ヒーレーは英国ヒストリックスポーツの代表
オースチン・ヒーレー100は、ジャガーXK120やMGAなどと並ぶブリティッシュ・ヒストリックスポーツの代表である。
デビューは1952年10月のロンドン・モーターショー。開催初日、そのスポーツカーはヒーレー100として公開される。流麗なスタイリングは来場者の視線を釘づけにし、その場で購入予約をする人が後を絶たなかったという。その光景を見ていたのが、オースチン社の社長、サー・レオナード・ロードだった。
【20世紀名車ギャラリー】大人を魅了するスパスタンスポーツ、1956年式オースチン・ヒーレー100の肖像
当時、オースチンのラインアップにスポーツカーはなかった。彼はヒーレー100のブースに赴き、開発者のドナルド・ヒーレーと直談判。その場でヒーレー100を、オースチン社のスポーツカーとして生産・販売する契約を結ぶ。ヒーレー100は、エンジンをはじめ主要メカニズムをオースチンA90アトランティックから転用していた。オースチン社でヒーレー100を製造するにあたり、とくに機構上の問題はなかった。翌日からヒーレー100は、オースチン・ヒーレー100と車名を変えショーに展示された。ノーズには、急ごしらえの「Austin Healey「のエンブレムが光っていた。
オースチン・ヒーレー100は、1953年5月からオースチン社のロングブリッジ工場で量産が始まる。パワーユニットは2.7リッターの直4OHV(90ps)。ネーミングの100は最高速度100mph=160km/hをイメージしたものだった。しかし実際の性能はそれ以上。当時のテストでは最高速度180km/hを記録し、0→402m加速を17.5秒で駆け抜けた。
豪快な加速と力強いエグゾーストノート。美しきスパルタンオープン
その後、1957年にエンジンを2.6リッターの直6OHV(102ps)に積み換え、モデル名を100・6に変更。1959年にはエンジンを2.9リッター(124ps)に拡大し、300を名乗った。
ヒーレー100の4気筒モデルはセブリング12時間レースやミッレ・ミリアなどのスピード競技で活躍。6気筒モデルはラリーで好成績を残した。
取材車は、英国でフルレストアされた極上車。BN-2の型式名を持つ2.7リッターの直4エンジンを持つ1956年モデルのヒーレー100である。日本では積極的にヒストリックカー・イベントに参戦したクルマで、トランスミッションはOD付き4速フルシンクロミッションを組み合わせる。
外観は1955年にごく少数が生産された限定モデル、100Mをモチーフにしたモデファイが施されている。ボンネットにはエンジンの熱気を排出するルーバーが設置され、革製のボンネットキャッチベルトが付く。ボディサイドを塗り分けたカラーリングも100Mと同じだ。
エンジンは日本で入念にOH済み。フロントブレーキは、標準のドラム式を1959年以降の300用ディスク式に変更している。ちなみに扇形のフロントグリルは4気筒モデルの特徴。6気筒エンジン車は楕円形状のグリルに変更された。
室内に乗り込む。バケットシートの座り心地は良好だ。走りは力強い。2.7リッターのビッグ4ユニットは、低回転域から豊かなトルクを生み出し、豪快な加速を実感する。エグゾーストノートも刺激的だ。パフォーマンスは現在の水準で判断してもスポーツカーと呼ぶにふさわしい。
ドライビングポジションは、大径のステアリングホイールが胸に迫るビンテージスタイル。ステアリング、クラッチ、ブレーキはすべてが重い。しばらくドライビングを楽しんでいたら、エンジンの熱で足元がかなり熱くなった。ヒーレー100は、スパルタンなドライビングを楽しむ「大人のワイルドスポーツ」である。
1956年オースチン・ヒーレー100主要諸元
モデル=1956年式/オースチン・ヒーレー100
全長×全幅×全高=3820×1460×1220mm
ホイールベース=2330mm
車重=1050kg
エンジン=2660cc直4OHV
エンジン最高出力=90ps/4000rpm
トランスミッション=4速MT(OD付き)
サスペンション=フロント:ダブルウィッシュボーン/リア:リーフリジッド
タイヤ&ホイール=5.90-15+ワイヤースポーク
駆動方式=FR
乗車定員=2名
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