SKYACTIVテクノロジーと魂動デザインで新たなファンを獲得している近年のマツダ。一方で、世界で唯一量産に成功したロータリーエンジンとその搭載車に今でもただならぬ愛情を注ぐ人たちがいる。そんなオーナーと貴重な愛車を7日連続でご紹介! 本日は後期型GTをベースにした片山義美仕様の登場だ。(取材・文:増田 満/写真:伊藤嘉啓)
無敵だった片山サバンナを参考にさらにパワーアップ
サバンナRX-3の前期モデルをベースにしたレーシングカーを製作した成田秀喜さん(前回参照)は、サーキット仲間から1976年式の後期モデルも譲り受けることになる。ロータリーマニア(2)参照。
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サバンナは1971年に発売された当初、10A型ロータリーエンジンを搭載していた。だが、輸出仕様では排気量の大きな12A型がラインナップされていたため、国内にも12A搭載車を望む声が大きかった。そこで1972年に12A型を搭載するGTが追加発売された。そして1973年にサーマルリアクターを装備して排ガス規制に対応させたサバンナAPシリーズへ進化。翌年には10A型がラインアップから消えて12Aを搭載するGTも排ガス規制対応車になった。型式もS102からS124へ変わり、これを後期型と呼ぶ。
成田さんが入手したのは1976年式のGT。つまりワークスカーが吸気をペリフェラルポートとした1973年以降のクルマであるため、迷わずフルチューニングすることを決意した。とはいえ、エンジン本体は12Aから13Bに変更している。そのうえでペリフェラルポートを装着してウエーバーキャブレターでセッティングをしてある。そのため本物のワークスカー以上にパワフルとなった。エンジンパワーに対応させるため、足回りも大幅に変更することとなる。
リアサスはスカイラインから移植してセミトレに
フロントにはピロアッパー式の車高調を装着してローダウンとジオメトリーを適正化。ストラットタワーバーも装着している。ブレーキキャリパーを変更して制動力も向上させているが、さらに圧巻なのがリアサスペンション。ワークスカーでもワットリンクを追加する対策が施されたが、ローダウンしてもキャンバー角が変わらず接地性を確保するため、デフごと変更してしまっている。なんとスカイライン・ジャパンからリアサスペンションをごっそり移植しているのだ。板バネによるリジッドアクスルだった純正から、セミトレーシングアーム式独立懸架サスペンションになったため、サーキットでの限界走行が楽しい仕様になった。
これだけハードな改造がされているので、室内はさぞレーシングカーのようになっているだろうと思いきや予想を裏切られた。内装材がすべて残され、リアシートこそないが助手席も残されている。その一方で、フルチューニングしたエンジンパワーに対応させるため、6点式ロールケージが備わっている。アンバランスさを感じるところだが、成田さんはこのサバンナを街乗りにも使おうと考えているのだ。というのも、前回登場した前期ベースのゼブラカラー仕様は登録書類がなくレーシングカーにするしかなかったが、こちらの後期型GTには登録書類が残っているので、改造申請すればいつでもナンバーが付く状態なのだ。
ワークスカーのように改造されたサバンナが街を走っていたのは80年代前半までだっただろうか。あの当時は二度と車検に通らないほど巨大なオーバーフェンダーを装着して、地を這うような車高にローダウンしたサバンナをよく見かけた。だが、改造車検が一般的ではなかった時代ゆえ、大改造されたサバンナたちは次々に廃車されていった。
同じように改造されたハコスカやケンメリ、ジャパンも多かったが、販売された総数が違うのだろう。歴代スカイラインは今でも意外に残っている。ところがサバンナは全国探しても数えるほどしか残っていない。そんな時代だからこそ、ワークス仕様に改造されたサバンナが街を走る姿をもう一度見てみたい気もする。あの時代を振り返る存在になって欲しいクルマと言えるだろう。
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