スペックの見どころはトルク増
プレスリリース紹介文は「スカイラインは2代目となるS5系から、グランドツーリングカーを象徴するGTの名称を冠しました」の一文から始まる。
【画像】ホントに出た! 「スカイライン・ニスモ」 細部まで見る【注目は「GT」マーク】 全40枚
スカイラインと高性能ならサーキットでの伝説が枕詞のように使われるが、スカイライン・ニスモの原点は「GT」なのだ。
スカイライン・ニスモは、スカイライン400Rをベースに開発された“カスタマイズされたモデル”である。
MCによる車種整理の結果、現在のスカイラインのラインナップは3LのV6ターボを搭載したFRモデルのみの構成となったが、400Rは専用チューン(現在はフェアレディZにも搭載)により最高出力を101psアップの405psとしたシリーズ最速モデル。それを、日産直系カスタマイズブランドのNISMOの手で性能向上が図られている。
興味深いのはパワースペックだ。
400Rに対して最高出力増は15psでしかなく、割合にすれば4%弱の増加である。
対して最大トルクは16%弱の増加となる56.1kg-m。全域で400R用を上回るトルクを発生するが、トルク特性はピーク値以上に中庸域での動力性能向上を狙っているのが見て取れる。これも冒頭で述べた「GT」へのこだわりの1つと理解できる。
「上手い!」 そう感じたこと
420psにも達する最高出力のエンジンをしてダウンサイジングターボというのは語弊があるが、そういった一面も持っているのがスカイライン・ニスモ用のパワートレインだ。
ダウンサイジングターボの特徴の1つに低負荷域のドライバビリティのよさがあるが、スカイライン・ニスモも低負荷域で扱いやすい。
過給タイムラグを先読みしてペダルコントロールする必要もなく、浅い踏み込みの加減速も滑らかにこなす。高速巡航の速度維持も、極低速の駐車場などの扱いも容易だ。400ps超のスペックに身構える必要もコツも不要なのである。
低中負荷のドライバビリティのよさは「GT」らしさの要点でもある。ペダル踏み込みの量と速度からドライバーの意志を汲み取るのが実に上手い。
速い踏み込みではダウンシフトを併用するが、アップシフトを抑え気味に、3000rpm台の回転域を繋いでいく。いたずらに回転数を上げずに伸びやかに加速する。400ps超の全開パワーがもたらす昂揚感や刺激も魅力だが、低中負荷域での穏やかかつリズミカルな“対話感のある操り心地”が印象的だ。
速さを求めても、悠々とした余力感を求めても、的確に応えてくれる。状況に応じてパワートレインを操る様々な楽しさ・手応えが得られるのが何よりの魅力である。
足回りの注目点 太くなった後輪
前後のウインドウと車体との接着剤塗布を全周とし、車体剛性を向上。
ホイールは、デザインの自由度が高い鋳造でありながら鍛造並みの剛性を備えた「ダービル鋳造システム」を用いたエンケイ製を採用。また、タイヤサイズに対してワイドリムとなっている。
タイヤは専用開発のダンロップSPスポーツマックスGT600を履く。
サイズは前輪が400Rと同じ245/40R19だが、後輪は20mmワイドな265/35R19。もちろんサスチューンも専用開発である。
興味深いのはタイヤサイズである。
資料によるとトルク増に対応したサイズ設定となっているが、後輪駆動車の操安性ではトラクションが重要であり、タイヤサイズ設定からしてもトラクションを活かした“ラインコントロール性と安定性を重視”しているのが見て取れる。
試乗した印象もそのとおりだった。
常に感じるのは「FRの楽しさ」
唐突な反応なく操舵初期から「往なし」と「素直さ」をバランスさせてラインに乗り、後輪のトラクションでじわりと押し出す。
減速しつつラインを絞っても、加速ではらませても、回頭やスリップアングルの乱れは最小限に抑えられている。
限界維持までは試していないが、かなり攻め込んでも基本特性や操り心地は変わらない。
後輪に掛かるトラクションも心地よく常にFRスポーツを操っている感覚が楽しめる。過渡特性にこだわって煮詰めたのがよく分かるハンドリングだ。
限界性能を求めるハードコアスポーツの醍醐味は、効率的な速さと限界域でのコントロール性。
もっとも、日常走行での快適性や中庸域での扱いやすさを蔑ろにした一昔前のハードコアスポーツと異なり、最近では2ペダルはもちろん普段使いを躊躇うようなモデルは減少。「GT」と「R」の境目も曖昧になりつつある。
個人的にはそういった背景やスペックを考えるなら、スカイライン・ニスモはどちらに分類してもいい気もする。
400R+約200万円 価格について
ちなみにスカイライン・ニスモ、および400R向けにサーキット走行を前提とした「機械式LSD」や、オーリンズ製をベースに開発された「全長調整式サス」などのNISMOパーツも用意される。
限界性能を求める、つまりは「スカイラインGT“-R”」化を望むならそれらの装着も悪くない。
「The Skyline GT」を商品コンセプトに掲げた「GT」へのこだわりを試乗印象から解釈するなら、信頼感・対話感をベースにしたファントゥドライブを全域に展開させたことなのかもしれない。
限られた状況での短時間試乗ですべてが見切れる訳もないが、走り出した瞬間から良質なファントゥドライブが始まるような感じなのだ。
400Rに対して約200万円高。
スペック対比では正直割高な印象もあるが、数値に表れない部分の熟成や洗練は乗れば伝わってくる。
何よりも絶滅危惧種となりそうな純内燃機車のFRスポーツセダン。「次はないかもしれない」と思えばなおさら。買っておきたいとなるのも人情だろう。
スカイライン・ニスモ スペック
今回試乗した「スカイライン・ニスモ(788万400円~)」は、1000台限定で9月上旬に発売。
100台限定となる特別仕様車「スカイライン・ニスモ・リミテッド(947万9800円)」も同時発表された。こちらは2024年夏の発売予定となり、横浜工場の匠ラインにて“手組み”で作り上げる高精度なエンジンを搭載する。
車名:スカイライン・ニスモ
価格:788万400円(RECARO/カーボンフィニッシャー装着車:847万円)
全長:4835mm(400R比:25mmプラス)
全幅:1820mm
全高:1440mm
最高速度:-
0-100km/h加速:-
車両重量:1760kg(RECARO/カーボンフィニッシャー装着車:1740kg)
エンジン形式:2997cc V型6気筒ツインターボ
使用燃料:ガソリン
最高出力:420ps(400R比:15psプラス)
最大トルク:56.1kg-m(400R比:7.7kg-mプラス)
ギアボックス:7速オートマティック
駆動方式:後輪駆動
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みんなのコメント
NISSANのNISMO系はよく見りゃ200万円どころじゃないぐらい換わってる
それを知ってる人が買うもの