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フェラーリ296 GTB試乗 V6で体現した新世代フェラーリ像

掲載 更新 8
フェラーリ296 GTB試乗 V6で体現した新世代フェラーリ像

V6フェラーリは「フェラーリ」なのか?

「V6モデルはホンモノのフェラーリといえるのか」

【画像】新時代のフェラーリ像【296 GTBを詳しく見る】 全220枚

新開発のV6 3.0Lエンジンを搭載した296 GTBについて、そんな疑問を抱くフェラーリファンは少なくないだろう。

歴史上、「跳ね馬」の紋章を掲げたV6モデルはいずれもレーシングカーで、純然たるロードカーは1台もないとされる。

この大原則を守るため、フェンツォ・フェラーリの夭逝した愛息ディーノが設計したV6エンジンを積むロードカーは、敢えてディーノという別ブランドが用いられたほど。

この、極めて厳格なルールを史上初めて破ったのが、ここで紹介する296 GTBである。

では、なぜフェラーリはV6エンジンを開発したのか?

その理由を、パワートレイン担当のエンジニアに訊ねてみた。

「もともとショートホイールベースのモデルを検討するプロジェクトがあり、これにあわせて全長が短いエンジンの開発に取り組みました。これが第1の理由です」

「第2の理由は効率の改善、つまり燃費の向上です。これは燃料タンクを小さくすることにも(CO2に代表される)エミッションを改善するうえでも効果がありました」

CO2排出量を低減して地球温暖化を防止することは時代の要請である。

これに対応するため、フェラーリはV6エンジン+プラグイン・ハイブリッドの新パワートレインを開発したわけだが、何の工夫もなくこれをスポーツカーに搭載すれば、車重が重くて鈍重なクルマに仕上がるおそれがある。

それを防ぐのがショートホイールベース化だったのだ。

言い換えれば、V6エンジンとショートホイールベースはセットで考案されたコンセプトだといえるだろう。

重量増に対するフェラーリの解

とはいえ、ショートホイールベースにするだけでプラグイン・ハイブリッド化に伴う重量増をすべて帳消しにできるわけではない。

ちなみに296 GTBの乾燥重量は、V8エンジンを積むF8トリブートより140kgも重い。

これを50mmのホイールベース短縮だけで解消するのは無理があるというものだ。

スポーツカーとしての軽快さを保つためにフェラーリが取り組んだもう1つの工夫は、低重心化にあったといっていい。

レーシングカーを例に挙げるまでもなく、重心の低いマシンはハンドリングがより機敏になる。

296 GTBではVバンク角を120度と広く設定してエンジン単体の低重心化を実現。

さらに、SF90ストラダーレで登場した新開発8段DCTのコンパクトなクラッチ径を活用することで、エンジンの搭載位置を極限まで低くし、低重心化を促進したのだ。

そして、これは試乗して気づいたことだが、ステアリングやスロットルペダルの操作に必要な力を軽くすることで、感覚面からも軽快感を演出しようとしている。

いっぽうで、ショートホイールベース化で懸念されるスタビリティの低下はサスペンションの設定やタイヤの特性によって最低限に留めるとともに、これまで以上にスムーズで高精度に作動するスタビリティコントロールによってスピンという最悪の事態を防ごうとしたことが、技術陣への取材から明らかになった。

ナチュラルなアジリティ

国際試乗会の最初のメニューはスペイン・アンダルシア地方にあるモンテブロンコでのサーキット走行。

今回はフェラーリにしては珍しくカルガモ走行スタイルだったが、そのペースはおそろしいほど速く、2周目には160km/hを超える高速コーナーでオーバーステアが顔を出してしまうほどだった。

このとき、わたしは軽いカンターステアで危機を乗り切ったものの、おそらくはブレーキを用いたスタビリティコントロールも軽く介入していたはず(マネッティの設定はレースモード)。

でなければ、あれほどスムーズに態勢を立て直すのは難しかっただろう。

これを除けば、296 GTBは極めて扱いやすいキャラクターに仕上がっていた。

ドライブトレインはレスポンスが良好なうえに一直線に立ち上がる出力特性のためにドライバビリティは高く、しかも8500rpmのレヴリミットまで回してもスムーズさは失われない。

おまけに等間隔爆発の120度V6が生み出すサウンドは絹のように滑らかで、わたしの知る限り、フェラーリ製ターボエンジンとしては最上の出来映えだった。

ハンドリングのレスポンスもシャープだが、ショートホイールベースや低重心化が生み出すアジリティがごく自然なうえ、ステアリングインフォメーションも豊富なため、走り始めから自信を持ってドライブできた。

もっとも、これはトラクションコントロールが利いている状態の話であって、トラクションコントロールが作動しないCTオフを低速コーナーで試したところ、脱出でいとも簡単に大オーバーステアに転じ、システム出力820psの実力を思い知らされることになった。

「新たなフェラーリ」を体現

試乗会の最後のメニューは、アンダルシアの美しいワインディングロードを200km近くも駆け巡るというもの。

ここでもレスポンスのいいパワートレインとハンドリングを満喫し、296 GTBのナチュラルなアジリティを堪能できた。

ここ10年ほど、どのメーカーもやたらとアジリティを標榜しているが、そのほとんどは、微舵応答だけを極端にシャープにすることで生み出した「人工的なアジリティ」だったような気がする。

この場合、車速や舵角などによって「アジリティの度合い」が変化するため、心ゆくまでコーナリングを楽しむことなど不可能。

わたしは、この種のアジリティは「百害あって一利なし」だと捉えている。

しかし、296 GTBのハンドリングは、それとはまったくの別物だ。

どんな状況でも一定の反応を示すため、ドライバーとしては先が読みやすく、そして安心してコーナーを攻めることができる。

正直にいえば、サーキットと違ってワインディングロードでは1度もタイヤのグリップ限界に迫ることはなかったが、それでもコーナリングを満喫できたのは、296 GTBの「天然由来なアジリティ」のおかげだったと信じている。

それにしても296 GTBのドライビングダイナミクスは実に奥深く、また完成度が高い。

ハイブリッド・パワートレインとショートホイールベースでスーパースポーツカーのまったく新しい世界を切り拓いた296 GTBは、エンジンがV6であってもホンモノのフェラーリだと断言できる。

いや、V6エンジンだからこそ新たなフェラーリ像を作り上げることができたといっても過言ではないだろう。

フェラーリ296 GTB スペック

価格:3678万円
全長:4565mm
全幅:1958mm
全高:1187mm
ホイールベース:2600mm
最高速度:330km/h
0-100km/h加速:2.9秒
燃費(WLTP):15.6km/L(欧州発表値)
CO2排出量:149g/km(欧州発表値)
車両重量:1470kg
ドライブトレイン:2992ccV6ターボ+電気モーター
使用燃料:プレミアムガソリン
バッテリー容量:7.45kWh
燃料タンク容量:65L
ICE最高出力:663ps
総合出力:830ps/8000rpm
総合最大トルク:75.4kg-m/6250rpm
駆動方式:RWD
ギアボックス:8速DCT

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みんなのコメント

8件
  • ピニンファリーナと離れてから、どうも凡庸なスタイリングなんだよなぁ。
  • V6搭載の小型フェラーリ。ディーノ246みたいなやつか、って夢を見たけど、全幅1958もあるし3700万もするし全然違うのね。短い夢だったな。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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