スバルが、2020年7月6日に「WRX S4」の一部改良を発表。そのなかでは、今まで設定していた「GT」「GT-S」グレードを廃止して、「STIスポーツ アイサイト」に一本化するというニュースがあった。
2019年末に、スバルの誇る名機「EJ20」を搭載した最後のモデル「WRX STI」が生産終了したこともあり、「WRX」の将来はどうなるのか気になっているというファンも多いことだろう。
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さてこの一本化だが、売れているモデルに統合する合理化が目的だったなのか? それともほかの理由があったのか? ディーラーではこの一本化をどのように受け止めているのか? 遠藤徹氏が、その最新事情をレポートする。
文/遠藤徹
写真/SUBARU
【画像ギャラリー】ほかのグレードがかすむくらい売れている「WRX S4 STIスポーツ」の魅力をチェック!!
■STIスポーツしか売れてなかった!? WRX S4一本化のワケとスバルの抱える問題点
スバルは2020年7月6日、「WRX S4」を一部改良し発売した。中身は変えず、「GT」「GT-S」グレードを廃止、「STIスポーツ アイサイト」に一本化したものだ。廃止した2グレードは売れ行き不振で、STIスポーツのみが売れている状況が続いていたので、実情に合わせたラインアップの再編といえる。
一本化された「WRX S4 STIスポーツ アイサイト」。一本化以外の変更点は、カタログの燃費表記がWLTCモードに対応したくらいだ
2018年9月に追加された「STIスポーツ」。STIがチューニングを施したビルシュタイン製フロントストラット「DampMatic II」や、ボディ補強パーツを搭載するなどワンランク上の走りを実現している
フルモデルチェンジする次期型の発売は、2年後の2022年中盤が予想されており、それまではこのSTIスポーツ アイサイトが継続されることになる。早めの一本化は、将来の燃費規制対応との関連も指摘される。
経産省と国土交通省による合同の審議会がまとめた乗用車の次期燃費基準は、2030年度を目標に、2016年度実績と比較して約30%の燃費改善を自動車メーカーに求める値を設定している。
今回は総量規制であるから、燃費の悪いスポーツモデルでも、ほかの燃費のいいハイブリッド、電気自動車、クリーンディーゼル、プラグインハイブリッド、あるいは軽量なコンパクトモデルの低燃費車でカバーできたりする。
ところが、スバルは生産販売するオリジナルモデルがターボ、4WDなどで車重のかさむ小型車以上のモデルが多い。このため、最近ではダウンサイジングターボ、モーターアシストのマイルドハイブリッド搭載モデルを増やす方向で開発を進めている。
WRX S4が搭載している、FA20型 2L水平対向4気筒直噴ターボエンジン(300ps/40.8kgm)。燃料消費率は、WLTCモードで11.2km/Lだ
関連するつい最近までの流れでは、「レガシィB4」の生産中止、「フォレスター」と「XV」に2Lモーターアシストの「eボクサー」エンジン搭載の「アドバンス」設定などがある。
レガシイB4の生産中止は、セダン需要が縮小傾向にあるためなのが直接の要因だが、これに加えて「燃費の悪い上級モデルを廃止することで、生産車トータルの燃費を引き下げる狙いもある」(首都圏スバル店営業担当者)との見方もある。フォレスター、XVのアドバンスはマイルドハイブリッド方式の電動車両であるから、燃費改善に寄与するのは当然である。
2014年に発売されたレガシィB4(日本仕様)。2020年6月22日をもって受注を終了した
eボクサーエンジン搭載車は今後もさらに増加する傾向にある。今秋の10月にも「インプレッサ」がマイナーチェンジするが、このなかで「インプレッサスポーツ」はアドバンスとSTIバージョンの2グレードが加わる。
「XV」も同時にマイナーチェンジするが、アドバンスはすでに設定されているので、今回は安全対策を中心とした改良になると思われる。
セダンの「G4」は変更ない。アドバンスの設定も見送られる。これはもしかしたら、販売不振のためレガシイB4のようにモデル廃止に向けての布石を想定しているのかも知れない。
スバルは、2020年8月末には次期型レヴォーグの先行予約をスタートさせ、9月末の正式発売に備えている。同モデルに搭載するパワーユニットは新開発の1.8Lターボだ。従来の2Lターボ、1.6Lターボを統合した形となるが、従来の2Lターボよりトルクフルで省燃費を目指した設計となる。
東京モーターショーで公開された「レヴォーグコンセプト」。新型のエンジンはすでに明らかにされているが、新開発の水平対向4気筒1.8L直噴ガソリンエンジンを搭載する
これも、将来の燃費の総量規制に対応させたテクノロジー施策といえる。同ユニットは2021年春にも発売する「次期型レガシィアウトバック」にも搭載されるはずだ。
北米仕様の新型アウトバック。スリーサイズは全長4841×全幅1839×全高1501mmと、現行モデルとほぼ同じ車格をキープしている
2022年中盤には「次期型WRX S4」も登場すると思われる。こちらに搭載するパワーユニットはまだ明らかになっていないが。現行の2Lターボは見送られる可能性が強い。燃費が悪く、総量規制に対応しにくいからである。
新たに開発中の2.4Lターボという情報もある。性能向上と省燃費を高次元で両立させるには、排気量を拡大したほうがかえって好都合といった理由によるものと思われる。
■新型はいつ!? 販売現場が語るスバル最新事情
●証言1:首都圏スバル店営業担当者
今回のWRX S4のSTIスポーツへの一本化は、ほかの2グレードを廃止しただけで、内容の変更はほとんどない。
次期型はメーカーから正式な連絡はないが、2022年中盤あたりの投入を予想している。早めの統合、一本化は売れているのはSTIスポーツだけで、ほかの2グレードの購入希望ユーザーはほとんどいない状況だから、こうした方法はやむを得ないだろう。
ポテンシャルの高い走りのよさを代表するモデルであり、モータースポーツの参戦にも欠かせないので、次世代モデルの開発にも力を入れているはずである。
ただスバルにとって厳しいのは、燃費の総量規制への対応である。軽量化、電動化などで対応しているが、性能向上、4WD、安全対策強化などの技術的課題はこれに逆行する側面がある。
ほかのメーカーのように電気自動車、ハイブリッド、クリーンディーゼル、コンパクトクラス車の投入などで、生産する車両の燃費改善をカバーできるが、この面ではスバルは遅れているので、燃費の悪い車種削減で一時的に対応せざるを得ない状況にある。
◆ ◆ ◆
今回の一本化は、最も売れている「STIスポーツ」への合理化という理由であった。しかし、新型の開発もされており、こちらは2022年中盤の登場が見込まれている。どう環境規制に対応していくのかについても、注目すべきポイントとなりそうだ。
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みんなのコメント
というか本当の問題は生産体制で、もっと効率よく増産できる体制に改変しないと、今後もいらぬ苦労が続くね。
ランエボが消えたように、役目は終わっている