各社パフォーマンス強化のパワートレインとしてV8+PHEVを掲げる一方、設定の思想は異なっている。しかし共通点は、V8+PHEVユニットがブランドに新しい風を吹かせ、独自のハイパフォーマンスワールドを作り上げている。
ハイパフォーマンスの主流はしばらくはV8+PHEV
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PHEVがCO2削減のためだけに存在するという考え方は、もはや過去のものだ。欧州のスポーツカーブランドは、パワフルなモーターとバッテリーを備えたPHEVをパフォーマンス向上の武器と捉え、これをV8エンジンと組み合わせたモデルを続々と投入。その多くは各カテゴリーのトップパフォーマーに位置づけられるほど圧倒的な動力性能を誇っている。
V8+PHEVのパワートレインをパフォーマンス強化の切り札として捉える傾向は各社で共通しているものの、その活用の仕方はブランドごとに異なっている。
V8+PHEVのトレンドをいち早く生み出したのはフェラーリだ。彼らは2019年にV8エンジンをミッドシップしたSF90ストラダーレを投入。フロントに2基、リアに1基のモーターを備えることで電動式トルクベクタリングを実現し、動力性能だけでなくサーキットでもバツグンのパフォーマンスを発揮することで、フェラーリのフラッグシップといえばV12モデルという伝統を打ち崩して見せた。システム出力が1000psと、カタログモデルで最高出力を4ケタ台に載せたことでも歴史に名を残すモデルといえる。
続いてフェラーリは2023年にSF90XXという名の限定モデルを発売。システム出力を30ps上乗せするとともに、エアロダイナミクスを強化してフィオラノ・サーキットでのコースレコードを叩き出したことも記憶に新しい。
ポルシェはV8+PHEVのパワートレインを搭載したモデルをパナメーラおよびカイエンに設定。前者にはターボS E-ハイブリッドが設定され、シリーズのトップパフォーマーに位置づけている。ポルシェはPHEVの優位性を明らかにすることで彼らが推進する電動化戦略の正統性を示そうとしているのかもしれない。
そのパフォーマンスの高さを証明する手法はいかにもポルシェらしいもので、ニュルブルクリンク・ノルドシュライフェでタイムアタックを敢行。7分24秒172をマークし、エンジンを積んだハイブリッドモデルのトップクラスサルーンとして新記録を樹立した。
先ごろ発表されたBMW M5はXM譲りのV8+PHEVパワートレインを搭載。システム出力727ps、システムトルク1000Nmの圧倒的なパフォーマンスを実現した。興味深いのは、MxDriveという名の4WDシステムを搭載するM5に後輪駆動となる2WDモードが設定された点にある。「後輪駆動こそBMWの真髄」とする思想は、M5にも受け継がれたというべきだ。
マクラーレンが久しぶりにリリースしたアルティメイト・シリーズのW1も、いかにもマクラーレンらしいモデルだ。V8+PHEVのパワートレインは、脅威のシステム出力1275psを記録するいっぽうで、純然たる後輪駆動式とした点が注目される。おそらく、3モーター方式の電動トルクベクタリングは重量がかさみ、軽量設計を旨とするマクラーレンの思想と相容れなかったことが、その理由だろう。
ベントレーは「ウルトラ・パフォーマンス・ハイブリッド」と呼ばれるパワートレインを新型のコンチネンタルGTスピードならびにフライングスパーに搭載。これまでベントレーのPHEVはV6エンジンと組み合わされていたが、これをV8にアップグレードすることでパフォーマンスを向上。システム出力とシステムトルクは782psと1000Nmで、コンチネンタルGTスピードの場合、335km/hの最高速度と3.2秒の0→100km/h加速タイムを実現し、電動化時代におけるグランドツアラーのあり方を示した。
ウラカンの後継モデルにあたるランボルギーニ・テメラリオのスペックも強烈だ。従来の自然吸気式V10エンジンの官能性を凌駕すべく、新開発のV8エンジンはクランクシャフトをフラットプレーンとして最高回転数10000rpmを実現するとともに920psのシステム出力を達成。3モーター方式の電動トルクベクタリングも採用してコーナリング・マシーンとしての特性も継承した。
BEV化の波が沈静化しつつある現在、ハイパフォーマンスモデルの主流はいましばらくV8+PHEVが務めることになりそうだ。
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