Paul Williams
Bentley Motor Sport Director
ベントレーが鈴鹿10時間耐久レースに参戦したワケとは? ポール・ウイリアムズ氏インタビュー
ポール・ウイリアムズ
ベントレー モータースポーツ ディレクター
V8ユニットの生みの親がモータースポーツの世界に
2019年が2回目の開催となったSUZUKA 10HOURS(鈴鹿10時間耐久レース)に、昨年に続いてベントレー チーム M-スポーツが2台のマシンを送り込んだ。ベントレー100周年を記念したブラックとゴールドのカラーに、その100と2003年のル・マン24時間1-2フィニッシュのマシンから取った7と8を組み合わせた107、108のカーナンバーを付けたスペシャル仕様は、そのゴージャスな佇まいで大いに注目を集めたのだ。
決勝レース中の貴重な時間を割いていただき、そのベントレー チーム M-スポーツのチームディレクター、ポール・ウィリアムズ氏に話を聞くことができた。ウィリアムズ氏は、直近までパワートレイン開発ディレクターを務めており、コンチネンタルGT用のV型8気筒4.0リッターエンジンも実は彼が手掛けたもの。コンチネンタルGT V8の日本導入時には筆者も東京でインタビューをしたことがあった。そしてこの夏、20年以上にも渡ってモータースポーツ部門を率いていたブライアン・ガッシュ氏に代わり、この任に就くこととなったのである。
BENTLEY CONTINENTAL GT3
ベントレー コンチネンタル GT3
「(このポジションに就いたことには)とても興奮していますよ! マシンには私が元々開発していたV8ユニットが搭載されています。それがレースで活躍する姿を間近で観られるのですから。チーム全体を率いていくことも、とても興味深いですね。前任のブライアン・ガシュには色々と教えてもらっています。彼は私の先生で、しょっちゅうメールをやり取りしているんです」
そもそもこのSUZUKA 10HOURS、そしてGT3マシンによって争われるインターコンチネンタルGTチャレンジにベントレーが参戦を決めた理由は何なのだろうか。それはブランドにとって、どんな意味をもつのか。
「ふたつの大きな理由があります。まずは歴史的な背景。約100年前にベントレーは、まさにクルマの耐久性を証明するためにル・マンに出ました。このブランドは耐久レースに深い関わりがあるんです。もうひとつは、パフォーマンスとラグジュアリーのブランドであるベントレーとして、フェラーリ、ランボルギーニといったスーパースポーツカーと戦うこのレースは、存在感を示す興味深い舞台だということも挙げられます」
大柄でも軽量! 重量配分も50対50を実現
この激戦のカテゴリーに於けるコンチネンタルGT3の長所はどこにあるのだろうか。市販車ベースのこのマシンは全長4860mm×全幅2045mm×全高1355mmと大柄で、必ずしもレースカー向きではないようにも見えるが・・・。
「たしかにサイズは大きいですね。でも重量はライバルたちと変わらないんですよ。(ホモロゲーションされた)車重は1275kgです。しかもGT3の場合、BoPと呼ばれるハンディキャップシステムでウェイトハンディがつきますから。その上、エアロダイナミクスの面ではポジティヴな部分も沢山あります。サイズは決してネガではないですね」
CFRP製ボディパネルを用いるなどして軽量化されたこのボディに積まれるエンジンは前述の通りウィリアムズ氏が開発を手掛けた4.0リッターV8ツインターボユニット。リストリクター無しでは550psを発生できるポテンシャルを持つ。ドライサンプ化されたこのエンジンは可能な限り低く、そして後方に搭載されている。
「レギュレーションぎりぎりまで攻めています。ボンネットを開ければ、いかにエンジンが後方に位置しているか一目瞭然ですよ。6段シーケンシャルギアボックスをトランスアクスルレイアウトとしていることもあり、前後重量配分は完全な50対50を実現しています」
あえてWRCで活躍するM-スポーツをパートナーに
ベントレーはこのGT3カテゴリー参戦に当たってM-スポーツをパートナーとして迎えている。マシンの開発もチームの運営も共同で行なわれているという。
「M-スポーツは素晴らしいパートナーです。すべて委託しているわけではなく、我々は一緒に活動しています。ベントレーの3人のエンジニアがM-スポーツに常駐していて、車体もエンジンもすべて共同で開発しています。ピットに行ってみれば解りますが、そこにはM-スポーツとベントレーのスタッフが一緒に働いていますよ」
ちなみにM-スポーツとは、WRCのトップカテゴリーでフォードと組んで長年活動している、あのM-スポーツである。サーキットレースのためのパートナーとして、ラリーフィールドで知られたM-スポーツを選んだのは、一体なぜだったのだろう。
「GT3参戦のパートナーを探している時に考えたのは、GT3で長く活動しているチームではなく、まったく違った考え方をするところと仕事がしたいということでした。ラリーをやってきたM-スポーツは、期待通り思考方法が違っていて、またそのスピードも速いですね。チーム全体のスタッフのレベルが非常に高いですし、何よりとても新鮮です。しかも、耐久レースは時に、即座のマシンの修復が必要になる時もありますが、そういう場面での経験も豊富ですからね」
今後のレース活動について
現在はGT3を主戦場としているベントレーだが、近年盛り上がりを見せる耐久レース界では目下GT4が勢いを増してきているし、GT2というカテゴリーもできた。更に言えば、ル・マンという選択肢だってあるだろう。今後の活動として、どのようなものを見据えているのだろうか。
「GT4については常に議論をしていますが、インターナショナルなレース活動をと考えるとGT3がベターだと考えています。こうして鈴鹿にも来れますからね。日本はファンが熱心で、ブランドの結びつきも強く、素晴らしい舞台だと改めて感じていますよ。もちろん、ル・マンは我々のブランドとして興味を持っているのは間違いなく、常に検討はしています。一方、もっとプロとジェントルマンが一緒にレースをできる環境も増えればいいですね。何しろ最初のベントレー・ボーイズは、皆アマチュアだったんですから」
その際には、たとえば日本人ドライバーにも門戸は開かれているのだろうか? そもそもベントレーのドライバーに求められる資質は何なのか?
「重要なのはもちろん速さ、確実性。そしてベントレーのハート、スピリットですね。我々にとって彼らは単なるドライバーではなく、ブランドのアンバサダーでもあるのですから。それを持っていれば国籍は問いませんよ。もちろん日本人でも」
現在、新型コンチネンタルGT3はアジアのユーザーが居ないということなので、もし興味を持たれた方はぜひ。マシンに競争力があることは、この日、107号車が総合8位に食い込んだことでも証明済みである。
ともあれ、その速さ、華やかな存在感、そしてパドックでのユーザーに向けた手厚いホスピタリティなどによって、ベントレーが今年のSUZUKA 10HOURSの盛り上げにひと役買っていたことは間違いない。今後のモータースポーツ活動にも注目せずには居れないだろう。個人的には特にル・マン復帰、ぜひ観てみたいところだ。
REPORT/島下泰久(Yasuhisa SHIMASHITA)
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