人 知床財団のスタッフが担当。参加者たちは知床の自然環境について深く知り、考える機会を得たようです。
そして夕食後、プログラム最後の夜ということで、参加者たちは旅の振り返りを兼ねた発表をおこないました。
初日は物怖じする様子も見受けられた参加者たちですが、この頃になると、直接人に触れて何か教えてもらい、考えることの楽しさや奥深さを実感した様子。参加者たちのコメントからは「まだ帰りたくない」、「もっといろんなことを知りたい」といった思いが強く感じられました。
実体験や出会いから浮かんだ発想や好奇心の大切さ
そんなプログラム最後となる参加者たちの発表が終了したところで、中邑さんは突然、「最終日となる明日は、国後島を見に行きます」と切り出しました。
その上で中邑さんは、金や水銀のこと、それらにまつわる歴史、道東の人々の暮らしや農業や漁業といった第一次産業の現状……。駆け足ながらこの数日間、参加者たちがそれぞれ触れてきた現実と、出会った多くの人々が「それぞれどのようにつながっているのか? 皆さんにはその面白さを知って欲しいし、今後、そういった学び方を身につけてもらいたい」と参加者たちに訴えかけます。
今回の「サマープログラム」を通じて、参加者たちは何を学び得ることができたのか? 中邑さんは旅の間、具体的な方法やテーマを示すことは一切ありませんでした。ただ参加者たちが自ら疑問を持ち、自らの行動で答えを導き出すよう静かに見守っていたのです。
そして最後に、実体験や出会いから得たひとつの点を他の点と結びつけるという発想や好奇心の大切さについて指摘した中邑さん。参加者たちはその話を聞いてピンと来るものがあったのでしょう。みんな一様にうなずきながら中邑さんの話に耳を傾けていました。
一方、参加者たちの日々の成長を感じていた黒岩さんは、「今回、皆さんと訪れた企業や第一次産業の変革を見て、印象的に残ることの多いプログラムでした。人と接して話し、学ぶことはとても大切なこと。皆さんともいろいろな話ができ、私にとっても有意義な旅となりました」と振り返ります。
そしていよいよ最終日となる5日目、参加者はまず知床自然センターを訪れます。現地の自然を記録した映像を鑑賞し、座学を経た後は、フレぺの滝展望台までのハイキングを楽しみました。
距離にすると1kmにも満たない行程ですが、深い緑の木々や野草、真っ青な海と空といった知床の大自然を満喫したようで、参加者たちには自然と笑顔や笑い声があふれます。
その後はいよいよ、解散の地となる知床峠展望台へ。真正面に羅臼岳があり、中邑さんが見せたかったという根室海峡の向こうにある国後島を眼下に望める場所です。古くからロシアと日本の思惑が交錯するこの地を訪れた参加者たちは、この場所からの絶景を見て何を思ったのでしょうか?
何かと何かが結びついたからといって、答えは簡単に出るものではありません。しかし、関心を持ち続けていれば何らかの気づきや学びがあるはず……。中邑さんは、知床峠でも参加者たちに答えを求めることはありませんでしたが、そういう学びの気持ちや興味を忘れぬよう、参加者たちに無言の宿題を出したのかもしれません。
「LEARN with Porsche」の取り組みはまだまだ続いていく
ポルシェジャパンはCSR活動において「Porsche. Dream Together」というスローガンを掲げています。そこには、人と社会、そして未来をともに育むという思いが込められているそうです。
今夏も「サマープログラム」の全行程に同行した黒岩さんは、若者が将来に向けて「夢」を見つけられていないこと、未来の「夢」に向けた教育投資が少ないことに気づき、若者が「夢」を見て、「夢」を叶えるその瞬間に寄り添えるプログラムを立ち上げたかったと、「LEARN with Porsche」が誕生したきっかけを振り返ります。
「LEARN with Porsche」を通じて、今では確固たるパートナーシップを結ぶに至ったポルシェジャパンと東大先端研ですが、中邑さんの取り組みに共感を覚えた黒岩さんは6年前の夏、なんのツテもない中で直接、研究所に訪問したのだそうです。
こうしてスタートした「LEARN with Porsche」の取り組みですが、ポルシェの創設に尽力したフェリー・ポルシェの言葉を踏まえれば、そこに至ったポルシェジャパンの判断や行動は極めて自然なものだったのかもしれません。
フェリー・ポルシェは生前「私は自らが理想とするクルマを探したが、どこにも見つからなかった。だから自分でつくることにした」という言葉を遺しています。
教育とポルシェのクルマづくりは、一見、何の関わりもないように思えますが、何もないところから人や企業、そして未来を生み出すというチャレンジには、共通するものがあるように感じます。
ポルシェジャパンは今後も、「LEARN with Porsche」を通じて若者の「夢」の実現を見守っていきたい……黒岩さんはこのプログラムにかける熱い思いを静かに語ってくれました。(村田尚之)
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