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かくして自分仕様のブガッティ シロンが出来上がる

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かくして自分仕様のブガッティ シロンが出来上がる

“究極の存在”であるシロンのオーダーは「カーデザイナー」による案内の元、モルスハイムの本社アトリエでじっくり仕様を検討するという。超VIPしかできないそんなビスポーキングの一部の、顧客が実際に行うコンフィグレーションのプロセスを、本社アトリエと西川家のアップルをオンラインで繋いで体験した。シロン・ピュアスポーツをオーダーしたブガッティの顧客(気分)になって、“西川仕様”を仕立てていくのだ。

ビスポークプログラムがスタンダード

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この20年間でおそらく200回以上、海外試乗会に参加してきたけれど、最も記憶に残っているイベントは? と聞かれたならば、2017年3月のブガッティシロンのそれを挙げる。総合的な印象では他にも素晴らしいイベントは沢山あったけれども、やっぱりクルマが凄すぎた。旅行に出かけていたわけじゃない。試乗に出かけていたのだから、クルマそのものが凄いイベントが最上位になるのも当然だろう。

シロンがいかに凄まじいクルマだったかは、その時のリポートを併せて閲読してほしい。2016年3月にワールドプレミアされたシロンの概要を振り返るとこうなる。最高出力1500ps、最大トルク1600Nm、最高速度420km/h以上、0→100km/h加速2.5秒以内。500台の世界限定販売。ベース価格は240万ユーロ(ネット)。

ベースモデルを語るだけでも凄まじいのに、シロンはこののち大きく進化している。トラックパフォーマンスをより重視したシロン・スポーツや、時速300マイルの壁を突破したスーパースポーツ+300、軽量ハンドリング重視の最新グレードであるシロン・ピュアスポーツ、さらにはワンオフやごく少量の限定車など併せて500台限定の残り枠はかなり少なくなってきた。ディーヴォやチェントディエチといった派生モデルも存在する(こちらもごく少量限定)。

そして既報通り、最新のCIを用いたショーケースも東京にオープンし、身近になったとは言わないまでも、ガラス越しに“生シロン”を覗き見できる環境にもようやくなっている(既に日本にも10台前後が輸入されていると思うが、現物の走る姿などそうそう見ることはない)。

そんな折もおり、ブガッティ本社から筆者にとあるオファーが届いた。広報担当曰く、「オーナー気分でシロン・ピュアスポーツのコンフィグレーションをやってみないか?」。

ブガッティをオーダーするような多くの超VIPは、我々の想像を絶する世界の住人だ。以前、ブガッティの幹部からこんな話を聞いた。「高級車のオーナーは一流のブランド品を身につけ5つ星ホテルへ愛車で行き3ツ星レストランで食事をする。ブガッティのオーナーはと言えばオートクチュール品を身につけ自ら所有するリゾートホテルへ行き専属シェフの食事を楽しむ」。

ブガッティはいつ乗るの? と思わず尋ねたくなったが、それはさておき、そんなカスタマーばかりなのだから当然オーダーも凝ったものが多い。過去に同じ仕様の個体を2台作ったためしがない。そして顧客のほとんどがアルザスはモルスハイムにある本社にプライベートジェットか何かでやってきて、テストドライブを含む様々なプログラムを楽しんだのちアトリエでじっくり仕様を検討するのだという。

今回はそのアトリエと我が家のアップルをオンラインで繋ぎ、顧客が実際に行うコンフィグレーションを体験してみようという企画であった。

アトリエまで直接出向くカスタマーが多いとは書いたが、もちろん世界に27箇所ある(しかない)ディーラーでもコンフィグレーションは可能で、顧客はまずディーラーである程度イメージを固めてから、そのままオーダーするか、あるいはアトリエに出向く代わりに今回のようなオンライン相談するか、というパターンもある。高級ブランドのビスポークプログラムがブガッティではスタンダードというわけだった。

カーデザイナーが一緒になって考えてくれる

オンラインでアトリエを案内してくれたのはJascha Straub氏で、すべてのビスポークオーダーを管理するキーパーソンだ。彼とコミニュケートしない顧客は稀、というから彼に相談すれば万に一つにも同じ仕様のシロンが出来上がることなどない。

と、ここまではどこのブランド(のスペシャルプログラム)でもよくある話。ブガッティがユニークなのは、Jaschaがセールス担当でありながら本職は実はカーデザイナーであるという点だ。実際、シロンの派生モデルであるディーヴォやチェントディエチを担当した実績もあるという。

つまり優れたカーデザイナーが愛車のコンフィグレーションを一緒になって考えてくれるというのだから、これほど頼もしい決め方はない。筆者も以前、自分のクルマの仕様を決める際に“職権乱用”して担当したデザイナーに直接相談したことが何度かある。自分の好みを反映させるにしても、その組み合わせが本当にクルマとマッチするのかどうか、最も詳しいデザイナーが判断してくれることほど安心できるものはないからだ。もちろん、高いオプションを売りつけるだけの計算高い営業マンと攻防する面倒からも解放される。

