WEC世界耐久選手権第5戦モンツァ6時間レースの予選が7月8日に行われ、既報のとおり小林可夢偉がドライブした7号車トヨタGR010ハイブリッド(マイク・コンウェイ/可夢偉/ホセ-マリア・ロペス組)が、2023年シーズン2度目のポールポジションを獲得した。前戦のル・マンに続き、白熱した予選が繰り広げられた金曜日のパドックからWECモンツァの各種トピックをお届けする。
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僅差の予選を制したトヨタ小林可夢偉「守りの走りはできない」。決勝のカギは暑さか/WECモンツァ
***8日(土)に行われたモンツァ6時間レースの予選で、トヨタ7号車の小林可夢偉と50号車フェラーリのアントニオ・フォコの間に生まれた0.017秒のタイム差は、WECが2021年にシングルドライバーによる予選を導入して以来、ポールポジションを巡る争いのなかでもっとも接近したものだった。
***これまでの最小ギャップは100分の3秒であり、トヨタのチームメイトである可夢偉とブレンドン・ハートレーが2022年シーズンの富士ラウンドで記録している。
***可夢偉のポールタイム1分35秒358は、昨年のモンツァでグリッケンハウス007 LMHをドライブしたロマン・デュマによってマークされた1分35秒416を上回り、モンツァでのハイパーカー予選最速記録となった。
***ポールポジションの追加ポイントにより、トヨタ7号車はFIAハイパーカー世界耐久ドライバー選手権でランキング4位に浮上した。可夢偉、ホセ・マリア・ロペス、マイク・コンウェイの3人は、フェラーリ50号車のトリオと67ポイントで並んでいるが、彼らはすでに今季2勝を挙げている。
***プジョーは、予選のパフォーマンスについて楽観的であり、フランスのメーカーはジャン-エリック・ベルニュの93号車と、グスタボ・メネゼスがドライブした94号車のプジョー9X8ペアが4番手と7番手グリッドを獲得した。
***ステランティス・モータースポーツ代表のジャン-マルク・フィノは次のように語った。「もちろん、ポールポジション争いをしたかったが、シーズン当初からのチームの取り組みと作業によって、レースごとに改善されていることがわかる。スパではポールから2.4秒差だったが、今ではコンマ3秒差だ。私たちにとってはまだ充分ではないにせよ、大きな一歩だ」
■ベルトン起用はデュマの進言
***ロバート・クビサ(チームWRT/41号車オレカ07)はWEC LMP2で自身初のポールポジションを獲得したが、セッション序盤のトラブルが他のドライバーに比べて「少しストレスになった」と語った。
***WRTのスポーツ・ディレクターであるティエリー・タッシンは、この問題について説明した。「(クビサが)新しいタイヤで走り出したとき、後輪のひとつがバランスを崩していて、それにともなう振動があった。彼はピットインすることを決め、別のセットを履いて出ていったため(予定していた)順序が狂ってしまった」
***タッシンはまた、3回目のフリープラクティスの間にエンジンの問題を解決するために31号車オレカのイグニッションコイルを交換したとSportscar365に語った。「エンジンがうまく回っていなかったんだ。ピットを出てすぐ、彼らはすぐにそれを感じることができた」
***イソッタ・フラスキーニが開発中のル・マン・ハイパーカー『ティーポ6 LMHコンペティツィオーネ』は、予選前に元F1ドライバーのアンドレア・モンテルミーニによって10分間のデモンストレーション走行を実施した。またジャン・カール・ベルネイがドライブするティーポ6 LMHピスタも同時にトラックを走行。このクルマはサーキット専用の市販ハイパーカーだ。
***ル・マンで3年連続の完走、7位入賞を果たした709号車グリッケンハウス007は、来週イギリスで開催されるグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード(FoS)に登場するハイパーカーの1台だ。予定ではライアン・ブリスコーとカスタマードライバーのジェイソン・マッカーシーが有名なヒルクライムに参加することになっている。
***チームオーナーのジム・グリッケンハウスは、ブリスコーがル・マンでチームに合流した後、彼に代わりナタナエル・ベルトンが708号車に乗ることが計画されていたことを認め、ロマン・デュマがベルトンとの契約を勧めたと付け加えた。ふたりは2020年のル・マンでレベリオン・レーシングのマシンをシェアしている。「ロマンは彼のことをとても褒めていた」とグリッケンハウスは語った。
■プラットフォームBoPの変更は富士戦以降
