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【専用エンジンに専用ボディ】フィアット130 クーペ 英国版クラシック・ガイド 前編

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【専用エンジンに専用ボディ】フィアット130 クーペ 英国版クラシック・ガイド 前編

専用のエンジンとボディ、インテリア

執筆:Malcolm Mckay(マルコム・マッケイ)

【画像】希少な専用ボディ フィアット130 クーペ 500 エレクトリックと124スパイダーも 全65枚

撮影:James Mann(ジェームズ・マン)

翻訳:Kenji Nakajima(中嶋健治)


スタイリングを手掛けたのは、イタリア・トリノ出身のカーデザイナー、パオロ・マルティン氏。プジョー104でも知られる彼の作品の中で、フィアット130 クーペは最も印象的な1台といえる。製造を請け負ったのも、ピニンファリーナ社だった。

1970年代らしいシャープでアグレッシブな容姿は、多くの視線を釘付けにする。インテリアも130 クーペの専用。シートやダッシュボード、ドアトリム、センターコンソールなど、すべてがボディと呼応するように造形し直されている。

クルーズコントロールのような役目を果たすハンドスロットルと呼ばれる機能や、ジャガーXJ-Sも真似た特徴的なハンドブレーキレバー、ダッシュボード上部に隠されたグローブボックスなど、ディテールにもこだわりが沢山。

ボンネットの内側に搭載されたのは、130 クーペのためにアウレリオ・ランプレディ氏が設計したオーバースクエアの3.2L V6エンジン。トランスミッションはボルグワーナー社製の3速ATが標準で、動力性能をいかんなく発揮した。

腕利きのドライバー向けに、ZF社製の5速MTも選ぶことができた。フロントとリアのサスペンションはサルーンと共有ながら、乗り心地と操縦性のバランスを引き上げるためにチューニングを受けている。

部品の入手は困難で、出てきても高価

新車当時、英国に輸入されたフィアット130 クーペは130台にも満たない。そのため、右ハンドル車は非常に少なく、MTはさらにレア。ボディは錆びやすく、中古車価格は伸びず、1980年代以降はスクラップヤード行きになった例も多い。

130 クーペの生存割合は25%程度。その内の30%がマニュアル車だという。

近年公道で見られる130 クーペの多くは、乾燥した気候で乗られていたクルマがほとんど。今回ご紹介する1台も、元はイタリアで登録されていた。

当時の試乗レポートでは、燃費の悪さとスポンジーなブレーキペダルのタッチを指摘している。だが130 クーペには当時最先端といえた、2系統式のベンチレーテッド・ディスクが奢られている。強化ホースへの交換で大幅に改善できる。

130 クーペの部品は、入手が難しいものも多い。特に世界で最もワイドだといわれたヘッドライトは事実上入手が不可能。最近出てきた新品は、片側で1600ポンド(24万円)で取引されたという。

テールライト・ユニットは、少し良心的な800ポンド(12万円)。シングルカムのV6エンジンも130 クーペでしか使われておらず、部品は見つけにくい。部品探しはインターネットを駆使し、世界中を検索することになるだろう。時間をかけて。

フィアット130 クーペは、高い価格の割に動力性能が伴わないという点で、新車当時は評価を下げていた。しかしドライビングポジションの調整幅も広く、視認性も良好。気張らなければ、素晴らしく優雅な走りを味わえるクラシックだ。

オーナーの意見を聞いてみる

イタリアン・クラシックカーのコレクター、ロブ・メンギーニ氏。フィアット130 クーペは、彼にとって是非モノの1台だったという。「以前にも所有していましたが、ここまで状態は良くありませんでした」

「シャシー番号455、1972年式のこのクルマを発見し、元の130 クーペはドバイの希望者へ売りました。ワンオーナー車で、スーツデザイナーとして成功していた人物が新車で購入したようです」

「彼はサビ1つない、世界最高の130 クーペに仕上げるべくレストアしています。インテリアをレザーとアルカンターラで仕立て直し、サスペンションとガソリンタンクはパウダーコート。エンジンの部品も、フェラーリ・レッドで塗ってあります」

「2010年末にインターネットで発見。クリスマス休暇を使ってイタリアへ飛び、雪の中で試乗させてもらいました。購入を決め、2011年3月にイタリアへ取りに行き、運転して英国へ戻っています」

「130 クーペでのドライブは大好きです。トランクリッドのロックが、ヒンジで下がるナンバープレートの裏に隠れているなど、ディテールもね」

英国で掘り出し物を発見

フィアット130 クーペ AT

登録:1973年 走行:5万6300km 価格:2万300ユーロ(263万円)

売り手によれば、ボディやメカニズムは妥当な状態だという。ダークブルーのボディ色が魅力的だが、ヘッドライトの下に塗装の浮きが見られるなど、サビの兆候があるようだ。

ロッソ・アラゴスタの内装は過去に仕立て直されているが、完璧な状態ではないという。ダッシュボードのパワーウィンドウ・スイッチパネルが欠落している。

それ以外、部品類などはすべて揃っている様子。ボディパネルのフィット感も良い。価格も手頃だといえる。

フィアット130 クーペ AT

登録:1974年 走行:4万7983km 価格:2万ポンド(304万円)

オプションのブラック・レザーと、アンバーのカーペットで内装がコーディネートされた130 クーペ。純正のエアコンが載り、冷気もちゃんと出るという。

英国へ輸入されたのは2016年。それまではイタリアで過ごしていた、3オーナー車。エンジンとシャシー番号は、フィアット・クライスラーの登録内容に一致する。2019年に重整備を受けており、その作業内容と検査レポートも付いている。

中古車購入時の注意点などは後編にて。

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