■咲いては散った、かつての高級セダンたち
近年の国内市場ではミニバンやSUV人気に押され、セダンのラインナップは縮小傾向です。
ちょいワルオヤジに乗って欲しい! シブくてナウい国産セダン3選
しかし、かつては国内メーカー各社から多数のセダンが販売されており、高級なモデルもありました。
そこで、いまはなき高級セダンを5車種ピックアップして紹介します。
●マツダ「センティア/MS-9」
1980年代のバブル景気のころは、トヨタと日産以外の自動車メーカー各社も、商品のフルラインナップ化を進めていました。なかでもマツダは販売チャネルを5つまで増やし、ラインナップを一気に拡充する戦略でした。
そうしたなか1991年5月に登場したのがプレステージセダンのマツダ「センティア」と、兄弟車のアンフィニ「MS-9」です。
センティアは全長4925mm×全幅1795mm×全高1380mm、ホイールベース2850mmと、堂々たるサイズのFRセダンで、当時のトヨタ「クラウン」よりも大型でした。
外装は曲面を多用した重厚感あるデザインで、マツダのフラッグシップにふさわしく、シャシも新たに4輪マルチリンク式サスペンションを採用しています。
エンジンは新開発の2.5リッターもしくは3リッターV型6気筒を搭載し、トランスミッションはファジー制御のオートクルーズ機構を備えた4速ATのみ。
その後、1995年に第2世代にスイッチするも、バブル崩壊に伴って米フォード傘下に入ったマツダは、センティアの販売不振に耐えきれず、2000年に生産を終了。以降、FRの大型セダンから撤退しました。
●トヨタ「プロナード」
トヨタ「プロナード」は、2000年から輸入販売された北米トヨタのトップモデルです。現地で生産されていた「アバロン」の新型でしたが、日本では車名をアバロンからプロナードに変更して販売されました。
ボディサイズは全長がクラウンに近い4895mmで、全幅は「セルシオ」並みの1820mmというワイドさで、サイドウインドウの角度を起こしたことにより、極めて広い室内幅を実現。
その恩恵で、前後席とも3人掛けのベンチシート6人乗り仕様がラインナップされました。
搭載されたエンジンは、全グレードとも215馬力を発揮する3リッターV型6気筒で、これをフロントに横置きにして前輪を駆動するFFとなっています。
またサスペンションは4輪ストラットのオーソドックスなタイプですが、上級グレードには4本のショックアブソーバーを独立制御する「スカイフックTEMS」を備え、ロードホールディング性能と乗り心地を同時に高めていました。
装備も豪華仕様で、本革シートが設定されるだけでなく、全車運転席にパワーシートを採用。DVDナビゲーションを標準装備するなど、高級FFセダンというキャラクターです。
しかし、売れ行きは好調ではなく、2004年に販売を終了することになりました。
●ホンダ「インスパイア/セイバー」
1989年、ホンダは「アコード」が4代目にモデルチェンジするのを機に、上級車種として「アコードインスパイア」を発売します。
そして1995年に2代目へモデルチェンジすると、アコードの名が取れ「インスパイア」と姉妹車「セイバー」として独立。
この代からアメリカでもアキュラ「TL」として販売が開始されます。
そして1998年に、インスパイア/セイバーは早くも3代目にモデルチェンジされるのですが、この3代目は開発から生産に至るまで、すべて米国ホンダが主導したモデルであり、TLは日本仕様に仕立てられて輸入販売されました。
ボディサイズは全長4840mm×全幅1780mm×全高1420mm、ホイールベース2745mmとやや大型で、搭載されたエンジンは225馬力を発揮する3.2リッターと200馬力2.5リッターのV型6気筒を設定。
外観はアコードとくらべてスマートな印象があり、低いボンネットのフロントフェイスからリアに至るまで、流れるようなラインが特徴的なデザインでした。
その後、2003年の4代目インスパイアの発売でセイバーが統合され、2007年に発売された5代目をもってインパイアは消滅してしまいます。
■かつてのフラッグシップも消滅してしまった……
●三菱「デボネア」
「走るシーラカンス」と揶揄されてきた三菱が誇る高級セダン「デボネア」が、登場から22年目にして初のフルモデルチェンジを受け、1986年に2代目が登場します。
それまでのFRからFFにスイッチされ、ようやく時代に追いついたセダンに生まれ変わりました。
当初、搭載されたエンジンは105馬力の2リッターと150馬力の3リッターV型6気筒で、4速ATのみを設定。
3リッター車のサイズは全長4865mm×全幅1725mm×全高1425mm、ホイールベース2730mmで、足まわりは前がストラット式、後は3リンク式固定軸です。
デザインは直線基調のいかにもセダンというスタイルで、先代からくらべるとだいぶモダンになりましたが、スタイリッシュとはいい難いものでした。
2代目デボネアで有名だったのが、メルセデス・ベンツでお馴染みのAMG監修による「デボネアV-AMG」が販売されていたことです。さらに、ストレッチリムジンも販売されました。
その後、1992年に3代目にモデルチェンジされましたが、さらに販売は低迷。2000年に発売された新たなフラッグシップ、「プラウディア/ディグニティ」の誕生で、デボネアは1964年から1999年までの長い歴史に幕をを閉じました。
●日産「プレジデント」
1965年に初代が登場した日産「プレジデント」は、ショーファードリブン車としてトヨタ「センチュリー」と覇権を争う国産高級車の代表でした。
そして、1990年に3代目が登場。「インフィニティQ45」をベースに開発された、新世代のプレステージセダンとなります。
アグレッシブなデザインのインフィニティQ45に対し、プレジデントはフォーマルな装いのフロントグリルが取り付けられ、ホイールベースを150mm拡大してVIPのための後席寸法を稼いでいます。
ボディサイズは全長5225mm×全幅1830mm×全高1425mm、ホイールベース3030mmと巨大で、搭載されたエンジンは270馬力を発揮する4.5リッターV型8気筒のみでした。
2003年には「シーマ」をベースにした4代目に生まれ変わり、ボディサイズは全長5060mm×全幅1845mm×全高1500mm、ホイールベース2870mmで、重厚な専用デザインのフロントグリルが装着されます。
その後、2010年にシーマとともに販売を終了(シーマは後に復活)。長い歴史を誇った日産のショーファードリブン車は消滅してしまいました。
※ ※ ※
冒頭にあるとおり、セダンは減少傾向にあります。三菱はすでにセダンの生産から撤退し、トヨタも2019年をもって「マークX」の販売を終了しました。
しかし、セダンがなくなるわけではなく、ホンダは2020年2月に新型アコードを発売し、日産も「スカイライン」を大幅に改良するなど、復活の兆しもあります。
ドライビングプレジャーという点でセダンは優れているので、子育てがひと段落した世代が、ミニバンからセダンに乗り換えるという需要が、今後出てくるかもしれません。
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