2024年8月24日から25日にモビリティリゾートもてぎでスーパーフォーミュラ第5戦が行われた。シーズン後半戦に突入した2024年シーズンは、今大会からタイトル争いにおいて篩にかけられる。タイトル争いに望みが繋がる重要な一戦・・・誰にとっても優勝したい第5戦では、2022年のTEAM IMPULが繰り広げたチームメイトバトルを彷彿とさせる激しい優勝争いが展開された。(文:河村大志/写真提供:日本レースプロモーション)
TEAM IMPULがニック・デ・フリースを起用
今シーズンは国本雄資とテオ・プルシェールのコンビで参戦予定だったTEAM IMPUL。しかし、開幕戦終了後、プルシェールがインディカー・シリーズへの参戦することが決まりチームを離脱した。
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第2戦ではIMSAで活躍しているベン・バーニコートが、第3戦と第4戦には平良響がシートに収まったが、第5戦以降のラインナップは未定だった。
そして第5戦である今大会から第7戦にかけて、TEAM IMPULはニック・デ・フリース(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)が19号車のステアリングを握ることを発表した。
数多くの選手権で活躍し、各カテゴリーで適応力の高さを見せているデ・フリースは、2019年のFIA F2でチャンピオン、フォーミュラEでも2020-2021シーズンを制し、世界王者に輝いた。
十分な実績を積んだデ・フリースは2022年にF1で複数のチームからフリー走行に出走。同年のイタリアGPでは、アレクサンダー・アルボンの代役としてウイリアムズからデビューを果たし、急遽決まった参戦ながら9位入賞と印象的なパフォーマンスを発揮した。
この走りがきっかけとなり、2023年にはアルファタウリのレギュラーシートを掴んだ。ここでは結果を残すことができず、シーズン途中でシートを失うも、実績と適応力の高さを買われ、現在はTOYOTA GAZOO RacingからWECのHYPERCARクラスに参戦している。
F1同様、ぶっつけ本番でのレースとなるスーパーフォーミュラのデビュー戦。世界選手権も制した実力派がどのようなレースを見せてくれるのかに注目が集まる。また、最終戦となる第8戦と第9戦では再び平良がステアリングを握るという。
山下健太が7年ぶり2度目のポールポジション獲得!
土曜日の予選は天気に恵まれるも、気温35度、路面温度46度と高温の中行われた。予選Q1Aグループには前戦優勝でランキング2位の坪井翔(VANTELIN TEAM TOM’S)、午前のフリー走行で首位の山下健太(KONDO RACING)、ランキング4位の岩佐歩夢(TEAM MUGEN)が出走した。
そんなAグループでトップタイムを叩き出したのは前戦トラブルで出走できなかった太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)。鬱憤を晴らすような走りを見せ、トップでQ2進出を決めた。
好調山下は2位、以下、大湯都史樹(VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)、坪井、佐藤蓮(PONOS NAKAJIMA RACING)、国本雄資(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)がQ2進出。
そんな中、岩佐は国本のタイムに0.002秒及ばず7番手。グループの中では1番最初にアタックした岩佐だったが、後続にタイムを更新され痛恨のQ1敗退となってしまった。
Q1Bグループにはポイントリーダーの野尻智紀(TEAM MUGEN)やデビューレースとなるデ・フリースらが出走。
Bグループのトップは牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)。Aグループの太田に続き、ダンディライアン勢が共にQ1をトップでQ2に進出を決めている。2位には野尻、以下、福住仁嶺(Kids com Team KCMG)、山本尚貴(PONOS NAKAJIMA RACING)、阪口晴南(VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)、小高一斗(KONDO RACING)がQ2進出。
デ・フリースはターン1のブレーキングでタイヤをロックするなどのミスもあり9番手でノックアウト。予選後にはブレーキに関してまだ掴めていない趣旨の発言があり、決勝ではまとめ上げれるかが鍵となる。
ポールポジションが決まるQ2では残り3分を過ぎたあたりで各車アタックに入った。トップタイムが次々と更新される中、大湯が1分32秒091でトップタイムを叩き出しポールポジション獲得かに思われた。
しかし、後方から山下が1分31秒995で大湯のタイムを更新。デビューイヤーに獲得して以来、実に7年ぶりとなるポールポジション獲得となった。2番手は太田が食い込み、大湯は最終的に3番手となった。
2024年 スーパーフォーミュラ 第5戦 予選結果(Q2)
1 山下健太 KONDO RACING 1’31.995
2 太田格之進 DOCOMO TEAM DANDELION RACING 1’32.074
3 大湯都史樹 VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING 1’32.091
4 野尻智紀 TEAM MUGEN 1’32.151
