■市場投入予定はEQSだけではなかった!
メルセデス・ベンツは、8月にヨーロッパ市場への導入を予定している新型BEV(電気自動車)、「EQS」の概要を明らかにした。
新型SクラスのフルEVバージョンに位置づけられるEQSは、ラグジュアリーセグメントに投入されるメルセデスの新世代EV。EQSは、新開発の電動車用アーキテクチャ「EVA(エレクトリック・ビークル・アーキテクチャ)」を採用したバッテリーEV専用車である。
【画像ギャラリー】コックピットのハイテク感に驚愕! SクラスのBEV「EQS」の公開された写真(全18点)
●擬装が施されたメルセデス・ベンツ EQSのテストカー
EVAは、ホイールベースやトレッド、バッテリー、さまざまなシステムコンポーネントなどがスケーラブルで、多種多様なモデルに用いることができる。そのため今後はEVAを採用したBEV専用車が続々と登場する見込みだが、メルセデスは今回、EQSに続いてEクラス相当のBEVであるビジネスセダンのEQEと、それぞれのSUVバージョン(モデル名はそれぞれEQGLS、EQGLEになると言われている)の投入も計画していると明らかにした。
ちなみにメルセデスは、2020年5月に発表した経営戦略「Ambition 2039」において、2030年までに販売する半数以上のモデルを電動化(PHEV含む)し、今後20年以内にカーボンニュートラルな自動車メーカーとなることを目指している。
■ミュンヘン~ベルリン間をノンストップ巡航可能!?
さて本題のEQSの内容は次のようになっている。EQS 450+とEQS 580 + 4マチックという2タイプのほか、今回詳細は発表されなかったさらにパワフルなパフォーマンスバージョン(AMGモデル)も用意される。スペックは、リヤアクスルに「eATS」と呼ばれる電動パワートレーンを搭載する後輪駆動のEQS 450+が最高出力245kW(333馬力)、最大トルク568Nm。前後にeATSを備えた4WDのEQS 580 + 4MATICは、それぞれ385kW(523馬力)と855Nmになる模様だ。
最高速度は210km/hに制限されるが、動力性能はかなりのものと予想できる。eATSは3相の励起同期モーターで、4マチックモデルはリヤによりパワフルなモーターを採用。前後駆動力配分をもっとも効率的かつシームレスに制御するトルクシフト機能を搭載。eATSは前後独立制御で、駆動トルクは1分間に1万回チェックされる。またシステム電圧が400Vと高電圧で、メカニカルな4WDより遥かにすばやいレスポンスを実現する。
●EVA(エレクトリック・ビークル・アーキテクチャ)と名付けられた、EQSのBEV専用シャシー
回生ブレーキの強度は、シフトパドルにより3段階の調整が可能。また走行状況に応じてECOアシスタントが最適に制御する。ブレーキ性能は最大で5m/s2(約0.5G)で、このうち3m/s2(約0.3G)は回生ブレーキ、2m/s2(約0.2G)はホイールブレーキとなる。なお回生出力は最大290kWだ。
フロア下に敷き詰められるリチウムイオンバッテリーは、使用可能電力が90kWhと107.8kWhの2種類を設定。EQCより約26%大きい107.8kWhの仕様では、航続距離がWLTPで最大770kmに達する。これはミュンヘンからベルリンまでノンストップで走行できる性能である。ちなみに電力消費量は、EQS 450+がNEDCで16.0~19.1kWh/100km、EQS 580 4MATIC+は同16.9~20.0kWhとなっている。
●EVAの要でもあるバッテリー。電力量は最大107.8kWhで、約770kmの走行が可能となる
■バッテリーの熱管理までするとは……
このリチウムイオンバッテリーは、シュトゥットガルトのウンターテュルクハイムにあるヘーデルフィンゲン工場で生産される。ニッケルとコバルト、マンガンの使用比率が8:1:1と、コバルトの使用比率を10%に低減したこのバッテリーは、10または12の節モジュールで構成。OTAによりつねに最新状態に保たれる自社開発の革新的なバッテリー管理ソフトウェアにより、10年または最大25万kmの性能保証が与えられている。なお、ヘーデルフィンゲン工場は、2022年から自然エネルギーによる生産体制となる。
充電は22kWまでの普通充電のほか、最大200kWのDC急速充電システムに対応。最大で300kmの走行に必要な電気をわずか15分で充電出来るという。なお日本仕様はEQCに続きV2Hにも対応する。
ナビゲーションシステムを「エレクトリック インテリジェンス」とともに使用すれば、渋滞や運転スタイル、地形、天気などさまざまな情報に基づいて、充電停止を含む最速かつもっとも便利なルートを計算してくれる。さらに外気温や冷暖房需要、速度、ルート、地形などによるエネルギー需要や、充電ステーションの地点の気温、充電ステーションの数やその出力、支払い機能などを考慮し、状況変化に応じてオンボードとクラウドでの計算を組み合わせて最適なルートをはじき出す。
●クラウド経由で渋滞や天気、そして充電スポットも考慮した最適ルートを提案してくれる
エレクトリック インテリジェンスがアクティブであれば、走行中にバッテリーは熱管理システムにより余熱または冷却されて、急速充電に理想的な温度に保たれる。結果、充電時間の短縮を実現する。
■風切り音まで計算した静粛性へのこだわり
ラグジュアリーカーとしての実力も申し分なさそうだ。とてもフラットなフロントウインドーを持つ、ほぼワンモーションの4ドアクーペフォルムを持つEQSは、前面投影面積は2.51平方メートルに抑えられ、スムーズなアンダーボディやアローシェイプの前後ホイールスポイラーやリフト低減と低ドラッグを目的としたリヤスポイラー、Aピラー形状の最適化、格納式ドアハンドルの採用などにより、Cd値が0.20と量産車世界最高となっている。フロントのルーバーはBEVであるため、走行中はほぼ閉じたままだ。
●擬装が施されたメルセデス・ベンツ EQSのテストカー
また合わせガラスの採用や、サイドウインドーシールの最適化、ボディへの吸音フォーム採用、2つの遮音壁を備えたテールゲート、eATSへの特殊なフォームマットを用いたNVHカバー採用などにより、電動化により一層の風切り音低減が求められるなかで、クラストップレベルの静粛性および低振動を実現したという。
カーボンニュートラルを実現したジンデルフィンゲンの「ファクトリー56」で生産されるEQSは、リサイクル繊維を用いたフロアマットなど、総重量80kgを超えるパーツがリサイクル材または再生可能材で作られるなど、LCA(ライフ・サイクル・アセスメント)の点も十分に考慮されている。
現時点では明らかにされていないが、自動運転技術についても最先端のテクノロジーが盛り込まれるのは確実だ。EQSはプレミアムBEV市場を狙う世界中の自動車メーカーへ大きなインパクトを与えることになりそうである。
<文=竹花寿実 text by Toshimi Takehana>
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