***ハイパーカークラスのプラットフォーム・ベースのBoP(バランス・オブ・パフォーマンス=性能調整)変更は、ふたつの代表的なレース後に行われる可能性がある。つまり、モンツァか富士で雨が降らない限り、次はバーレーン8時間のシーズンファイナル前に可能となる。プラットフォームBoPの変更は、LMH(WEC発のル・マン・ハイパーカー)とLMDh(IMSA発のプロトタイプマシン)が個々のマシンの変更ではなく、グループとして調整されるものだ。
***ゼネラルモーターズのスポーツカー・レーシング・プログラム・マネージャーであるローラ・ウォントロップ・クラウザーは、キャデラックが2002年以来のル・マンで表彰台に上ったことを「とても誇りに思う」と語った。「この2、3週間を振り返ってみると、笑顔がどんどん大きくなっていく」と彼女は語った。
***ベン・キーティングは、現在の所属チームであるコルベット・レーシングとのカジュアルな話し合いの中で、TFスポーツについて良い言葉を述べたが、アストンマーティン・チームが来年シボレー・コルベットZ06 GT3.Rを走らせる契約を結んだこととは「何の関係もない」と語った。
***キーティングはSportscar365に対し次のように述べた。「TFと私は、どちらもコルベットと秘密のミーティングをしていたと思う。相手には知られたくなかったのだと思うよ!」ブロンズレベル離れしたこのアメリカ人ジェントルマンドライバーは、過去2シーズンのGTEアマプログラムをTFスポーツとともに行い、同チーム間とのつながりがあるにもかかわらず、LMGT3が導入される来季2024年はWECの新GTカテゴリーでレースをするつもりはないと繰り返した。
***インターユーロポル・コンペティションは、先月のル・マン24時間レースでLMP2クラスのトップチェッカーを受けた34号車オレカ07を引退させた。このマシンは洗車されないまま、ポーランドのチーム本部のミュージアムに保管される。モンツァに運ばれているシャシーは来週末ポール・リカールで開催されるELMSヨーロッパ・ル・マン・シリーズでも使われる予定で、WEC富士とバーレーンには別のシャシーが輸送される。チームはもう1台新しいシャシーをオーダーしている。
■タイヤを使い切ってしまった777号車アストンマーティン
***エフリン・カストロ(56号車ポルシェ911 RSR-19/プロジェクト1・AO)のスピンにより赤旗中断となったLMGTEアマクラスの予選は、星野敏がドライブする777号車アストンマーティン・バンテージAMR(Dステーション・レーシング)の予選結果に影響した。チームメイトの藤井誠暢は、赤旗前に星野が「かなりいいポジションにいた」と感じていたが、最初のアタックでタイヤを使い切ってしまったためポジションを上げることができなかったという。結局、星野はクラス11位で予選セッションを終えることとなった。
***GTEアマクラスではサラ・ボビー(アイアン・デイムス/83号車ポルシェ911 RSR-19)が自身4回目のポールポジションを獲得。ポルシェとしては23回目のポール奪取となり、昨季限りで廃止となったGTEプロにおけるドイツメーカーのポールポジション獲得数と並んだ。
***ジャンマリア・ブルーニは、プロトタイプレース初年度の最大の挑戦として、左足ブレーキングの復帰に取り組んでいる。プロトン・コンペティションのドライバーは、F1では左足ブレーキを使用していたが、2007年のGT参戦以降は、マシンがシーケンシャル・シフトになったため、右足でのブレーキングに切り替えていた。
***「パドルシフトが導入されてからは、みんな左足に変えたけど、僕は右足のままだった」とブルーニ。「このクルマ(99号車ポルシェ963/プロトン・コンペティション)でのドライブが決まったとき、左足ブレーキに戻すためにLMP2をでそれをやる必要があると言ったんだ」
***プロトンは金曜と土曜を新しいポルシェ963の開発に費やした。FP1をロールアウト・セッションとして扱い、他のセッションではハリー・ティンクネルとともに新しいタイヤで低燃費走行を試みた。ブルーニはFP2でロングランを試したが、6周目に燃料ポンプに発生したトラブルによってプログラムは影響を受けた。
***リシ・コンペティツィオーネのチームオーナー、ジュゼッペ・リシが土曜日にモンツァのパドックで目撃された。リシのチームはIMSAミシュラン・エンデュランス・でフェラーリ296 GT3を走らせている。
***先週、ベルギーのスパ・フランコルシャンで行われたフォーミュラ・リージョナル・ヨーロッパ選手権のレース中に起きたクラッシュによって死去したディラーノ・ファン・ト・ホフへの追悼として、F1アカデミーのサポートレースの直前、12時45分にモンツァのパドック全体で1分間の黙祷が捧げられた。
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