3日間合計で22万9000人が来場し、大盛況となった2024年F1第4戦日本GP。今回も国内で活躍する多くのドライバーが鈴鹿サーキットに来場していた。なかにはプライベートで観戦に来ているドライバーもいれば、トークショーなどに出演するドライバーもいた。
そんな中、スーパーGT、全日本スーパーフォーミュラ選手権に参戦する笹原右京と松下信治はDAZNのF1番組レポーターとして、今回もF1日本GP全日程をメディア側の立場から取材。特に笹原は、TVペンで全ドライバーにインタビューしていた。そこで垣間見えたF1ドライバーの素顔や、TVペンで取材する難しさを聞いた。
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F1では予選・決勝が終わった後に“TVペン”と呼ばれる取材エリアで各ドライバーがメディアの取材を受けることになっている。
現在スーパーフォーミュラで設けられているメディアミックスゾーンと同じようなエリアだが、スーパーフォーミュラのメディアミックスゾーンと大きく違う点は、予選Q1で敗退したり、決勝でリタイアした場合、セッション終了を待たず、予選で敗退したドライバーやリタイアしたドライバーたちがTVペンに来る点だろう。
「基本的に全ドライバーを取材します。たとえば予選の場合だと、Q1というかセッションが始まる前から待機していますし、昨年もそうでしたがレースを違うところで見ていたら、誰かリタイアするとすぐにTVペンにきちゃうので、そこが難しいところですね」と笹原。
TVペンには大きなモニターがあり、レース映像やタイミングモニターもチェックできるようになっているが「ここは音声が聞こえなくて、実況や解説とか無線も聞こえないです。なので携帯でDAZNを見ながら展開を追いかけていました(苦笑)」と展開をチェックするのもひと苦労なのだという。
さらに難しいのが、時間が限られているということ。TVペンには各テレビ局が待機するエリアが8カ所(1カ所に2~3局が固まる)と、ペン記者が取材するエリアが2カ所ある。ドライバーはそのすべてのエリアにまんべんなく来てくれる分、1回あたりの取材時間が非常に短いのだ。
「基本的にひとりあたり2問くらいまでです。できて3問で……4問も聞くことは(時間的に)ないですね」と笹原。
「だいたい2問の中で簡潔にうまくまとめないといけないです。だいたい予選や決勝が終わった後の状況や、どう思ったのかというところを聞いています」と、限られた時間で、いかにドライバーのコメントを引き出すかに頭を悩ませていた。
「人によってぜんぜん違うなという印象ですし、予選が終わった後はそれぞれ内容の良し悪しもあります。僕もドライバーなので、たとえば『このクルマで、この順位で終わったことが良かったのか、それとも悪かったのか』ということはすぐ分かります」
「それを考えた時に(結果が)良い人は基本的にハッピーなので、意外と話しやすいのですけど、やはり悪かった人のときが……ですね」
笹原自身も国内トップカテゴリーを戦い、ドライバーとして結果が良い時と悪い時の経験をしているからこそ、質問の仕方にも細心の注意を払っているという。
「彼らなりの気持ちも分かっちゃいますからね。あとは無線とかで流れているやり取りを聞いたりして『こういう状況だったのかな?』と推測しながら、なるべく彼らの本音を引き出せるようにしています」
「ドライバーなので、そこになるべく寄り添って引き出せるようにはしようかなと思っていますが……めちゃくちゃ難しいし、疲れますね。メディアの皆さんの気持ちがよく分かります」と、笹原は苦笑いしながら語ってくれた。
また、F1の場合は必ずドライバーひとりに対してチームのマネージャーがひとりはTVペンに帯同。取材時間の管理をするとともにボイスレコーダーで全インタビューを録音し、ドライバーがメディアに対して何を話したのかをすべて記録している。そういう状況だからこそ、ドライバーによって対応が変わると笹原は感じているようだ。
「ほとんどのドライバーが決まった言葉と決まった内容になるというか、チームが『こう言ってほしい』ということを、そっくりそのままロボットのようにいう人もいれば、けっこう自由奔放な人もいます。その辺は人によって違うなと思います」
今回も20名のドライバーを取材したなかで「圧倒的に雰囲気が違うなと思うのが、ルイス・ハミルトン(メルセデス)ですね」と笹原。
「オーラが違うというか……うまく表現しづらいんですけど、他のドライバーとは持っている空気感が違うんですよね。正直『カッコいいな』と思いました」とのこと。実際に予選終わりのTVペンで笹原がハミルトンを取材しているところに出会したが、彼の背中から緊張している雰囲気が伝わってきた。
「ルイスは日本のことは好きなので、そこはいろいろと話してくれる印象ですけど、その時の気分によって上がり下がりがあるというか……意外とハッキリと出るタイプです」
「特に2023年のルイスはやり切った感満載で、希望もなくなって打ちひしがれた感がすごくありました。だから、質問をしても珍しく長く考えたり、ひとつひとつの言葉を探しながら答えている感じでした。だから、インタビューはめちゃくちゃ長かったですね。今回は『もう来年はフェラーリに行っちゃうし』みたいなところもありました」
その他にも、「自分が過去に一緒にレースをしたことがある人たちが来ると『え? 君がインタビューするの?』と目があった時に、そんな感じになりますね」とヨーロッパでのレース経験がある笹原だからこそのやり取りもあるという。
「例えばアレックス・アルボン(ウイリアムズ)は事前に渋谷でもインタビューをしましたし、シャルル・ルクレール(フェラーリ)も昔同じチームでテストをやったりとか、ランド・ノリス(マクラーレン)もカートの時から知っていますし……」
「マックス・フェルスタッペンにいたっては同じレッドブルですし、その辺は『お、おぉ?』みたいな反応されますね。でも、そういう繋がりがあるからこそ、彼らなりに話してくれる感はすごくあったので、良かったです」
今回も予選・決勝で全ドライバーの取材をしっかりとこなした笹原であった。
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