現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 開発部門トップが語る「シアン FKP37」に込めたランボルギーニの決意

ここから本文です

開発部門トップが語る「シアン FKP37」に込めたランボルギーニの決意

掲載 更新
開発部門トップが語る「シアン FKP37」に込めたランボルギーニの決意

「シアンとはボローニャ地方の古いスラングで、稲妻の光を意味しています。イタリア人はもちろん、ボローニャの人でも今、この言葉の意味の分かる人は恐らくもういないんじゃないでしょうか(笑)」。

シアン FKP37はV12ランボルギーニ史上もっとも重量対出力比が高く、2.8秒未満で0-100km/hまで加速する。最高速度は350km/h以上。ところはフランクフルトショーのランボルギーニブース内。階段を上がったラウンジの個室で、マウリツィオ・レッジャーニは笑顔で語り始めた。彼は98年にアウディ傘下となったランボルギーニ社においてムルシエラゴの開発責任者を皮切りに、以降すべてのモデル開発に関わっており、今では開発部門のボス(テクニカル・チーフ・オフィサー)でありナンバー2としてCEOのステファノ・ドメニカリと並んで“会社の顔”とも言うべき存在である。アウディ傘下以降の大躍進を支えた、そして全てを知る人物だと言っていい。

モーターショーというコンテンツはもはや終焉を迎えた? 令和を迎え変革が求められる自動車業界でのモーターショーのあり方を考える

エクステリアはカウンタックからインスピレーションを受けたデザイン。63という数字があしらわれているのからも分かるように、次世代に向けたランボルギーニのスタンスが感じられる。ランボルギーニ初のハイブリッドスーパーカーに、伝統に則った闘牛の名前ではなく、ボロネーゼのスラングを使った。思い出すのはクンタッチ(カウンタック)の故事だ。ベルトーネのスタジオがあったトリノ、近郊の村の納屋で急ぎ仕立てられたプロトタイプは、ピエモンテ地方の古い方言で“すごい!”という意味のクンタッチと名付けられることになった。そのクルマによってランボルギーニのブランドイメージが確立され現代に至っている。ランボルギーニが初のハイブリッドモデルを世に送り出すに当たり、そこにクンタッチ当時と同じくらい“熱量”を込めて新世代の到来を高らかに宣言したかった、と察すれば、シアンというネーミングにも納得がいくというものだ。

ちなみに、サブネームとして急遽、FKP37という見慣れない文字数字が加わっている。これは、8月末に亡くなった1937年生まれのフェルディナント・カール・ピエヒ氏(FKP)を追悼するもので、「99年のアウディによるブランド買収が、今日の再生のきっかけであったことに感謝するものです」(レッジャーニ氏)、ということらしい。

リアに装備されている冷却用のベント・フラップには、ランボルギーニが「スマート・マテリアル」と呼ぶ新素材を使った特許技術を使っている。設定された温度に対して自動で開閉し、温度調節を担う。あくまで、もっと速くシアンFKP37は、確かに電気モーターを備えたランボルギーニ初のハイブリッドモデルだ(ベースがアヴェンタドールであることはフロントウィンドウの形状で分かる)。重いバッテリーの代わりに効率のいいスーパーキャパシタを用いた点が最大の特徴である。けれども、スーパーキャパシタそのものは既にアヴェンタドールに搭載されていたことを忘れてはならない。アイドリングストップの始動補助としてごく出力の小さいキャパシタが使用され、以来、さらなる活用に向けて開発が続けられてきたテクノロジーである。

アヴェンタドール用に比べて10倍のパフォーマンスが与えられたスーパーキャパシタは、カーボンモノコックボディのリアバルクヘッド部分に装備され、34psを発揮する48V電気モーターを駆動する。

「今回のハイブリッド化の主な目的は、CO2削減よりもむしろ、パフォーマンスアップをいかに軽く効率的に行なうか、でした」。レッジャーニによると、低速域や後進で電動走行を可能(時速8キロメートル以下)としたことで、よりスムーズなドライブも可能となったという。「また、ISRトランスミッションの欠点であった、シフトアップ時の段付きも、モーターによって細かく補正し、より滑らかで素早い変速ができるようになっています」。

モーターを組み合わせたことで、シングルクラッチ系トランスミッションの欠点を補えるというわけだが、これによってISRミッションが将来引き続き採用されるかどうかについては、レッジャーニは明言を避けている。

「私たちはテルツォミレニアムというコンセプトカーで、すでに未来における理想のランボルギーニ像を提案しています。けれども、そこに辿り着くまでにはまだまだ時間が必要です。シアンはそのようやく第一歩なのです」(レッジャーニ氏)。

レギュレーションが許す限り12気筒エンジンを守りながら、徐々にステップを重ねていくつもりなのだろう。

シアン FKP37の生産台数は、創業年にあやかって世界わずかに63台。邦貨にして3億円近くという価格にも関わらず、昨年半ばに世界のVIP顧客にクレイモデルによるプレゼンが行なわれ、ほとんど即時に完売した。また、すでにシアン・ロードスターの開発も進んでおり、こちらは世界限定20台程度となる予定で、もちろん、こちらも完売というウワサ。