5 牧野任祐 DOCOMO TEAM DANDELION RACING 1’32.173
6 山本尚貴 PONOS NAKAJIMA RACING 1’32.238
7 小高一斗 KONDO RACING 1’32.248
8 坪井翔 VANTELIN TEAM TOM’S 1’32.278
9 佐藤蓮 PONOS NAKAJIMA RACING 1’32.307
10 福住仁嶺 Kids com Team KCMG 1’32.379
11 阪口晴南 VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING 1’32.416
12 国本雄資 ITOCHU ENEX TEAM IMPUL 1’32.517
ダンディライアンによる戦いはまさかの結末に
決勝日は天気が読めない状況ながらドライコンディション。気温33度、路面温度37度と前日や例年のもてぎラウンドに比べると低めで予選とはまた違った勢力図になる可能性も秘めたレースとなった。
37周で行われる決勝レースはポールシッターの山下がホールショットを奪い、太田、牧野とダンディライアンの2台が続く。後方ではスタートを決めた岩佐が坪井と接触するも両者そのまま走行を続ける。
トップ集団は等間隔のままレースを周回。ピットウィンドウがオープンとなる10周目になると、2番手につける太田が真っ先に動いた。
山下、そしてチームメイトである太田がピットに入ったことで必然的にステイアウトとなった牧野が2位となる。
上位勢で真っ先にピットインを行なった太田は新しいタイヤでハイペースで周回。ステイアウト組の後半の追い上げを防ぐため、できる限りギャップを広める作戦だ。
一方、トップの山下と2位牧野は後半フレッシュタイヤで追い上げるためにステイアウト。しかし、後方では太田が凄まじい速さで周回し、ギャップを広げていた。
そんな中、17周目のターン4で阪口がスロットルトラブルによりスローダウンしコース外に停止。コース外といえど際どい位置であることから、セーフティカーが出動される可能性が出たため、各陣営がピットストップに備えていく。
しかし、結果的にダブルイエローで車両の処理が完了したことでセーフティカー出動とはならなかった。
そして22周目、2位走行中の牧野がピットストップを敢行。牧野の動きに反応した山下も翌23周目にピットに入るも、牧野の先行を許してしまった。
ピットストップが完了したトップ集団の順位は太田、大湯、牧野、山下という並びに。太田は早めに動き、すでに2位以下に11秒ものマージンを稼いでいた。あとはタイヤが新しいステイアウト組の猛追を防ぐのみとなる。
コース復帰後、大湯に先行された牧野だが、タイヤの性能差は歴然で、25周目に大湯を攻略し2位に浮上。これでダンディライアンのワンツー体制が構築された。
驚異的なペースで追い上げる牧野は、11秒あった太田との差を縮めていき、残り4周の時点で太田の背後にまで接近。最終盤にして同じチームによる激しい優勝争いが繰り広げられた。
残り3周では両者OTSを使いながら一進一退の攻防を見せる。OTSを丸々1周使い勝負に出た牧野だったが、太田が執念のブロックでトップを死守。両者OTSがほぼ無くなったこと、そしてオーバーテイクが難しいレイアウトということもあり、太田が見事な走りで優勝するかに思われた。
しかし、残り2周のダウンヒルストレートからの90度コーナーにかけてドラマが待っていた。トップのまま90度コーナーのブレーキング、ファイナルラップに入ろうとしていた太田がまさかのスピン。
最終盤にきてまさかのスピンを喫しリタイアしてしまった太田。無線ではスロットルトラブルが発生したようだ。無情にも最後の最後でトラブルに見舞われてしまった太田は無念のリタイアに終わってしまった。
スピンした太田をよけ、トップに立った牧野は順位を守り切りトップチェッカー。今季2勝目を挙げた。
今シーズン悲願の初優勝を挙げた際は感情を爆発させた牧野だったが、この2勝目には笑顔がなかった。残り3周でオーバーテイクできなかったこと、そして太田のトラブルによる優勝とあって複雑な優勝。しかし、この優勝でランキング2位に浮上し、タイトル獲得も見えてきた。
2位にはポールポジションからスタートした山下、3位にはランキング首位の野尻が入った。以下、4位は山本、5位坪井、6位大湯、7位には予選から立て直した岩佐が入っている。
2024年 スーパーフォーミュラ 第5戦 決勝結果(トップ10)
1 牧野任祐 DOCOMO TEAM DANDELION RACING 37周
2 山下健太 KONDO RACING +1.603
3 野尻智紀 TEAM MUGEN +4.261
4 山本尚貴 PONOS NAKAJIMA RACING +4.992
5 坪井翔 VANTELIN TEAM TOM’S +12.728
6 大湯都史樹 VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING +18.322
7 岩佐歩夢 TEAM MUGEN +20.062
8 小高一斗 KONDO RACING +23.838
9 福住仁嶺 Kids com Team KCMG +24.622
10 佐藤蓮 PONOS NAKAJIMA RACING +27.471
[ アルバム : 2024年 スーパーフォーミュラ 第5戦 はオリジナルサイトでご覧ください ]
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