シリーズ第2戦の舞台としても使用された恒例のトラック、FDMユランズリングで開催された2021年のTCRデンマーク・シリーズ第4戦は、開幕から6戦5勝と快進撃を続けていた元F1ドライバー、LMレーシングのヤン・マグヌッセン(クプラ・レオン・コンペティションTCR)がル・マン24時間参戦で不在のなか、その穴を埋めるべく若きチームメイトのニコライ・シルベスト(クプラ・レオン・コンペティションTCR/LMレーシング)が奮闘し、3戦2勝をマーク。レース2では同じく、かつてのル・マン24時間でクラス優勝を経験するキャスパー・エルガード(プジョー308 TCR/ブライアン・マドセン・モータースポーツ)が勝利を飾っている。
8月6~8日に開催された首都コペンハーゲンでの第3戦『コペンハーゲン・ヒストリック・グランプリ』で、レース1からハーフウエット路面に足元を掬われまさかのクラッシュに見舞われていたマグヌッセンが、この週末は“耐久レースの頂点”に挑むため欠場。
ヤン・マグヌッセンを止めたホンダの王者が2勝、プジョーも今季初優勝/TCRデンマーク第3戦
マシン損傷で実質的に全レース欠場となっていた前戦を含め、チャンピオン候補が2戦連続で不在という状況だけに、ライバル勢にとっては逆転に向け是が非でも好成績を収めておきたいラウンドとなった。
そんなマグヌッセンのル・マン参戦を考慮してシリーズオーガナイザーは急きょ、この第4戦の大掛かりなタイムテーブル変更を表明し、土日のスケジュールを前倒しにして金曜プラクティス、土曜に予選と決勝3ヒートを実施すると決断。同じシリーズから送り出した“盟主”の24時間をじっくり観戦できるよう、粋な計らいがなされた。
その予選で気を吐いたのは、マグヌッセンの愛弟子としてシリーズに参戦するシルベストで、2020年初代王者のキャスパー・H・ジェンセン(FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR/マッシブ・モータースポーツ)を約0.5秒差で抑えて、ここユランズリングで今季2度目のポールポジションを獲得。そのまま土曜正午からのレース1に臨んだ。
スタートからこの14周の決勝を危なげなく走破したシルベストは、現王者ジェンセンに対して最終的に6秒ものマージンを稼ぎ出して“ライト・トゥ・フラッグ”のトップチェッカー。そのジェンセンは予選でわずか0.127秒差の3番手にいたジェイコブ・マティアセン(アルファロメオ・ジュリエッタ・ヴェローチェTCR/インサイト・レーシング)のプレッシャーにさらされ続けるも、なんとかポジションを守って2位表彰台を確保することとなった。
■「間違いなく良い週末になった」と3戦2勝のシルベスト
続いてリバースグリッド採用のレース2は、前戦10位フィニッシュのマイケル・カールセン(プジョー308 TCR/カールセン・モータースポーツ)が最前列から隊列を率いたものの、数周も経ぬうちにジャンプスタートの裁定でペナルティを課され撃沈。
代わってクリスチャン・モー・ソーレンセン(アルファロメオ・ジュリエッタ・ヴェローチェTCR/インサイト・レーシング)にトップランのチャンスが巡ってきたものの、7番グリッドから猛チャージを見せたエルガードが、第3戦コペンハーゲンに続いてリバース勝負を制して今季2勝目を獲得。2位ソーレンセンに続き、王者ジェンセンが最後の表彰台スポットを手にした。
その勝者エルガードがポールポジションからスタートを切ったレース3は、3番グリッド発進のシルベストがオープニングラップで2番手ジェンセンを攻略し、首位を行くプジョーのエルガードにロックオン。
続く3周目に早くもプジョー攻略に成功したシルベストがリードを奪うと、この攻防で3位ジェンセンに迫られたエルガードは終始防戦を強いられる展開に。18周で6秒5のギャップを稼ぎ出したシルベストが、得意のサーキットで週末2勝目を挙げ、エルガード、ジェンセンと実力者たちが続くポディウムとなった。
「本当に完璧な週末になった。小さな心残りはレース2で、僕自身は良いスタートが切れたが、行く手を阻まれて上位浮上の機会を封じられてしまったんだ。もう少し楽しめたんじゃないかと思うけど、僕らにとっては間違いなく良い週末になったね」と、エース不在の穴を埋める大活躍を演じたシルベスト。
これでディフェンディングチャンピオンのジェンセンがタイトル防衛に向け203点としてランキング首位を足固め、200点で2位エルガード、173点でシルベストが3位に続き、2戦連続“無得点”のマグヌッセンは5位にまで後退している。
続くTCRデンマーク第5戦は、初年度2020年の第2戦にプロットされていながら、敢えなくキャンセルの決定が下されていた市街地戦『クラシック・レース・オーフス』の開催が9月18~19日に予定されている。
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