文・西川淳 写真・アウトモビリ・ランボルギー S.p.A 編集・iconic

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

[BEV]計画着々と進行中!? トヨタが福岡県に[BEV]電池工場を新設
[BEV]計画着々と進行中!? トヨタが福岡県に[BEV]電池工場を新設
ベストカーWeb
アストンマーティン・ヴァルキリーのデビュー戦とふたりのドライバーが決定。IMSAはデイトナを欠場へ
アストンマーティン・ヴァルキリーのデビュー戦とふたりのドライバーが決定。IMSAはデイトナを欠場へ
AUTOSPORT web
モリゾウがトヨタを激励。豊田スタジアム新コースでの“人力パワー”に観客から拍手/WRC写真日記
モリゾウがトヨタを激励。豊田スタジアム新コースでの“人力パワー”に観客から拍手/WRC写真日記
AUTOSPORT web
「エニカ(Anyca)」サービス終了…カーシェアはどこへ向かうのか?
「エニカ(Anyca)」サービス終了…カーシェアはどこへ向かうのか?
ベストカーWeb
オジエが豊田スタジアムステージの苦手意識を明かす「僕たちはいつも遅い」/ラリージャパン デイ1コメント
オジエが豊田スタジアムステージの苦手意識を明かす「僕たちはいつも遅い」/ラリージャパン デイ1コメント
AUTOSPORT web
オヤジむせび泣き案件!! ホンダの[デートカー]が帰ってくるぞ!! 新型[プレリュード]は究極のハイブリッドスポーツだ!!!!!!!!!
オヤジむせび泣き案件!! ホンダの[デートカー]が帰ってくるぞ!! 新型[プレリュード]は究極のハイブリッドスポーツだ!!!!!!!!!
ベストカーWeb
ラリージャパン2024が開幕。勝田貴元が新レイアウトのスタジアムステージで3番手発進/WRC日本
ラリージャパン2024が開幕。勝田貴元が新レイアウトのスタジアムステージで3番手発進/WRC日本
AUTOSPORT web
N-VANより安い200万円以下!? スズキ新型[エブリイ]は配達業を助ける!! 航続距離200kmのBEVに生まれ変わる
N-VANより安い200万円以下!? スズキ新型[エブリイ]は配達業を助ける!! 航続距離200kmのBEVに生まれ変わる
ベストカーWeb
実録・BYDの新型EV「シール」で1000キロ走破チャレンジ…RWDの走行距離はカタログ値の87.9%という好成績を達成しました!
実録・BYDの新型EV「シール」で1000キロ走破チャレンジ…RWDの走行距離はカタログ値の87.9%という好成績を達成しました!
Auto Messe Web
8年目の小さな「成功作」 アウディQ2へ試乗 ブランドらしい実力派 落ち着いた操縦性
8年目の小さな「成功作」 アウディQ2へ試乗 ブランドらしい実力派 落ち着いた操縦性
AUTOCAR JAPAN
RSCフルタイム引退のウインターボトム、2025年は古巣に復帰しウォーターズの耐久ペアに就任
RSCフルタイム引退のウインターボトム、2025年は古巣に復帰しウォーターズの耐久ペアに就任
AUTOSPORT web
ハコスカ!? マッスルカー!?「ちがいます」 “55歳”ミツオカ渾身の1台「M55」ついに発売 「SUVではないものを」
ハコスカ!? マッスルカー!?「ちがいます」 “55歳”ミツオカ渾身の1台「M55」ついに発売 「SUVではないものを」
乗りものニュース
スズキ、軽量アドベンチャー『Vストローム250SX』のカラーラインアップを変更。赤黄黒の3色展開に
スズキ、軽量アドベンチャー『Vストローム250SX』のカラーラインアップを変更。赤黄黒の3色展開に
AUTOSPORT web
元ハースのグロージャン、旧知の小松代表の仕事ぶりを支持「チームから最高の力を引き出した。誇りに思う」
元ハースのグロージャン、旧知の小松代表の仕事ぶりを支持「チームから最高の力を引き出した。誇りに思う」
AUTOSPORT web
本体35万円! ホンダの「“超”コンパクトスポーツカー」がスゴい! 全長3.4m×「600キロ切り」軽量ボディ! 画期的素材でめちゃ楽しそうな「現存1台」車とは
本体35万円! ホンダの「“超”コンパクトスポーツカー」がスゴい! 全長3.4m×「600キロ切り」軽量ボディ! 画期的素材でめちゃ楽しそうな「現存1台」車とは
くるまのニュース
リアウィンドウがない! ジャガー、新型EVの予告画像を初公開 12月2日正式発表予定
リアウィンドウがない! ジャガー、新型EVの予告画像を初公開 12月2日正式発表予定
AUTOCAR JAPAN
最近よく聞く「LFP」と「NMC」は全部同じ? EV用バッテリーの作り方、性能の違い
最近よく聞く「LFP」と「NMC」は全部同じ? EV用バッテリーの作り方、性能の違い
AUTOCAR JAPAN
アロンソのペナルティポイントはグリッド上で最多の8点。2025年序盤戦まで出場停止の回避が求められる
アロンソのペナルティポイントはグリッド上で最多の8点。2025年序盤戦まで出場停止の回避が求められる
AUTOSPORT web

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

24000.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

-万円

中古車を検索
シアンの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

24000.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

-万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村