某日。モルスハイムのアトリエと“つながった”。それからの1時間だけ、筆者はシロン・ピュアスポーツをオーダーしたブガッティの顧客(気分)になったのだった。

外装色から選んでいくのが合理的

シロン・ピュアスポーツはシロンファミリィ最新のシリーズである。少量の限定生産モデルを除けば、シロンファミリィの柱は4シリーズで、ノーマルのシロン、シロン・スポーツ、シロン・スーパースポーツ+300、そしてこのシロン・ピュアスポーツだ。現時点で他の限定モデルも含めすべて完売している、という。ということはファミリィ総数で500台という限定生産の残り枠もあとわずか。この後、さらに凄いシリーズや限定車が出てくるのかも知れない。

この手のビスポークプログラムにおいて、最初に決めることといえばほぼ100%、エクステリアカラーである。もちろん内装色だけは絶対に譲れない色があって、それに最もマッチする外装色を選ぶという人もいるだろうが、Jaschaもまずは外装色から選んでいくのが合理的だと言っていた。

シロンの場合、モノカラーか2トーンか、まずはどちらかを選ぶ。顧客の8割が2トーンをチョイスするらしい。筆者は無類の2トーン好きなので、迷わずそれを選ぶ。

ここからが本当の色決めだ。既に自分の好みがはっきりしている場合は、メインカラーのイメージを伝えることになるが、いくつか候補がある場合、まずはセカンドカラーから決めると後がラクらしい。しかもセカンドカラーは言ってみれば下半身なのでダークカラーがオススメで、ピュアスポーツの場合はヴィジブルカーボンを推奨している。

一応、カタログカラーというものもあって、シロンの場合、34色のパレットがあった。うちヴィジブルカーボンは7色。もちろん、この中にイメージの色がなければJaschaと相談しながら色を作っていくことになる。早い顧客で半時間、長い顧客だと数カ月、仕様決定までに掛かるという所以だ。

はっきりと青だとわかるが濃いめのカーボンをセカンドに選ぶ。というのも個人的なイメージでパープルかブルーを使った2トーンにしようと決めていたから。パープルだと色作りからやらなければならないので、今回は時間の都合でパス。

いよいよメインカラーのチョイスだ。ブルーの場合はゴールド系を組み合わせたいと密かに思っていたところ、Jaschaから4パターンの提案を受ける。いずれもブルーカーボンにぴったりの提案だったが、ここは初志貫徹でシャンパンゴールド系の色に。

エクステリアの大枠イメージが決まったところで、ピュアスポーツというシロンの中ではどちらかというとスポーツイメージの強いグレードながら、西川仕様の路線は逆張りのラグジュアリィだね、ということでJaschaと最終仕様のイメージを共有しておく。そうすることで、この後のディテール提案がしやすくなるのだ。

続けてエクステリアの細かな点、ホースシューグリル、サイドのCブガッティライン、ホイールタイプと色、ホイールのディテール、ブレーキキャリパー、リアウィング、ウィングのロゴ、リアのテールランプまわりなどを決めていくのだが、そのたびに部位ごとのデザインの意味や採用された背景をJaschaが説明してくれるのでとても興味深い。

エクステリアが決まったらインテリアだ。ラグジュアリィ路線であることを再度確認したうえで好みのカラーを聞かれる。ボディカラーと同系色がいいと伝えると早速、いろんなパターンを提案してくれた。ベースはブラックのアルカンターラで、アクセントにボディ同系色のカッパーを入れ、カーペットをもう少し明るいブラウンにする。

そこまで決まると、ステッチやロゴ刺しゅう、サイドステップ、スカッフプレート、ステアリングホイール、シートベルトなどはほとんど自動的に決まっていく。無闇にいろんな色を使わないことが成功の秘訣だとJaschaが教えてくれた。

ちなみにインテリアカラーにもカタログ色というものがあって、レザーとステッチは32色、カーペットは19色、シートベルトは11色予め用意されているのだが、もちろん、その中に好みの色がないのであれば特注することも可能だ。

最後にシートタイプを選んだ。スポーティなバケットシートもあるが、躊躇うことなくコンフォートを選ぶ。デザイン的には同じだが座り心地が違うという。アトリエに出向けば実際に座って確かめられるのだが、多くの顧客がコンフォートを選ぶらしい。

かくして西川仕様のシロン・ピュアスポーツが出来上がった。実物を見てみたい! と思う仕様になったと思うが、どうだろう?

後日。Jaschaからスペシャルレンダリングも送られてきた。筆者の名前をNishi Kawajunと妙なところで切ったこと以外、彼は完璧な営業マンだと思う。

文・西川淳 写真・Bugatti Automobiles 編集・iconic

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