テスラ モデルYは多用性を持たせたミッドサイズSUVの電気自動車。2020年秋以降、順次納車が開始されるというが、いち早く、ドイツでトップグレードに試乗する機会を得た。(Motor Magazine 2020年8月号より)
ドイツで人気のテスラ。当地での生産準備をスタート
アウディeトロン、メルセデスベンツEQCなどドイツプレミアムブランドから本格的な電気自動車(BEV)が市場に送り込まれ、政府は販売補助金を提供しているにもかかわらず、その販売はいまだに足踏み状態を続けている。19年のBEV総販売台数は6万3281台で、そのシェアはわずか1.8%に過ぎなかった。
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こうした状況の中でテスラはモデル3が9013台で3位、モデルSは12位、そしてモデルXが14位と健闘している。そしてモデル3の勢いは20年に入っても衰えず、1月から5月までの販売台数は3664台でドイツ勢を抑えて3位に入っている。テスラの人気は北欧だけでなく、ドイツでも非常に高くなっている。
さらに、19年11月に自動車雑誌の表彰セレモニーのためにドイツへやってきたテスラのイーロン・マスクCEOが予告なしに突然、なんとドイツでテスラ車を生産すると言い出したのである。そして20年に入ってベルリン郊外のブランデンブルグに東京ドームの3.2倍の用地を40億ドル(約4300億円)で買収し工場建設が始まった。まさにイーロン・マスク氏らしい実行スピードである。
そして来年からいよいよモデルYが、ドイツをはじめヨーロッパに向けて出荷されるという計画が進められている。それゆえにドイツ人の多くはすでにアメリカで販売が始まっているモデルYに大きな期待を寄せており、正規販売が始まっていないにもかかわらず並行輸入車が徐々に入って来ている。
私が試乗したのもこうした並行輸入の一台で、仕様はパフォーマンスと呼ばれるトップグレードだ。システム出力462ps、639Nmを発生する2基の電気モーターで、0→100km/hを3.7秒で加速、最高速は241km/hをマークし、航続距離は480kmに達する。注目の価格は、並行輸入業者によれば6万5620ユーロ(約820万円)と、アウディeトロンやメルセデスベンツEQCに匹敵する。
重心がとても低くスポーティドライブが楽しめる
テスラは登場以来、ボディの仕上げ、合わせ目幅、ギャップ、あるいは塗装に対しては改善の余地があると言われているが、おそらくテスラオーナーの価値観は別のところにあるらしく、これまでのオーナーのインタビューでは不満どころかほとんどはそんなことを気にしていなかった。
シンプルなインテリアもハードプラスチックで囲まれて高級感とは縁遠い。操作系は全モデル共通でダッシュボード中央に置かれた15インチのタッチパッドが唯一のインターフェイスである。テスラを初めて運転する人にとっては使用説明をじっくりと研究する時間が必要だ。ただし、一度覚えてしまうと、宇宙船を操縦しているような優越感に浸れる。
走り出すと、これまでどおり電気自動車特有のスムーズで鋭い加速で始まり、安定した直進性で一般道はもちろん、アウトバーンの進入路から速い流れにもたやすく合流することができる。一方、床下に収納されたバッテリーでもたらされた低重心のおかげで、ずっしりと安定した乗り心地で、ドイツの推奨速度130km/h付近ではとても安定している。
一般道、さらにはワインディングロードではやや高めのシートポジションのおかげで見切りもよく、またロールも少ないので、積極的なスポーティドライブを楽しむことができる。
ところで、とてもシンプルで面白みに欠けるキャビンではインテリアを楽しむなど考えにくいが、さらに進化した合計8個のカメラとの連携するドライバーアシストシステム(ADAS)でハンズフリーも可能である。残念ながらドイツでは合法化されていないが、アメリカでは運転中の携帯電話が許されるので、非常に重宝する。
もちろんハンドルから手を離せば警告が発せられるので注意しなければならないのは当然だが、ここでもクルマの近未来形を体験することができる。(文:木村好宏)
■テスラ モデルYパフォーマンス主要諸元
●全長×全幅×全高=4751×1921×1624mm
●ホイールベース=2890mm
●車両重量=2000kg
●モーター最高出力=462ps
●最大トルク=639Nm
●駆動方式=4WD
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これだけでも乗ってみたくなる。