この記事をまとめると
■マクラーレンはアルティメットシリーズ第5弾として2019年に「エルバ」を発表
マクラーレンのスーパースポーツ「エルバ」は復活車名だった! 1960年代に生み出された「元祖エルバ」とは
■マクラーレン・エルバは独自の機能「AAMS」によりウインドウスクリーンをもたない
■最高出力は815馬力で0-100km/h加速2.8秒の限定モデル
マクラーレンのアルティメットシリーズ第5弾
マクラーレンから、「エルバ(Elva)」と呼ばれるオープントップのロードモデルが発表されたのは、2019年のことである。フランス語で「彼女が行く」という意味をもつエルバの名は、マクラーレンにとっては1964年から1967年にかけて開発され、実際にはやはりイギリスのエルバ社に製作が依頼された「M1A」、「M1B」、「M1C」に由来するリバイバル。マクラーレンのファンにとっては、それだけでも高い趣味性を感じさせるモデルだった。
エルバはF1、P1、セナ、スピードテールに続くアルティメットシリーズの第5弾であり、もちろんそれは限定生産を前提に企画、開発が進められた。生産台数はアラブ首長国連邦のドバイで行われたワールドプレミアの時点では399台と発表されていたが、のちにその数字は249台へと修正。それがどのような理由によるものであるのかはマクラーレンからは明らかにされることはなかった。
エルバの最大の特長といえるのは、やはりその独特なエアロダイナミクスの処理だろう。世界初の機構となるAAMS(アクティブ・エア・マネージメント・システム)を採用したことで、フロントノーズから導入されたエアはフロントのクラムシャルから高速で乗員の前方半径130度のエリアに排出。同時に上方に流れたエアはコクピットの上部を通過するため、走行中のキャビンはまさに泡で包まれたかのような快適性が得られるという。
フロントのクラムシェルは、このAAMSにとって不可欠な要素であるとともに、左右ドアの前部にはエアインテークを備え、これは後輪の前にレイアウトされるデュアル・インタークーラーへとエアを導く役割を担う。
また、リヤにはアクティブリヤスポイラーも装備されており、これはエアブレーキの機能ももち合わせるため、ブレーキング時にはブレーキ本体による制動力の負荷が低減されるほか、より安定した姿勢を作り出すことにも貢献する。フラットな足まわりもまた、エアロダイナミクスの向上には大いに役立っているポイントといえる。
全長×全幅×全高で4610×1943×1087mm。ホイールベースでは2670mmが設定されたエルバの乾燥重量は、基本構造体となるセンターモノコックを始め、ボディ全体やシートなどをCFRP製としたことや、チタン製のブレーキキャリパーの採用などの徹底した軽量化により1148kgという数字を達成。やはり、カーボンファイバー製のステーによって左右に完全に分割されたキャビンにも、じつにレーシーな雰囲気が醸し出されている。
ウインドウスクリーンを装備したモデルを追加
安全システムとしては、ロールオーバー時に自動的に展開する、ロールオーバープロテクションシステムが標準装備されるほか、サーキット走行を楽しみたいカスタマーのためには、6点式シートベルトをオプションで選択することも可能とされた。
ミッドに搭載されるエンジンは、セナやスピードテールと共通の4リッター V型8気筒ツインターボ(M840TR型)だが、その最高出力はセナ比でプラス15馬力の815馬力にまで強化されている。エキゾーストシステムはチタンとインコネルで作られており、これもまたエルバの軽量化には大きく貢献しているパート。一方、は電子油圧式のパワーアシストを備え、実用性を高めている。
エルバのデリバリーは2021年に、まず中東市場から開始され、同年にはすでに発表されていた、フロントのウインドウスクリーン付きモデルの生産も開始された。これはそもそも物理的なフロントウインドウスクリーンを好むカスタマーのためであると同時に、一部輸出国の法的な規制を満たすためのモデルで、車重はワイパーやガラスヒーターなどの装備に伴い、スタンダードな仕様よりも約20kg増加することになったが、結果的には249台のエルバのなかで149台がその仕様で生産された。
0-100km/h加速を2.8秒で、また0-200km/h加速においても6.7秒でそれを終了するマクラーレン・エルバ。その最高速は335km/hとこれもまた魅力的な数字。
一連のアルティメットシリーズのなかでも、もっともスパルタンな趣に満ち溢れたエルバ。その存在はいまでも多くのマクラーレンファン、そしてハイパーカーファンの心を捕えて離さない。
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